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哀しい思い出

私が姉貴と慕った人のうちの一人の話
水商売でバリバリ頑張っててシングルマザーだった
何回一緒に吞み明かしたか分からない
強い女(ひと)だと莫迦で若かった私は思っていた
その人の周囲の男共はほぼ屑だとも思っていたが

まさか苦心して育てた息子に最期は苦しめられるとは

自分の店を持って手塩にかけてキャストを育て
エース級を仕込んだのを相手に実の息子が風紀した
それも新店を出すタイミングで妊娠が分かった
新しいお店が出来ると数回通ったら店は閉まった
不思議に思ってそれから1年ほどたった

彼女は自ら命を絶っていたのだった

誰一人亡くなった事を教えてくれなかった
義理の娘となったコからも他の常連からも
当然息子からも

「何で今まで知らなかったのか?」
そう言われた
「私が責めるとでも思っていたのかも知れない」
そう哀しく答えた
莫迦な話だ色恋など業界ではリスク管理が当然
しかし突然TOPを失ったのは痛手だったろう
借入もあったろうから厳しいのは想像に難くない
しかし若いコらに色恋を妊娠をどうこう出来ぬ

今では2児の母となったそのコには
あの人の分まで幸せであって欲しい
息子の方には言いたい事もあるけれど
私に言われるまでもなく重荷はとうに背負っている
ならば何を私が責められよう?
出来やしないよ
私はそんなに偉くない

ただただ最期の別れによばれなかったのが哀しい

いろいろ教えてもらったし学んだのだ
体をはってる姿は眩しかった
もう一度…いやずっと「アンタは駄目ねぇ」と言われながら一緒に吞み
カラカラ笑って酔っていたかった
「信頼は誰よりしてるけど…だからアンタは駄目w」
そうまた窘められていたかった


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