『大人のピアノ』もう一つのショパンコンクール
40代半ばにしてピアノを習い始めて約3年半にも満たないピアノ界では相当のひよっこで素人の私ですが、
まだ一般にはそんなに知られていないかもしれないけれど(・・・というか単に私がその存在を知らなかっただけですね・・・)、とても興味深いもう一つのショパンコンクールを、あるきっかけに知る事になり、個人的にとっても注目しています。(きっかけに至る話はまた後日別の記事でご紹介できればと思っています。)
ピアノやクラシック音楽が好きな人はもちろん、そこまで詳しくない人でも「ショパン国際ピアノコンクール」を耳にした事がある方も多いかと思いますが、
この「ショパン国際ピアノコンクール」はショパンの生まれ故郷のポーランドで開催され、ロシアで開催される「チャイコフスキー国際ピアノコンクール」やベルギーで開催される「エリザベート王妃国際音楽コンクール」と並ぶ世界三大ピアノコンクールとしても有名ですし、
2021年に開催された第18回目の同コンクールでは、日本人ピアノストの反田恭平さんが2位を獲得された事で話題になった事を覚えてる方も沢山いらっしゃるのではないでしょうか。
世界3大ピアノコンクールにはそれぞれ異なる特徴がある事をご存知の方も多いかと思いますが、このショパン国際ピアノコンクールは第一回目の1927年開催から現在まで5年毎に開催され(コロナ禍で延期された年がありましたが)、国籍無制限で18歳以上30歳未満の出場者がコンクールでショパンの作品の演奏を披露しそのピアノの腕を競い合うという事でもよく知られているかと思います。
そして、この他にもう一つのショパンコンクールが存在し、反田恭平さんが活躍された「ショパン国際ピアノコンクール」を主催するポーランドのフレデリック・ショパン研究所によって執り行われているのが、
ショパン国際ピリオド楽器コンクール
International Chopin Competition
on Period Instruments
一般に知られている「ショパン国際ピアノコンクール」と何が違うのかというと、ショパンが実際に彼自身の作品の作曲や演奏を行なっていた時代(ショパンの生涯は1810年から1849年)に使われていた当時のピアノを使った演奏によるショパンコンクールという点。
ショパンが生きた時代のピアノは、今の時代に使用されているピアノに対して、「オールドピアノ」とも呼ばれている場合も多いかもしれませんが、正式には、その時代(=英語でピリオド:Period)に実際に使われていた楽器という意味で「ピリオド楽器」とも言われているそうで、一般に目にする今のピアノとオールドピアノ(ピリオド楽器)では、専門的な構造などの観点からも様々な違いがあるとは思いますが、私のような素人でもわかりやすいのが、その「音色」かもしれません。
音色だけでも現代のピアノとはかなり違う印象で、(私の個人的な感覚ですが)現代ピアノは全体的にキラキラとしてとてもクリアな響きがする感じで、特にグランドピアノはプロのピアニストの技術であればかなりの大音量を出す事も可能だと思うのですが、
オールドピアノは丸みをおびたようなとても柔らかな音色で、現代のグランドピアノのような物凄い音量を出すように作られていないそう。
それというのも現代のピアノは(特にグランドピアノ)は、大ホールでの演奏に使用される事を前提に作られている場合がおそらくほとんどで、数百人、数千人規模が入るようなコンサートホールの一番後ろの席の聴衆にも届くようにとても大きな音が出せるような構造になっているそうなのですが、
ショパンが生きた時代は今のような大ホールがヨーロッパでもほぼ存在しなかったのと、ショパンを始めとする当時の音楽家は貴族の館などのサロンでの小規模なリサイタルをするのが主流で、そこまで大きな音が出せるようなグランドピアノは必要とされていなかった、という理由もあったそう。
あと、当時のピアノはそれぞれのピアノメーカーによって、特徴的な音色の違いがあり、(もちろん現代ピアノにもメーカーによって繊細な音色の違いはありますが)その違いを全面に出す事によってメーカーのオリジナル性や差別化を図っていたという時代背景もあったそう。
そして、当時ショパンが愛用していたピアノが、フランスのピアノメーカー「プレイエル(Playel)」だった事をご存知の方も多いかと思います。
このピアノブランドは一旦2013年に廃業になってしまい、幻のピアノメーカーとなってしまいましたが、わりと最近フランスの会社によって再開され、ブランドとしては復活したようですが、主な生産はフランス以外の国で行われていたり、オールドピアノの時代のプレイエルの印象とはまた違ったピアノなのかもしれません。
コンクールを主催するフレデリック・ショパン研究所が1849年製のフランスのピアノメーカー、エラール(Erards)のピアノを最初に所有したことをきっかけに、ショパンが生きた時代のオールドピアノや、当時の復元ピアノコレクションが研究所に増え、
現代のピアノとオールドピアノでは構造そのものなどの大きな違いもあり、現代ピアノでは表現する事が難しく、失われてしまった当時の響きによるショパンの真の音楽作品を現代の人々にも感じてもらうために、ショパン研究所ではオールドピアノを使用したコンサートを開催したり、
ショパンの作品やその演奏の更なる深い理解や、ショパンが過ごしたその当時そのままの音楽の世界をより多く知ってもらうため、ショパンが生きた時代のピリオド楽器(オールドピアノ)を使った演奏を行う、
「ショパン国際ピリオド楽器コンクール」
を開催しているそう。
このコンクールが始まったのは実はとても最近で、第1回目の2018年が最初で、その5年後となった第2回は今年2023年10月にあり、同じくポーランドのワルシャワで開催し、審査を通過した18歳から35歳までのピアニスト達が下記のオールドピアノを使って演奏を行います。(年齢制限の上限がショパン国際ピアノコンクールの30歳よりも少し上なのですね。)
1838年、1849年、1855年製の
エラール(Eards)のピアノ
1848年、1854年製の
プレイエル(Playel)のピアノ
1843年製の
ブロードウッド(Broadwood)のピアノ
その他、復元されたオールドピアノ
欧州各地から貸与されるオールドピアノ
私自身はピアノを始めてからまだ3年半足らずでとても少ないピアノ経験なのですが、、、いろいろなご縁もあり、プロが奏でるオールドピアノの音色をリサイタルなどで実際に聴いたり、自分自身でもそういったピアノで練習させてもらう機会にも恵まれ、柔らかでとても美しい音を奏でるオールドピアノの魅力を(浅い経験の素人ながらも・・・)発見し、
10月に開催されるこのコンクールの予選をポーランドに聴きに行きたい!と思っていますが、多分現実的に難しいので・・・、
YouTubeなどでのコンクールの動画配信がされることを期待しています!
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