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「色」で彩る「恋せぬふたり」
毎週月曜よる10時45分から放送中のよるドラ「恋せぬふたり」。
こんにちは、よるドラ「恋せぬふたり」の編集・グレーディング・VFXを担当した堀田です。
![メイキング写真](https://assets.st-note.com/img/1645434311301-ETf4DRqm4N.jpg?width=800)
![メイキング写真](https://assets.st-note.com/img/1645434316553-eX1s5W8SBD.jpg?width=800)
「グレーディング」とは?
今回のnoteでは、「恋せぬふたり」のグレーディングについてお話させていただきます。グレーディングとは、ざっくり言うと映像の色を整えたり、調整したりする作業になります。下記にグレーディング前と後の画像があります。
![比較画像](https://assets.st-note.com/img/1645434466444-qzDgzxKD3H.jpg?width=800)
![比較画像](https://assets.st-note.com/img/1645434479915-9BaD25AoLy.jpg?width=800)
グレーディング前は色が薄く、コントラストが低い映像になっています。ドラマや映画などで使用する業務用カメラで撮影した映像は、グレーディングをする前だと、こんな色になっているのです。
この映像にコントラストや彩度を加えて、暗いところや明るいところのバランスを調整し、空の色、肌の色、服の鮮やかさなども個別に調整して全体を整えていき、画面に映る重要なものを、より見やすくしていきます。
ほかにも光の方向や強度を調整したり、早朝や夕景を色で感じさせたり、奥行きを加えたりなどなど、グレーディングの果たす役割は多岐に渡ります。
物語を「色」で補う
その中から、グレーディングの役割のひとつである”物語を色で補う”という工程を深堀りしてみたいと思います。
このnoteでもチーフ監督の野口さんが触れていましたが、撮影準備の段階で装飾や小物、衣装など、様々な要素が、登場人物の心情に寄り添うために色を考慮して選定されています。
そして、その色をグレーディングによってさらに強調したり、色を重ねたりしてより深みのあるものへと仕上げていきます。
第1回の冒頭では、色とりどりの野菜に魅了される咲子のカットからはじまります。第1回の押田監督もこのnoteで触れていましたが、これは作品のテーマのひとつでもある「多様な色」=「多様な人」を表しています。なので、撮影の段階よりも色が強く見えるように調整しています。
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434511212-RJHk60yrgQ.jpg?width=800)
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434518132-Wv7CLDYMaA.jpg?width=800)
公園で咲子がひとりブランコに乗っているシーンでは、寂しげに光る街灯に緑色を、咲子には青色を重ね、さらに色味を抑えて、不安な気持ちを表現しました。
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434530060-qe8mdkxhok.jpg?width=800)
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434536752-ZoBvUdlIRp.jpg?width=800)
初登場時の高橋の家は、高橋の人となりが少し垣間見える色を意識して、少し彩度を控えめに、暖かく、しっとりした色調にして、落ち着いた雰囲気と懐かしい印象を併せ持つ色に仕上げました。
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434543287-UI9L6yp2JJ.jpg?width=800)
続いて、第2回の咲子の実家を訪ねるシーン。あえて不穏さを与えない明るい健康的な色味で、これから起こる修羅場を一切感じないような色調にすることを心がけました。
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434549066-mgQTL2ss96.jpg?width=800)
この2回の後半部分、咲子が高橋の部屋を訪ねるシーン。ここはまさに高橋の心情表した空間で、ここでは咲子に対して高橋が見せる包容力を表現したかったので、部屋全体を包み込むような暖かい光を印象的にすることを意識して色を重ねていきました。
![比較画像](https://assets.st-note.com/img/1645434566768-9zHAwZIyou.jpg?width=800)
![比較画像](https://assets.st-note.com/img/1645434574810-5J8JRD1v80.jpg?width=800)
![比較画像](https://assets.st-note.com/img/1645434584414-6ydMMst5sJ.jpg?width=800)
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434592490-1OGdqV2bbY.jpg?width=800)
この光の表現では日が傾いて夕方になっているので、咲子の実家に行ってから、時間がたっていることも表現しています。
第3回の咲子が過去を回想するシーンでは、不自然な色味を加えて違和感を表現しています。
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434604611-VR8MaKXLCi.jpg?width=800)
夕日を背景に佇む咲子のシーンでも、カラフルでありながら現実離れした不穏な色味を重ね、辛い過去と気持ちを表現しています。
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434614144-Hpdw4h0trb.jpg?width=800)
色で表情を変える「高橋家」
ここでもうひとつ、色を表現する上で、このドラマでとても重要な存在があります。それは「高橋家」です。祖母と過ごしたこの家は、年月を感じさせる装飾や様々な色の小物が置かれ、日中は縁側から日差しが入り込み、このドラマに色々な表情を与えてくれます。
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434635289-LQlbVuv9rR.jpg?width=800)
毎回登場する「高橋家」ですが、実は回数ごとに色調が変わっているのに気づいたでしょうか?例えば、第1回の終わりと第2回の始まりは同じ時間の同じ部屋なのに、色調が変わっているのです。
第1回の高橋の家では暖かく、どこか懐かしい、しっとりとした色調から、その色調では考えられない高橋の衝撃の台詞(「僕のことなめてます?」)で終わるのに対して、2回の始まりはアップテンポな二人の対話とそれに合わせるように明るめの色調に変わり、物語の動き出しを感じさせる色調にしています。
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434643807-29GkEtNaZq.jpg?width=800)
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434656161-daS58KL1Xl.jpg?width=800)
第3回の高橋が台所でうどんを踏んでこねているシーンは、これまでとはガラッと変わって、朝日を感じる色彩を強調して明るさのあるコミカルな色調に。
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434677196-tlo4ZZgFcl.jpg?width=800)
第4回では、カズくんという存在が入ることで、カズくんだけが浮いた異物感を思わせる色調にしています。
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434692087-QEoAotGxfB.jpg?width=800)
そして、カズくんのふたりへの理解が進むと共に、夕食を囲むシーンではカズくんと家の色調が、調和する色味に変わっていきます。カズくんもいつの間にか”家族(仮)”に溶け込んでいくのです。
![劇中写真](https://assets.st-note.com/img/1645434704143-LnGjDT34zQ.jpg?width=800)
いかがでしたでしょうか?グレーディングの役割について、少しだけご説明させていただきました。第5回からもグレーディングでどんな仕掛けがあるか楽しんでいただければと思います。
ただ、視聴している時は、色にとらわれずドラマに没入して楽しんでもらえたらと思います。そのあとでNHKプラスの配信でじっくり考察してみてください。
1~4回の再放送もありましたので、初見の方はもちろん、すでに観た方も、この記事を読んで深堀りしながら楽しんでもらえたらと思います。
堀田弘明
1978年広島県生まれ。制作部・助監督として、磯村一路、周防正行、矢口史靖監督作品に参加。編集・VFX・カラリスト・デザイナー・プログラマーなどとして活動。『タカダワタル的』(04)、『スウィングガールズ』(04)、『それでもボクはやってない』(06)、『瞬 またたき』(10)、『ダンスウィズミー』(19)、『ロマンスドール』(20)、そのほか映画予告編やパンフレット、CMなどに携わる。
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よるドラ「恋せぬふたり」
[総合] (月)よる10時45分〈全8回〉
NHKプラス&NHKオンデマンドでも配信中
第6回 2月28日(月) よる10時45分
第7回 3月14日(月) よる10時45分
最終回 3月21日(月) よる10時45分
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