一片氷心


一片氷心(いっぺんのひょうしん)___
清らかに澄んだ美しい心


数年前、私は運転免許を取得するために教習所に通っていた。
その時の教官にキュンとした事がある。

あ、別にイケナイ恋愛系の話ではない。
その教官は結婚していて、子供もたしかいた気がする。
あれ?それを知っててキュンとしたなんて、
わたしはイケナイ奴だなあ!笑


その日は初めての路上運転だった。
お金を無駄に払いたくないケチな私は、運転講習の予約は誰かのキャンセル待ちを拾っていた。
お金をかければ事前に予約できるみたいだけど、キャンセルでもすんなり出来てたからそれで良かったのだ。
キャンセル待ちだから、教官指定なんてできない。
でもよくI上さんに当たった。

そう、このI上さんこそ
妻子持ちのイケメン教官なのだ!

I上さんは眼鏡をかけていて、
特に運転中に雑談をすることもなく、
危ない時以外何も言ってこない。
穏やかな人だなあ。
そんなイメージでした。


初路上研修でど緊張。

2時間連続で運転だったので、
途中でトレイ休憩があった。

知らない公園の駐車場に停まり、
トイレまで一緒に行った。

「女性トイレはここをまっすぐ行けばあります」

そう言って男性トイレに行ってしまった。

トイレの中で
運転のことを思い出し緊張が振り返ってきていた。

そして、トイレから出て車に向かおうとした。

トイレの前にI上さんがいた。

待っててくれたのか。

そこでちょっとホッとした。
というのもトイレに向かう時、何も考えずにI上さんの後ろをついてきたから帰り道が分からなかった。

「すみません、お待たせしました」

そう言って歩き出した。

その公園には子供たちが楽しそうに遊んでいた。
時間的には夕方。
夕日が差し込んでいた。


「ここの公園、夕日が差すと綺麗ですよね」

ぽつり、I上さんが呟いた。


え、
なにそれ、

夕日を眺めるI上さんの横顔を盗み見た。

夕日に照らされてるI上さんの横顔。
公園で遊ぶ子供たちの姿を見て微笑んでる。


ねえ、あなたの横顔の方が今は綺麗だよ。


夕日が差す公園をそんな風に見つめてるあなたの横顔が綺麗だ。
なんて心が澄んでるんだろう。

心の中でトキメキが止まりませんでした。

この人の奥さんが羨ましくなった。

運転の緊張より、
何だか分からない緊張が私を襲った。


そのあとは特になにもなかった
無事に運転講習を終えた。

その日、私はネットで
I上さんをお気に入り教官に登録したのであった。






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