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研究のすゝめ~コロナ禍だからこそ出来る「ガクチカ」は?~

こんにちは。NFI理事の加藤です。

先日、NHKの就活ニュースで「「ガクチカが書けない・・・」コロナ禍で就活生はどうすれば?」という記事が公開されました。

私の周辺に限られますがコロナ禍の学生と意見交換をして、そしてこの記事を読んで、思った事がありましたので今日はまとめてみたいと思います。「ガクチカ」とは「学生時代に力を入れたことは何ですか?」という就活の面接でよく聞かれる質問のことを指すそうです。私は新潟大学法学部で「企業法務」という講義を夏季集中講義でここ何年か担当しており、講義の際には冒頭に、OBということもあるので学生時代の経験を話すことがあります。そうすると、必ずと言っていいほど毎年受ける質問が「学生時代に何をしたらよいか」「学生時代にやっておいてよかったことは何か」というものです。このような質問に対して、私はいつも同じような回答をしてきました。そして、その回答が、どうもコロナ禍でも有効そうだなと思った次第です。

「一生懸命に勉強してきた」は悪くない

履歴書に書くような経歴をプロフィールとして示すと、どうしてもその行間は抜け落ちしまいます。例えば、○○大学を卒業後に△△大学大学院に入学し・・・、と言った具合に、大学に在籍した4年間はどういうものだったのか、どうして大学院に進学したのか、等々の情報を知ることが出来ません。私の講義の冒頭では、この行間について、正直恥ずかしいことも含めてご紹介をすることにしています。就活で「ガクチカ」を聞かれるのは、こういった行間について説明を求められているという側面もあると個人的には理解をしています。「ガクチカ」でどう個性的に見せるかが腕の見せ所なのだと思います。この時に、部活やサークルでどういう活動をしていたのか、これは確かにキラキラして見えて、面接官との話も盛り上がるかも知れません。でも、「どうして大学に入学したんだっけ?」というそもそもの理由から考えると、「何を一生懸命に勉強してきたのか」を語るのも悪くないのでは無いでしょうか。悪くないどころか最も正攻法だと私は思っています。

大学生活の集大成を「ガクチカ」に

以前に、とある大学で、就職活動での「ガクチカ」で何を答えたら良いかと学生さんから聞かれたことがありました。ちょうど私が卒業論文を指導していた学生でしたので、「この卒業論文について説明をすれば良い」と答えました。その学生さんはとても不思議そうな顔をして「もっとキラキラしたことを答えなければならないんじゃ無いですか?」と聞いてきました。確かに、ものの本などに目を通してみるとそんな気がしないでもありません。でも、果たして面接官はそんな回答を望んでいるのかなと疑問に思ったりもしました。もしかして、正攻法でアピールするものが無い場合の小手先のわざとして紹介されているだけなのでは無いかと穿った見方をしてみたりもしました。そして「大学生生活の集大成」を是非アピールしてもらいたいと思ったわけです。その学生さんは希望する業種があったため、卒業論文のテーマもその業種に寄せた内容を選んでもらっていました。また、出来るだけ深く興味を持ってもらえそうなテーマを一緒に選びました。結果として、卒業論文に取り組む期間に、沢山の本を読み、論文を読み、関係機関の報告書を読むということを彼はやりましたので、その経緯を紹介して、その感想を簡潔に説明してはどうかと私は助言をしました。彼は希望通りの業種に就職をすることが出来ました。正当な成果を正当に評価してもらえたのだと思いますし、面接では実際に取り組んだことの自信を示すことが出来たのだと思います。

研究のすゝめ

卒業論文ではありきたりだから不安だ、という方には、研究発表をオススメします。私は部活と飲み会とアルバイトが大好きだったので、卒業が近づいてきたときの成績表は散々でした。この成績表のみで評価が下されてしまうと・・・、何か良い方法はないかと考えました。大学院に進学したい、そんなことも考えていたので、大学院につながることがしたいという思いもありました。そんな中で、当時出入りしていた研究室で知ったのが「研究発表」でした。分野にもよりますが、学会や研究会で年に何回か研究発表を行うチャンスがあります。そこに自分なりの研究をまとめて発表してみようと考えました。今振り返ると、サボってしまった学部生の勉強を少しでもやり直し、自分の進路を見つめ直して向き合う、とても良い機会でした。

ちなみに、博士号について説明したこんな図があります。
The illustrated guide to a Ph.D.
研究発表では、学士号で求められる「おでき」に+αをしていくことになります。ベースとなるおできが出来ていることが前提となり、そのおできにどれだけ適切に上乗せが出来るかが求められます。

では、そういった研究発表については誰に聞けばよいのでしょうか。特に、論文?予稿?どうやって書けばいいの・・・?と思うかも知れません。是非、皆さんの指導教員の先生に聞いてみてください。灯台下暗し、皆さんの専攻についてもっとも良い助言をくださるのは、多くの場合、皆さんの先生です。でも、研究に取り組むのは結構大変なことです。皆さんが4年間に学ばなければならない内容+αをやり遂げる必要があります。レポートの書き方を一から学びなおさなければならないかも知れません。大量の文献を読む必要があるかも知れません。引用の方法についてダメ出しを受けるかも知れません。でも、頑張ってください。遠きに行くには必ず邇きよりす、です。皆さんの先生もそんな研究に長年取り組んできた凄い方達です。そしてご自分の研究に高い誇りを持つ方達です。ですので、本当に真剣な姿勢で相談を受けた場合は、きっと相応に対応をしてくださるはずです。

なお、対外的な研究発表は学内のそれと異なり、多くの方の耳目に晒されることになります。自ずと、研究発表の質が、発表の場が要求する水準に達しているか、最低限のルールを守っているか、が要求されます。ですので、先生から研究発表としてゴーサインが出ない可能性もあります。その際はさらに自分の研究の質を高めるように努力してください。残念ながらそれ以外の方法なく、近道はありません。だからこそ、「ガクチカ」としてこれ以上のものはないのです。もしかしたら研究発表を見た人から声がかかるということも・・・?

コロナ禍だからこそ出来る研究発表

こんな研究発表の機会ですが、コロナ禍でも減ることはなく、むしろ増えているくらいです。学会や研究会が遠方で開催されることもあり、その際の交通費なども悩みの種ではあったのですが、コロナ禍でオンラインの学会や研究会が開催されそういった悩みもありません。また、人が集まる場所をつくるには相応のコストがかかります。会場を用意して、時間割を決めて、受付を用意して・・・、準備に時間もお金もかかります。ところがオンラインの開催ですと、この辺りの省力化をすることが出来ます。ワンオペで数百人規模のイベントを開催することも不可能ではありません。でも、何故か、周辺の学会や研究会では学生の発表者が減っています。非常に勿体ない状況だなと思っています。学会や研究会によっては、学生向けに賞を用意しているところもあります。是非「ガクチカ」として、研究発表を検討してみてはいかがでしょうか。