〇と×のジャッジ
今、とあるエリアをより良いものへ進化させようとするまちづくりに関わらせてもらっている。そのエリアは、私の出身地でも居住地でもないけれど、強いご縁で結ばれている大切なエリアだ。
これは3年前、私がこのエリアを活動の場にする上でヒアリングした公民館長の言葉。
その言葉通り、地域の人たちのための企画はもちろんだけど、地域を越えて多くの人を楽しませたい、このエリアの価値を教えてあげたいと願う企画も多い公民館だ。
そしてこの思いは、このエリアの事業者のほとんどが同じ思いだということも、ファンベースカンパニーさんと一緒にやったミーティングで知ることができた。
来る人を楽しませたいし、そうやって楽しんでくれる人がいることがエリアに住む人にとっても嬉しいことだと言ってくれる人がたくさんいる。その中で、このエリアの価値が再確認できて、体感できるようなエリアリノベーションをしたいとプロジェクトは進んできた。
今回のプロジェクトの中核となるのは、約25年前にOPENした地域の温泉。私自身、岩手に移住してから、かれこれ10年もこの温泉を利用し続けている。
そもそもは、この温泉の建物や設備の老朽化が問題となったことが話の発端だけど、となりの公務員はこの案件を「エリアリノベーション」という世界観で捉えて進めてきた。
ただ、最初は「そんなに大きな話にしなくてもいいんじゃないか」「とりあえず建物の改修だけでいいんじゃないか」という声もあって、一昨年は考え方の浸透に尽力した。
そして昨年はエリアのコンセプトメイキングに尽力し、その中でたくさんの地域の人を巻き込みながら話し合ってきた。
まちづくりの専門家でも何でもない私だけど、このプロジェクトを通じて感じていることがひとつある。
それは、どんなに夢のようなエリアのビジョンを描いたとしても一番大切なのはそこで命がけで事業をしてくれる事業者であり、
行政側ができる最大の仕事は、その事業者が気持ちよくやりたいことをやれる環境づくりだということ。
行政の苦しいところは、まだ何も決まってないけど何かを想定して進めないといけない意思決定の難しさと、
「こういうものが欲しい」「これは反対」という事業への〇と×の評価の声が嫌でもぶつけられ続けるということ。
検討委員会を作っても作っても、まちのプロジェクトはステークホルダーが無限大だ。
いろんなことを言われるけど、
結局「何をやるかよりも誰がやるか」だと思うし、
それをやってくれる人によって「何か」はいくらでも良いものになっていくと思う。
私たち行政は、その人=事業者を信じてサポートすることが、「何か」をベストなものにしていく効果的な方法であって、より良い「何か」を論じることじゃない。
事業者が決まっていようが決まってなかろうが、想定される事業のことを説明するたびに〇と×が付けられる。〇は一緒に喜び、×は説得し続ける。「そうですね、じゃあそのような事業に変更しますね」にはならないし、プロジェクトに関わる様々な人や仕事を見据えて想定してきた相手を守る責任もある。想定している事業者は、まだ何も約束されていないけど、ここで事業を行うことを決断してくれる未来のパートナーへの最低限の礼儀でもある。
これは、婚約したわけでもない女性を、結婚に反対する実家の両親に一所懸命説明して説得するような工程だけど、となりの公務員は何を言われても意見を曲げない。信念というか、芯の強さというか、本当にすごいなと思う。
曲げない理由は、その未来の事業者は地域の人の思いがたっぷりつまったビジョンの実現のために手を組んでくれるパートナーだから。そして、その想定パートナーを考えて来たプロジェクトメンバーとの時間を無駄にしたくないから。
どんな業種であれサービスであれ、個人にとっての〇と×は少なからずあると思う。あまり好きじゃないというライトなものから、絶対に嫌だというヘビーなものまで。
でもその個人の評価は、そのエリアに投下するほどの理由があるかどうか、慎重に考えないといけない。だって、×をつけて諦めることは、その未来を奪うことだから。
私は、世の中のすべての事業者を尊敬している。
私には到底できないサービスを生み出して、たくさんの利用者を幸せにしている。
前職の広告業でたくさんの企業とお仕事をしてきたからよくわかる。
少なくとも私は、担当したすべての企業のファンだったし、その会社が業界のマッピングでどのポディションだったとしても
必ずいいところと弱いところがあって、私にとって、そのいいところを見つけてたくさんの人に伝えることが広告の仕事だった。
そして今は、行政の仕事に関わらせてもらっていて、毎日感動している。
〇と×のジャッジの難易度の高さは、行政がピカイチだろう。
でも決めなきゃならない。それを決める職員の決断への責任の重さは想像を絶する。
自分ひとりのためだけではなく、所属する役場のためだけでもなく、もっと大きな地域の、しかも今と未来を左右することを熱心に考えて決断している。
その決断に〇を感じて、ビジョンに共感した人が仲間となって進んでいくし、×だったとしても〇に変化させるために、その都度対話をしていく。
これは行政職員の最大の仕事だなと思った。
取り留めもない話になってしまいましたが、私が言いたいのは
全国の公務員さん、今日もファイトです!
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