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Antique Unfairのおはなし

こんにちは。めめめのアトリエ代表兼ゲームデザイナー んぎょです。

先日、めめめのアトリエ校正担当のきいろの(@umi_to_orange)とともにハレルヤロックボーイさん主催のゲームマーケット非公式打ち上げにお邪魔させて頂きました。

その中で「note書くべし」のとのお言葉を賜り、彼葉さんを追いかける形できいろのが打ち上げについてnoteを書いたので、対抗して私も何か書こうと決めました。

打ち上げの中で拙作Antique Unfairのゲームシステムや外見や、諸々たくさんの意見を聞かせて頂いたので、私なりのデザイナーズノートのようなものを書いてみようと思います。

デザイナーズノートというと、尊敬するデザイナーの一人であるスパ帝国さんの書きっぷりが印象に強いので真似したかったのですが、私には到底難しいので考えたことをつらつらと連ねてみます。


#1 つくるきっかけ

 処女作「里山さすてぃなぶる」は萬印堂さんの小ロット応援パック(36枚)で作ったこともあり、「最小限の規模でしっかりとした考えどころのあるゲーム作り」をすることにハマっていた私は、萬印堂さんの18枚パックの方でもいけるんじゃないかとボンヤリ思って日々を過ごしていました。
 とはいえ「18」は中途半端なので、キリのいい「12」枚のカードをキリのいい「3」グループに分けて何かできないか(残りはサマリかな?)と思いながら通勤を重ねます。
 
 さて、めめめのアトリエでは専属のイラストレーターさんは居らずプロの方にお願いするほどの予算もないので、潤沢とはいえないギャラで友人にお願いしていました。
 その代わり?「イラストレーターさんの描きたいもの」をテーマに据えて「得意な画風で」頼むようにしています。
 
 今回お願いした峠さん(@touge_koeta)はお洒落な画風がお得意でしたので、デザインやアートをテーマにしようかなと考え提案した時の資料がこちらです。

スライド1

 ゲームシステムについては後述しますが、こんな雑な資料から出発したのです。
 峠さん、お付き合いいただき本当にありがとうございました!!
 
 作画にかかる時間やテーマ性などについて、カフェでフライドポテトを食べながら1、2時間ほど話し合った結果、骨董品をテーマにしたゲームにすることが決定しました。そこで頂いたラフの完成度が高く、そのままの構図でカードになっています。(画像は完成版)

画像2

 こうして、12枚のカードで骨董品をあれやこれやするゲームを作ることになったのです。
 そして結局のところ、骨董品の品評会をイメージすることにしました。

#2 ゲームシステムについて

 ・システムの根幹づくり
 Antique Unfairのゲームシステムは、私としては「バッティングゲーム」だと思って作りました。
 上述の資料にあるように「いっせーの」を元にしたシステムだからです。
(せの、せのじ、いせのせ、いっせーのーで、いっせーのーせ、いせので、いっせっせ、ちゅんちゅん、ちょんちょん、ちっち、ルンルン、あおざめ、せっさん、たこたこ、バリチッチ、チーバリ、そろばん、ジンチ、うー、んー、指スマ、命令対象、等 wikipediaによるといろいろ呼び方はあるようですが宗教戦争に巻き込まれたくないため「いっせーの」で行きます)
 
 そもそも「いっせーの」を元にした理由は、「里山さすてぃなぶる」が難解だという評判で、次はわかりやすいものを作りたいと考えたためです。
 子どもの頃から遊んでいるゲームなので、分かりやすいに決まっているわけですね(🚩)
 
 私自身は「いっせーの」自体がそんなに好きではなく、「参加者個人の気分」に依存し過ぎていることが課題だと思っていました。
 こう言ったゲームを「心理戦」と言ってしまうこともあるのかもしれませんが、私には合わなかったんですね。※意見には個人差があります
 
 そこで、「いっせーの」に情報を追加することでゲームとして充実させることをもくろみます。
 「いっせーの」は参加者の指の本数を予想するゲームなわけですが、数を宣言するプレイヤーは他の参加者全員の考えを読まなければ正解にたどり着けません。
 無理です。
 
 超能力者開発ゲームの座はマインドシーカーに譲るとして、私は安易にもカードを公開することを選択しました。
 自分の番が来るたびにカードを1枚選んで公開する。非常に単純でわかりやすいですね。
 最終的にこの考えは変わらず、プレイヤーができることは「カードを1枚公開して捨てる or 勝負する」の2択になりました。単純です。簡単なゲームです。
 
 プレイヤーたちは場に公開されたカードを見ながら相手が推薦しようとするカードを予測し、競合しないカードを推薦するか、競合させて妨害するかを選ぶことになります。
 このゲームで勝つためには、前提としてカードをある程度覚える必要がありますが、12枚(しかも規則的)なら覚えやすいだろうと思ったのです。

図1

細かいルールを読みたい方向けにルールを貼っておきます。 

説明書_オモテ

説明書_ウラ


 ・点数について
 このゲームでは、推薦に成功した骨董品ごとに決められたポイントを得ることになります。

 当初はすべてのポイントは後で成功したプレイヤーに奪われる、非常にアグレッシブな作りをしていました。
 点数を流動的にする代わりに目標点数を5ポイントと低く設定することで、ほどよくインタラクションの強いゲームになることを期待したのです。
 
 しかし実際に遊んでみると、「運ゲー」感が強い上に動きが少なく価値の低い骨董品を推薦することが安牌である、という非常につまらない展開が待ち受けていました。
 たまたま価値の高い骨董品の推薦に成功した人が低コストを連発するだけの光景を何度も眺めることになったのです。
 
 打開するきっかけはテストプレイ中の「積み上げ式にしてはどうか」という友人、桐崎さんの提案でした。
 これをもとにブラッシュアップを重ね、1ポイントの💎は積み上げ式、2ポイントの👑は後勝ちで移動する仕様に収まりました。
 
 合計5点あるいは2種類の王冠を取る、というシンプルな結論と、いい塩梅でマッチする点数形式になったと自負しています。
 
 
 ・1人用ルールを作る
 めめめのアトリエでは、処女作「里山さすてぃなぶる」も頒布しておりますが、おまけとして1人用ルールを作っていました。
 これについて、ときたまごさんに褒めて頂き、大変感激しました。当時は今以上にめめめのアトリエの知名度が低かったこともあり、ゲームシステムを気に入って頂けたことが本当に嬉しかったのです。 

 以来今後の作品には全てソロのルールを作ることを誓ってゲームを作っています。
 
 Antique Unfairも当然ソロルールを作ろうとしたのですが、如何せん「いっせーの」なのでルール作りには難航しました。カードが12枚しかないことも重大な課題です。
 そんな時、ゲーム作りの根幹を揺るがす事件が起こります。

 萬印堂さんの18枚パックの廃止です。

 一瞬頭が真っ白になりましたが、「まあ多い分にはいいか」と36枚で作ることに決め、それならばと12枚のレプリカカードを作成して正規品vs偽造品の対決をシナリオとすることに決めました。
 残りの12枚はポイントとサマリに割り当て、現在の形ができあがります。
 
 そんな場当たり的ないきさつで原形が作られたソロルールですが、完成版は多人数用ルールに匹敵する面白さを持たせることに成功しました。
 きいろのはむしろソロの方が好きなようです。
 
 私もソロルールを気に入っており、Unityのお勉強も兼ねてデジタル版を作りました(初めてUnityに触ったこともあり、数週間、睡眠時間的な意味で非常に不健康な日々を過ごしました)
 こちらは無料で公開しておりますので、遊んでみてください。
 2021年4月中であれば、最高スコア記録者にAntique Unfairをプレゼントします。
 既にお持ちの方には過去作のプレゼントや、なんか色々考えますので、遊んでいる様子Twitterにアップして下さると、私が泣いて喜びます。

 Windows版
 Android版

 ※iOS版は作っていません。希望があれば頑張ってみるかも。

#3 諸先輩方の分析

 ここまで読んで下さった方に、「このゲーム面白そうじゃん?」と少しでも思って頂けていれば幸いです。

 私は上記のようなことを考えてAntique Unfairを作り、「バッティングゲーム」と銘打ってゲムマで頒布しましたが、想定より少ない数しか手に取って頂けませんでした。これについて先述の打ち上げや一連のツイートでは、先輩方が私本人よりも遥かに深い分析で一般にイメージする「バッティングゲーム」との乖離や、何と呼称するのが適切か、あるいはゲームの面白みについて考察をしてくださいました。
 長くなりすぎるのでここには載せませんが、特に徳じろーさん、多くの時間を割いて私たちのゲームについて考えてくださり、感謝してもしきれません。ありがとうございました。
 
 詳しくはきいろののnoteをご覧ください。
 ゲムマに初出展したらバッティングゲームじゃないと言われた話
 
ここで頂いたご指摘は、#5の反省に直結することになります。

#4 見た目とキャッチとシステムデザイン

 ここからは、ゲームデザイナーんぎょの独り善がりな思想と現実の乖離をお楽しみください。
 
 今振り返ると、アナログゲーム作りを始めて日が浅い私は、そのパッケージを見た人が、そのゲームメカニクスを聞いた人が、どのようなゲームを想像するかについての想像力が足りないよ、という状態でした。
 つまり、前述のオシャレデザインと、ゲーマーズゲーム的なシステムとがチグハグであると考えが及ばなかったのです。

 むしろ、ゲーマーズゲームでオシャレなゲームって少なくない?(注:そんなことはないです)コンパクトに楽しめるから最高だよね!!と考えてこのような形で頒布したわけですね。
 実のところ、そもそもAnique Unfairをゲーマーズゲームと思っていなかった節まであります。私自身が簡単に分かっているのだから、誰でも簡単だろう。よしんば分からないにせよ、プレイ自体は簡単だから何度か負けるうちに覚えるだろう、と考えていました。
 
 Antique Unfairのキャッチコピーは、「煌めけ、私の審美眼」「煌々とした12枚のカードでドラマを紡ぐ、重厚なバッティングゲーム」というゴキゲンなものです。意味もよくわかりません。
 パッケージのシックさも相まって、カジュアルに楽しめる印象を見た人に抱かせたことと思います。

 冷静に考えると、「知らないポッと出の小さな同人サークルのゲームの話を聞いてみたけど思ってたのと違ったし、ちょっと何言ってるのかわからない」。これで立ち去らない方がおかしいですね。

このせいで、下記の通りどの層にも刺さらない看板が完成しました。
 ・カジュアルな方:
  ⇒カジュアル向けっぽい→説明を聞く→難しそう→要らない
 ・ゲームをよくやる方A:
  ⇒カジュアル向けっぽい→要らない
 ・ゲームをよくやる方B:
  ⇒カジュアル向けっぽい→一応話を聞いておくか→バッティングゲームなのか→要らない
 ・ほとんどの方:
  ⇒12枚のカードゲームで2000円??高ッ!!→要らない

 このいずれにも該当しない選ばれし人を除いて、ゲームをやってみたいと思って貰えないということに気づかなかったのです。
 当然そんな神様のような方は多くなく(少数ながらいらっしゃるのが本当にありがたいです。牛肉をご馳走したい)、大量の在庫とともにお台場を後にすることになりました。

 このゲームの売りはなんなのか?オリジナリティは?分析と認識の甘さが招いたことでした。
 未だにシステムを一言で表すことはできていませんが、1人用ルールがあるところはポイント高いのかなと思っています。

#5 改善点

 一番の反省は、ボードゲームに詳しい人とテストプレイをしなかったことです。

 文中に何度かテストプレイ会を行った旨を書いていますが、いずれも私の知り合いに遊んでもらっているだけでした。
 気の置けない友人たちなので遠慮のない批判をもらえる点はありがたかったのですが、メンバーが固定されているため遊んでいるボードゲームの幅に限りがある上にゲームマーケット出展経験もなく、#4で述べたような課題を発見するためには不十分でした。

 私は極めて人見知りが激しく、なかなか面識のない人にコミュニケーションを取りに行かなかったこと。これが最大の反省点です。
 
 ハレルヤロックボーイさんの打ち上げでお話しさせて頂いた先輩方はどなたも私たち新参を温かく迎えて下さり、きっとボードゲーム界隈全体がこんな感じなんだろうと感動しています。
 打ち上げでお世話になった先輩方を筆頭に、今後は可能な限り多くのテストプレイ会に参加させて頂き、あるいは主催し、より充実したゲームマーケットでの時間を楽しみたいと思っています。

#6 まとめ

 ・Antique Unfairの売れ行きがいまいちだったのは、広告と実態が合っていないためかも。
 ・詳しい人とのテストプレイ会が大事。やりたい。
 ・ゲーム自体はおもしろいはず。やってみてほしいです!

ここまで目を通して頂きありがとうございました。
今後とも、めめめのアトリエを宜しくお願い致します。


BOOTH(Anitique Unfair)
https://booth.pm/ja/items/2885688 

 
 

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