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【VISIONING VOICE Magazine #21】 「“社会にいいこと”が経済を動かす時代へ」 〜株式会社イースマイリー 代表取締役 矢澤 修さん〜

NEXs Tokyoが主催する、ローカルおよび国内外の広域展開に挑むスタートアップが”次のステージ”に向かって羽ばたくために、サポートをしてくれる人やファンと繋がる番組VISIONING VOICEをインタビュー記事としてまとめたマガジン「VISIONING VOICE Magazine」

「VISIONING VOICE」はNEXs Tokyoと日経グループがコラボし、次のステージを目指すスタートアップ企業の3つの「カクシン(核心・革新・確信)」に迫り、起業家の想いを深堀りします。
パーソナリティは、長年スタートアップを取材している日本経済新聞社・上田敬さんとNEXs Tokyoコミュニティスタッフ・閏野が務め、番組をお届けしています。

ゲストは、JUMPコース(東京発)のスタートアップ、株式会社イースマイリー 代表取締役の矢澤 修(やざわ おさむ)さんです!

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<登壇者プロフィール>
矢澤 修
(株式会社イースマイリー代表取締役、ソーシャルインパクトデザイナー)
1983年生まれ。難病のある兄妹とともに育った原体験から福祉を学ぶ。社会に出てからはITサービス業界にて様々な事業の立ち上げに従事。
2012年に株式会社ソーシャランドを創業し、ナショナルクライアントを中心にマーケティング支援事業を展開した後、社会課題の解決を目的とした事業を推進するため2016年に株式会社イースマイリーを創業。
ビジネスセクター、ソーシャルセクター双方での経験を活かし、ビジネスの仕組みで社会課題を解決する仕組みをつくる「ソーシャルインパクトデザイナー」として様々な事業開発を手掛けている。
株式会社イースマイリー公式サイト:https://www.esmiley.co.jp/

ソーシャルとビジネスの新しい関係

「社会課題」や「SDGs」といったテーマをわかりやすく伝える絵本の制作など、社会課題の解決に向けたビジネスの仕組みをつくっている、株式会社イースマイリーの矢澤 修さん。現在はご自身のことを「ソーシャルインパクトデザイナー」と名乗られているそうです。

矢澤さん:「ソーシャルインパクトデザイナー」という肩書きを名乗っている背景には、私の生い立ちに原体験があります。私は4人兄弟の2人目なのですが、一番上の兄と一番下の妹が難病患者であるという環境で育ちました。いずれは福祉の世界にイノベーションを起こすのが自分の使命だと感じながら、大学卒業後はIT企業を中心に多くの事業を立ち上げてきました。「ソーシャルインパクトデザイナー」という肩書きには、ソーシャルとビジネスの両方の分野を行き来し、さまざまなパートナーと共に、持続可能で社会的インパクトのある仕組みをつくりたいという思いを込めています。

スクショ(事業紹介1)

矢澤さん:当社は子育て支援と福祉支援を主な事業としているのですが、今日は子育て支援事業について詳しくお話したいと思います。子育て支援事業は「きっずちゅーぶ」という知育動画のYouTube配信から始まり、現在最も力を入れているのがSDGs絵本です。これはNPO法人、事業会社、地方自治体など複数の団体と共創している本です。ソーシャルセクターには、「認知」「共感」「資源」という大きく3つの課題があります。世間に団体の存在を「認知」してもらい、社会問題への「共感」を生み、そこからの行動に繋げること。そして、活動資金や人材、つまり「資源」の調達です。一方で、ビジネスセクターでは、SDGsへの注目が集まっているものの、実際に何をしたらいいのかわからないという声がよく聞かれます。両者を俯瞰的に捉えると、お互いの課題を補完しあうことができるのではと考えたのが本事業を始めたきっかけです。

スクショ(事業紹介2)

矢澤さん:事業の仕組みとしては、ソーシャルセクターの団体からは費用を受け取らず、テーマの提供や監修でプロジェクトに参加していただきます。制作費は企業からのスポンサードで賄われ、1000冊製本し、家庭に無料で配布しています。ソーシャルセクターとビジネスセクターを繋いで、絵本を共創することで、より本質的なSDGs推進に繋がると考えています。他には、地域発の絵本も制作しています。たとえば、渋谷区とは渋谷の現在・過去・未来を伝える本や、落書きといった地域課題に関する本を、大阪府堺市とは、地元の観光名所を巡る本を制作しました。

スクショ(事業紹介3)

スクショ(事業紹介4)

矢澤さん:当社では、社会課題にしっかりと支援が集まるエコシステムを作っていくことを目指しています。また、ソーシャルインパクトだけではなく、持続可能な事業となるように、ビジネスインパクトを出していくことが目標です。

【核心】原体験×ITが生んだ事業

―― 起業された背景について教えてください。

矢澤さん:前述したように障がい当事者のいる家庭で育ち、大学で福祉を学んでいるときから起業への思いはありました。大学卒業後、すぐに起業せずIT業界に進んだのは、視野を広げるためです。将来的にさらに必要性が増していく福祉と、成長産業であるITという二つの領域が重なることで、新しいビジネスが生まれるのではと考えていました。起業の特別なきっかけはありませんが、10年ほどIT業界で事業づくりを経験したことで、起業に必要なノウハウが蓄積されたと感じ、起業を決意しました。

【革新】市場価値の高いソーシャルビジネスをつくる

―― 矢澤さんがアップデートさせたい課題はなんですか。

矢澤さん:日本にはソーシャルビジネスに対して、志高く自己犠牲のもとに取り組むイメージや、いいことをしているけれど稼げない、あるいは社会貢献性の高い事業で儲けるのはおかしいという価値観さえあるように思います。でもそれでは、ソーシャルビジネスのプレーヤーは増えていきません。車に例えると、志はエンジンでお金はガソリンです。ガソリンがなければ、車は走れません。ソーシャルビジネスもビジネスである以上、両方が必要なのです。私自身、ビジネスとソーシャルのバランスを取りながら、事業をつくることに非常に苦労してきました。利益追求は必要ですが、社会貢献性の高い事業でそこを感じさせるとビジネスとしては上手くいきません。世の中にいいことをしながら経済的なインパクトもある、誰もが唸るようなビジネスモデルをつくって、ソーシャルビジネスに対する価値観を変えていきたいです。

【確信】社会起業家を稼げる仕事に

スクショ(確信)

―― 矢澤さんの「欲しい未来」は何ですか?

矢澤さん:私の欲しい未来は、「年収1000万超えプレイヤーがあふれるソーシャルビジネス」です。大前提として、ソーシャルビジネスは稼げないという認識を払しょくさせて、多くのプレーヤーに参画してほしいという思いがあります。私にも子どもがいますが、社会課題というのは子や孫の世代でも様々な形で現れてくると思います。そうしたときに、ソーシャルビジネスが社会的意義だけではなく、市場価値の高い産業になっていれば、プレーヤーも増え、課題自体も改善されていくはずです。長男が私の仕事を見て、自分はいじめをなくすサービスを作りたいと言っており、とても嬉しく感じています。私は親としてソーシャルビジネスが持続可能な事業となる仕組みをつくって、子の世代に手渡していきたい。そうすれば、ソーシャルビジネスにもどんどんチャレンジできる社会になっていきますよね。

パートナーと共に創る未来

―― 最後に、矢澤さんがこれから広域展開をしていくにあたって、叶えたいことや、どんな人に出会いたいか、教えてください。

矢澤さん:自分たちだけでできることは限られており、いろんな人と共に仕組みを創っていく必要があると考えています。今の事業を振り返っても、誰かと誰かが手を組むことをコーディネートして、大きくなってきました。関わる人が多い方が、社会に与えられるインパクトも拡大していくので、こうした連携に興味がある自治体やビジネスセクターの企業に出会っていきたいです。たとえば、1000を超える自治体で、地域の新生児に本をプレゼントするという事業を行っているのですが、その際に自分の暮らす街をテーマにした絵本をプレゼントするというのもいいのではないでしょうか。地域に根差した絵本を一緒に作りたいという自治体には、ぜひ声を掛けていただきたいと思います。

当日の写真

―― 矢澤さん、ありがとうございました!

番組ではその他にも、放送中に届いたマネタイズに関する質問や矢澤さんの事業に対する想いを聞くことが出来ます。youtubeアーカイブより視聴可能ですので、併せてぜひご覧ください!

次回はJUMP(東京発)コースのスタートアップ、シルタス株式会社 代表取締役 小原 一樹(おはら かずき)さんにご出演いただいた#46の記事です!

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