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Atlas Sound / Let The Blind Lead Those Who Can See But Cannot Feel (2008)

USインディ・ロックの雄、ディアハンターの中心人物、ブラッドフォード・コックスが少年期から始めていたというアトラス・サウンド名義での初のアルバムは、リヴァーブの効いたアンビエントな音空間の中に淡いサイケデリアが広がる1枚。

難病で入退院を繰り返し、孤独な少年時代を過ごしてきた男が、一人自宅で音楽作りに没頭し、やがてバンド・メイトと出会い、その才能を開花させていく。本作はその半生のプロローグを総括したようなアルバムで、彼のピュアで孤独な魂が、逃れられない疎外感に寄り添うように、音の中にしっかりと根付いている。

ピッチフォークも絶賛の本作は、レディオヘッド(あるいはトム・ヨークのソロ作)のように研ぎ澄まされた音が聴こえる瞬間もあり、バンドから離れて作った音楽の自由さとともに寂寥感が滲む。




ディアハンターは個人的に結構好きなバンドで、「マイクロキャッスル」以降のアルバムは全て追っている。
そしてブラッドフォード・コックスのソロ・ワークであるアトラス・サウンドもなかなか魅力的。

彼の生み出す音楽には、救いようのない哀しみがどっしりと横たわっている。
その繊細で美しい楽曲はおどろおどろしさを帯びながら、異端であることの疎外感や恐怖心を否定することなく、無常感とともに受け入れる悟りの境地のようなものも透けて見える。

夢見心地でどこかノスタルジックな、シューゲイザー/サイケ漂う音像ももちろん素晴らしい。

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