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2023年も終わるっつーじゃないですか

はじまりは「なかよし」だった。
そのあと「ちゃお」や「りぼん」に乗り換えつつ、次第に「ニコラ」や「ピチレモン」を買うようになって、出版社が敷いたレールをおりこうにまっすぐ歩いた。

本屋に行く習慣も、そのとき同時に身につけた。
中学生になったある日「小説とか読んでたらかっこいんじゃね?」と暴走し始めた自意識が、本屋の文庫コーナーへ足を向かわせた。
さくらももこ「世界あっちこっちめぐり」を買って、家に帰って腹を抱えて読んだ。くっっっそ、おもろかった。

『文字だけでこんなに面白いってどういう事?』

その理由を解明したくて、その後はウォータースライダーを滑るみたいに一気に文庫にのめり込んだ。
最初にハマった小説家は吉本ばななで、家にいる時も学校で授業を受けている時も、死の静謐な空気に包まれて過ごした。
水の中に浸水してる時みたいに、友人や家族の声は、日ごとにくぐもって聞こえるようになった。
見えない水圧を跳ねかえすように、体中で自意識がぱんぱんに膨んだ。ちゃんとださかった。

小遣いが足りなくなると、古本屋に行った。その当時の古本屋はエロコンテンツの温床で、オタクかオヤジしかいなかった。
同級生の女子がカラオケ行ってロシアンルーレットたこ焼きでキャーキャー盛り上がったり、プリクラ撮ってセブンにカラーコピーしに行ったりしてる時、私は古本屋で買ったルビのない小さい文字だらけの小説を、行きつけのうどん屋のカウンター席で、ごぼう天うどんを啜りながら読んだ。

特定の小説家にハマったのは角田光代、吉田修一、太宰治くらい。それ以外は乱読した。内容やタイトルはほぼ忘れた。

2023年、読んだ本を振り返った。
60冊くらい読んで、そのうち小説は3分の1程度だった。
どうやら年齢による変化は、体型や味覚だけに起こるんじゃないらしい。
今年はノンフィクションものやルポをめちゃくちゃ読んだ。
作りものより現実の方が、奇妙奇天烈滑稽で残酷極まりないことを身に焼き付けるような気持ちで本を読んだ1年だった。
2024年の私は一体何を読むんだろう。




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