【 読んだよ 】 防御意識を溶かす _ 『人間失格』他
ずっと、「防御意識」について考えていました。きっかけは、キム・スヒョン著『私は私のままで生きることにした』の中の、一節。
小説家のキム・ヒョンギョンは『人の風景』の中で、「愛」の反対語が「憎しみ」や「怒り」ではなく「無関心」であるように、「生」の反対語は「死」や「退行」ではなく「防御意識」だと書いている。
防御意識をもつと、人は永遠に自分の人生の外側でさまようことになる。
この一節を読んで、「あぁ、私は防御意識に取り憑かれていたのか」としみじみと感じました。
仕事上でミスが重なったり、厳しいフィードバックをもらったり、どうすればいいのかわからない事案が重なる中で、私は自分を守るために、「防御意識」を身にまとっていたのです。
「人の気持ちが…分からん」
「人…怖い」
「く、苦しい…。辛い」
「辛さから逃げるための…自虐…から元気…泣かない心…」
「誰の、どんな言葉を信じればいいの…」
と。
著者は、
自分の理想通りにいかなくても、
自分の不甲斐なさにたえられないと思っても、言い訳を取り払って本当の自分と向き合おう。
そして自分と向き合えたなら、再び歩きだそう。
それがいちばん大切。
と、締めくくっています。
けれど、私は、辛い状況の中で、防御意識をすぐに取り払うことは、難しいと感じています。
自分を守っていなければ、生きていけなくなることがあると思うから。
そうして悶々と考えている時、家に転がっていた太宰治の『人間失格』を読みました。
数時間後、「これは私の物語だ・・・」と絶句するとも知らずに。
*あらすじ (背表紙より)
「恥の多い生涯を送ってきました」
三枚の写真とともに渡された睡眠薬中毒者の手記には、その陰惨な反省が克明に描かれていた。
無邪気さを装って周囲を欺いた少年時代。
次々と女性と関わり、自殺未遂を繰り返しながら薬物に溺れていくその姿。『人間失格』はまさに太宰治の自伝であり遺書であった。
作品完成の一か月後、彼は自らの命を絶つ。 時代を超えて読み継がれる永遠の青春文学。
読み始めると、冒頭から共感の嵐。
自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。
(中略)
…考えれば考えるほど、自分にはわからなくなり、自分ひとり全く変わっているような、不安と恐怖に襲われるばかりなのです。
自分は隣人と、ほとんど会話ができません。何を、どう言ったらいいのか、分からないのです。
「こ、この人間に対する恐れ…。 わ…私 や〜〜〜〜〜〜ん!!!!」
「人間!怖いやんな!!!!!!」
と激烈に共感しました。( 涙 ) ぐいぐいと読み進めました。
そして、女の人となんやかんやあったり
死にかけて絶望したりした後、主人公は兼ねてから目指していた漫画家として、少しずつ成功します。
( よかったね … )
しかし、彼の成功を聞きつけた友人が、
「しかし、お前の、女道楽もこのへんでよすんだね。これ以上は、世間が、ゆるさないからな」
と酔っ払いながら告げた時、主人公はこう考えるのです。
世間とは、いったい、何のことでしょう。
人間の複数でしょうか。
どこに、その世間というものの実態があるのでしょう。
「世間というのは、君じゃないか」
(それは世間が、ゆるさない)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう ?)
(そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ)
(世間じゃない。あなたでしょう ?)
(いまに世間から葬られる)
(世間じゃない。葬るのは、あなたでしょう ?)
そうして、世間というものは、個人ではなかろうかと思いはじめてから、
自分は、いままでよりは多少、自分の意思で動く事ができるようになりました。
…良いぞ〜〜〜〜〜〜〜!
良いぞ良いぞ〜〜〜〜〜〜〜!
そうだそうだ自分で動くぞ〜〜〜〜〜!
(盛り上がる私)
正直この後のストーリーはあんまり覚えていないのですが(←)、この表現が今の自分にとってドンズハすぎて感動しました。
私が「こうすべき」「こうしなきゃ」「こうじゃなきゃ価値がない」って思ってたことって全部本当だっけ?
誰かから「こうしなさい」って言われたことと、自分自身が大切にしたい価値観がこんがらがってないっけ?
と、思い起こさせてくれました。
主人公が他者との関わりや多様な経験を通して、「世間 / 他者」への恐怖心を溶かしていったように、私も、防御意識を少しずつなくしたいなぁと思っています。
とはいえ、こんがらがった防御意識を、自分で解くのはなかなかに難しい。
今は、カウンセリング等のしかるべきサービスや、自分が安心して自分をさらけ出せる人との対話の中で、少しずつ、防御意識を溶かしている最中。
完全復活には、もう少し時間が必要だけど、
少し前を向けた今日。
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