ご存知ですか?サッカー部員の生理事情【#生理の話ってしにくい】
はじめまして、仙台局1年目ディレクターの内藤孝穂と申します。
つい半年ほど前までは大学生だった私。小学生から大学生まで16年間サッカーを続けてきました。
今も趣味程度に、週2くらいでフットサルを楽しんでいます。そんな16年間のサッカー人生の中で、生理にまつわるエピソードは山のようにあります。
NHKへ入局し半年、「スポーツと生理」や「女性アスリート」をテーマに取材を続けてきました。
▼普段は宮城県や東北地方向けの番組制作をしています▼
現役中は当たり前だと思っていたことが、こうして取材をする立場になったとき、それは深刻な問題であることに気づき始めました。
そして最近、NHKでも取り上げるようになってきた生理の話。その中には、アスリートと生理を取り上げる番組もあります。
長年、サッカーと向き合ってきた私にとって、わかる~!と共感できる話やそうなんだ!と新たな発見に出会う話がある一方で、まだまだ知られていない葛藤があるのに…と感じることもありました。
それがこの企画に関わりたいと思ったきっかけです。私の経験や社会人生活で出会ったお話を通じて、変わりつつある「スポーツと生理の向き合い方」をお伝えできればなと思います。
▶▶#生理の話ってしにくい◀◀
「明日、雨? 2日目なんだけど。最悪」
これは実際に私が大学のときに経験したことです。このあとチームメイトに相談をして、部室でみんなとどう明日の試合を乗り切るかを考えました。
結果として、タンポンに挑戦したことがなかった私は、とにかく長いナプキンを使うこと、ナプキンを直接着用することができる生理用のアンダーパンツを着用すること(ずれにくいんです!)、試合前、ハーフタイムにトイレに行くことなど、試行錯誤をして乗り切りました。笑
このエピソード以外にも、「痛み止め持ってる人!○○に渡して!」「スライディングしたらナプキンずれた!笑 トイレ行ってくる!」こんな会話は日常茶飯事。白のユニフォームを着なくてはいけないときなんて、最悪です。
ときには、貧血気味でいつもと変わらない運動量なのに息がすぐ切れてしまうこともありました。「生理がなければ思い切りプレーできるのに」「もう少し走れたのに」そう思うこともありましたが、生理が来ても、不安や後悔を抱えながら頑張ることが普通でした。
チームメイトや女性のトレーナーさんとは、日常的に生理に関して話をすることも多く、チームの誰が生理痛が重いのか、貧血になりやすいのか、はたまた生理が来ていない(無月経)なのかということまで、ある程度把握をしていました。
しかし、男性指導者に相談したことは一度もありませんでした。男性に話すことへの抵抗や、言っても変わらない、そんな暗黙の了解があったような気がします。
経血が多かろうと試合はある、雨だろうと練習はある、生理だから白のユニフォームを着なくてもいいなんてことはない、誰がいつ生理かなんてお構いなしに、我慢して当たり前。
「生理でも頑張るしかない」「しょうがないよね」そんな環境で生理と向き合ってきました。
「最近、生理を理由に休めるようになってきたんです」
実は高校時代を仙台で過ごしていた私。仙台局に赴任となった今も、仕事が休みの日には、今でもときどき母校のサッカー部に顔を出し、練習や試合の反省、チームのまとめ方、学校生活など、後輩たちといろんな話をしています。
そんなある日、「最近、生理を理由に休めるようになってきたんです」と高校生。思わず、私は「え、なんで?」と聞き返しました。
なぜなら、私が活動してきた当時のことを考えると、生理で休むなんて考えられないことだったからです。練習を休めばメンバーから外される、とりあえず何が何でも練習に参加しなきゃと思っていました。
詳しく話を聞くと、ある選手が監督に「アスリートと生理」に関する勉強会を行いたいと提案し、その勉強会を機に、生理を理由に休めるようになったと言います。
監督に勉強会を行いたいと提案したAさんは、過去に無月経からなる疲労骨折を経験していました。そのときに受診した女性アスリート外来の医師から、アスリートの無月経や栄養の関係について教わり、それをチームメイトや監督にも知ってほしいと思い、勉強会の提案へと行動に移したのです。
Aさんは、
「骨折がわかったときは、無月経と疲労骨折の関係は知らなかった。もっとチームメイトや監督が知れば、チームのけがが減るかもしれないと思って、勇気を出して提案してみました。」と話します。
監督に話してみたら、監督も「そんなことが勉強できるならもっと早く知りたかった。」と前向きに承諾したそうです。勉強会では、スポーツを行う学生が無月経になる理由やその危険性、生理との向き合い方について教わり、監督とも生理の話ができるようになったと言います。
私は、この変化を高校時代のサッカー部の同期に話しました。すると
「ほんと!すごいね、それ!」
「時代が変わってる~!」
「当時、痛み止めを飲んで我慢してやっていたけど、良いことなかったよね。変わって良かった!」
と一同驚いていました。それくらい大きな変化だったんです。
監督(男性)に話すことへの抵抗を打ち破った高校生が本当にすごいと思うと同時に、こうした変化がもっと広がってほしいと思いました。
生理とけがの関係
こうして母校のサッカー部の変化のきっかけになった「生理とけがの関係」。私の現役時代にも同じようなことがあったのを思い出しました。
チーム内で、膝や足首のけがをした子がいたとき、トレーナーさんが「今日、○○生理だった?」と聞くと、けがをした選手が「そうでした。」と答える会話を何度も見てきたのです。
トレーナーさんに「生理とけがって関係あるんですか?」と尋ねると、
ということでした。
ただ、当時は「生理でも無理して頑張るしかない」と思い込んでいた私たち。その話を聞いて驚きました。
その後、生理期間中のパフォーマンスや解決策について、何度かチームメイトと話したこともありましたが、
と、自分たちの中で、“しょうがない”、“向き合うのが当たり前”と思い込み、具体的な対策につなげることはできませんでした。
NHKが向きあう“生理とスポーツ”
アスリートと生理については、NHKでも数年前から取り上げています。
しかし、こうした課題は特殊な競技やトップアスリートの選手に限ったものだと考える人も多いと感じています。なにより、私もこのような取材をしたいと上司に提案したときもそうでした。「そんなこと、身近にあるの?」と。
でも、記事にある通り、スポーツを一生懸命頑張っている子なら誰でもあり得ることなのです。摂取しているエネルギーに比べて消費エネルギーが多ければ、無月経になる可能性はあるし、生理と悩みながらスポーツに向き合っている学生はたくさんいます。
男性女性に関わらず指導者にも相談がしやすかったり、親御さんが「大丈夫?」と気にかけることができたり、みんなで当たり前に生理に向き合える環境になれたらいいなと思います。
なにより、今回話を聞かせてくれた後輩たちのように、実際に「我慢して当たり前」「生理でも頑張るしかない」「しょうがないよね」と過ごしてきた環境を変えようと努力している若い世代がいます。
私もディレクターとして、彼女たちの一歩になる発信ができるように、これからも取材を続けていきたいです。
仙台局ディレクター・内藤孝穂
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