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フランス料理が食べたくなる

『タルト・タタンの夢』を読んだ。

従業員4人の小さなフランス料理店の日常にミステリーとも言えないくらいの謎が隠し味となって色を添えてくれる、ほっこりとした短編小説。


人の数だけ物語があって、レストランは様々な人の物語が出入りする場所。それがフランス料理店なら、ちょっと特別な日に利用されることも多いし、誰かにとっての特別な思い出にもなりやすい場所である。

フランス人の恋人が作ったフランス料理の真実や、フランス土産のジャムに込められた思い。ガレットデロワに隠された謎の真相まで、このレストランのシェフが謎を解き明かしてくれて、その真実にほっこりする。

時にはボタンを掛け違えてすれ違ってしまった思い出も、真実が分かると違う側面が見えてきて、未来に向かって歯車がかみ合っていく。

思い出の味と共によみがえる記憶は、いい思い出も悪い思い出も含めて、自分にとって必要な記憶なんだろうなと思う。そして、いつかはいい思い出として消化されていくものなんだと思わせてくれる小説だった。

小説の中のフランス料理がとてもおいしそうで、普段はフランス料理なんて食べないけど、今度フランス料理でも食べに行こうかな、なんて思っている。

優しい話が読みたいときにおすすめの一冊。

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