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恋せぬふたり制作日誌特別版 写真家・石田真澄さんに聞く!「恋せぬふたり」

こんにちは。毎週月曜よる10時45分から放送中のよるドラ「恋せぬふたり」の企画・演出をしました押田です。

今回は「制作日誌」特別版として、このドラマのキービジュアルを担当いただいた写真家の石田真澄さんに制作の裏側について伺いたいと思います。

石田さんは、ファッション誌や広告写真の撮影を手掛ける写真家で、中高一貫の女子校に通う友人たちとの日々を撮影した「light years-光年-」(2018)や広告写真「部活メイト」(2018)など、注がれる光と共に若い世代のエネルギーを躍動感たっぷりに伝えてきました。

そんな石田さんにこのドラマのキービジュアルをお願いできたことで、ドラマの方向性が大きく決まったと思います。

Q①まずは「恋せぬふたり」の依頼が来たとき、どう思いましたか?

「よるドラ」はふだんから観ていた大好きなドラマ枠だったのでお声がけして頂きとってもうれしかったです。
アロマンティックやアセクシュアルをテーマにドラマを制作すると知ったときは、驚きとうれしさと不安が一度に降りかかってきて頭の中が大混乱してしまいました…笑
日本の作品ではあまりテーマに挙がらないものだったので、どのような物語にするのだろうと台本を読む前から不安が膨らんでしまったのを覚えています。
ですが、読み進めば進めるほどその不安は消え、早く多くの人にこのドラマを観て頂きたいと心の底から思いました。
そのくらい、「恋せぬふたり」の制作に関わる前からドラマ放送を楽しみにしていました。

Q②撮影する上でこだわったところや気を付けた点、あるいは、伝えたい思いなどありましたら教えてください。

今回の撮影は、メインビジュアル全体を構想するデザイナーの松田さんとコーディネーションを担当する山本さんと合わせて3人で行っていますが、デザイナーの松田さんのラフは、日常の風景の中で”あいまいな境界線“がある場所でお二人を撮影するというものでした。

例えば、歩道にある少しの段差やY字路などをモチーフにするということです。
その構想を元に松田さんと山本さんの3人でひたすら”あいまいな境界線“を探すロケハンをしました。これが、かなり難しかった。OPに使用されている風景写真も含め、この制作期間中はどこへ行っても”あいまいな境界線“を探していましたね…笑

このドラマの美術を担当した伴内さんや長谷川さんを含め5人での打ち合わせの際に、企画内容から話が膨らみ、それぞれの「恋愛」への考えや、「自分にとっての普通って?」という話をした時間がとても大切な時間だったなあと思い出深いです。
メインビジュアルの制作期間はセクシュアリティに対する自分の考えや感情を吐露する機会が多かったです。

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オープニングタイトル
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エンドタイトル
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毎回、OPタイトルに石田さんが撮影した写真が2枚ずつ使用されている
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第2回
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第3回
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第4回

Q③ドラマが放送されたとき、どう思われましたか?

自分の写真をテレビ画面で見る機会は滅多にないので不思議でした。

アロマンティックやアセクシュアルをテーマにした作品に登場する当事者の女性のキャラクターは、「クール」、「コミュニケーションが苦手」、「仕事に忙しい」、「熱狂的な趣味がある」、「男っぽい」と言われがち、などと描かれることが多いです。
それらは偏ったイメージなので、咲子のようなキャラクターがこのドラマの主人公であることはとても誠実だと感じました。

劇中写真

同じセクシュアリティであっても「人それぞれの感覚や感情の違いがある」ということを物語の中で鮮明に描いているので、メインビジュアルでもその境界線を表現できてよかったです。

Q④このドラマは「恋愛しないと幸せじゃないの?」というコンセプトを掲げていますが、雑誌や広告も映画やドラマと同じく恋愛が幸せと考えるコンセプトが主流のように思います。そういう現状についてどう思いますか?

写真の作品制作をする中で、「恋愛した方がもっといいもの作れるよ」という言葉を受けたこともあります。ふざけるな、と心の中で怒鳴りました。
もちろん、恋愛することによって起きる感情の変化は作品に大きく影響することもあると思いますが、必ずしも経験しないといい作品にならないわけではありません。

個人が思う“普通”や”幸せ“の押し付けに息苦しさを感じることは多いです。”無い“ことを自認すること、誰かに伝えること、理解してもらうこと、は本当に難しいです。

第2回の「こういう人間もいる こういうこともあるって話終わらないんですかね」という台詞。羽はいつも透徹していて、第1回でも咲子の質問に対してはっきりと「わからない」と答えます。安易な共感や、分かったふりをするのではなく。

劇中写真

セクシュアリティはとってもあいまいでグラデーションがあると思っています。
わからないならわからないままで、自分の中でゆっくり向き合って行けばいいのだと再確認しました。”わからない“という気持ちや、”グレー“というものは、「中途半端」とか「はっきりしない」などとマイナスなイメージを持たれがちですが、「あいまいでいていいんだよね」と羽の台詞が支えてくれました。

Q⑤最後に視聴者にメッセージをお願いします。

第1回の「恋愛しないってことは、たぶん。一人で生きていかないといけないってことじゃないですか?」という咲子の台詞を何度も反すうしてしまいます。

劇中写真

助けて欲しいとき、一人でご飯を食べたくないとき、幸せを言葉にして共有したいとき、誰かと一緒にいたいとき、その誰かとの関係性に名前が無くてもいいのにと思っています。 名前がないその関係性が、もっともっとこの社会で生活しやすい、補償を受けやすいようになって欲しいと願っています。

今日はありがとうございました。

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石田いしだ真澄ますみ
1998年生まれ。2017年に初の個展「GINGER ALE」(2017)を開催。初作品集「light year-光年-」のほか、「everything will flow」(2019)、広告写真としてカロリーメイトやソフトバンク、ゼクシィなどを担当。近年では、ドラマとドキュメンタリーを融合した番組、ETV特集「ある子ども」のメインビジュアルを担当。最新作は夏帆さんの日常を撮影した「おとととい」(2022)。

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よるドラ「恋せぬふたり」
[総合] (月)よる10時45分〈全8回〉
NHKプラス&NHKオンデマンドでも配信中
第7回 3月14日(月)  よる10時45分
最終回 3月21日(月)  よる10時45分

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