ネクスDSDジャパン

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アンドロゲン不応症(AIS)等のXY女性はなぜ女性(female)に生まれ育つのか?

(1)はじめに  DSDs:体の性のさまざまな発達(性分化疾患)のひとつに,アンドロゲン不応症女性(AIS‐female)という体の状態があります。  彼女たちの体の染色体は男性に多いXYで,性腺は精巣に近いものなのですが,なぜか彼女たちは女性(female)に生まれ育ちます。  他にも実はスワイヤー症候群やフレイジャー症候群,SF1症,リポイド化形成などの体の状態で,染色体がXYでも女性(female)に生まれ育つ女性たちがいます。  こういう女性たちはXY女性(

    • DSDsの昔の「性別割り当て」と現在の「性別判定」の違い。そしてトランスの皆さんの言う「割り当てられた性別」との違い。

      はじめに  DSDs:体の性のさまざまな発達(性分化疾患)で,生まれたときに外性器の形状だけでは性別がわかりにくい赤ちゃんの「性別判定」は現在どのように行われているのでしょうか? それは昔の「性別割り当て」とはどう違うのか?  また,トランスジェンダーやノンバイナリーの皆さんの領域で,「割り当てられた性別」という表現が使われることが多くなっています。  ですが,DSDs:体の性のさまざまな発達(性分化疾患/インターセックス)の領域で使われる「性別割り当て」とはまった

      • 人間が人間であるために。みなさまにお願いです。

        みなさまに,特に「アライ」のみなさまにお願いです。 男女の性別というものを相対化したり,LGBTQ等性的マイノリティの皆さんや「性自認・性同一性」の理由付けとして,DSDs:体の性のさまざまな発達(性分化疾患)を持つ人々の話を持ち出すのは,どうかお願いです,おやめ下さい。 ご自身のお子さんやご自身の「性器」の話が,公に公然と話をされたら,みなさんはどう思うのでしょうか? みなさんがまるで良いことをしているように思い込んで取り上げているのは,私たちの,人間の,もっともセン

        • なぜDSDsを持つ人々を使って「男女だけじゃない」というのは #人権侵害 なのか?

           いまだに「インターセックスの人もいるから,男女の区別はない・境界はない・男女だけじゃない」という言い方が,様々な本やアカデミズムでもされていることがあります。  ですが,こういう言い方は,現在では人権侵害になるのです。  なぜ人権侵害 になるのか? 簡単に説明していきましょう。  まず,そもそもDSDsとは,生まれつき子宮や膣のない女の子や,尿道口の位置がずれた状態で生まれる男の子,性器の形が違う女の子や男の子など,女性(female)・男性(male)の様々な体の状

        アンドロゲン不応症(AIS)等のXY女性はなぜ女性(female)に生まれ育つのか?

          DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)の新基礎知識Q&A

          この記事のまとめ DSDsは「男でも女でもない性」ではなく,「女性(female)にも男性(male)にも生まれつき様々な体の状態がある」ということです。 DSDsは「両性具有」ではありません。「両性具有(男でも女でもない性)」は「吸血鬼」や「狼男」と同じく,神話的なファンタジーの存在です。 現実には当事者の大多数は「性分化疾患」も「インターセックス」も使いません。安全な包括用語は「DSDs:体の性のさまざまな発達」です。 現在では医学も発展して,然るべき検査によ

          DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)の新基礎知識Q&A

          DSDsの人々は「第3の性別」を求めているのか? インパクトを求め、単純化した報道は当事者と家族を危険に晒す

          はじめに  2017年11月9日、「『第3の性』認める法改正へ ドイツ憲法裁が国に命じる」というニュースが流れました。  このニュースは、戸籍に登録された性別を男女以外の「インター/多様」もしくは「多様」に変更できるよう求めた、ある「インターセックス」の体の特徴(現在では医学的には「性分化疾患」と呼ばれる)を持つ人の訴えをドイツの裁判所が認め、性別が登録されている成人に対して、男女以外の「第3の選択肢」(それがどのような表現になるかは未定)を認める法改正を国に対して命じ

          DSDsの人々は「第3の性別」を求めているのか? インパクトを求め、単純化した報道は当事者と家族を危険に晒す

          「男性か?女性か?の前に、私はひとりの人間です」 届かなかった言葉の意味と、本末転倒な“多様性”

          はじめに 「男性か?女性か?の前に、私はひとりの人間です」  これは1990年代に海外で、DSDs:体の性のさまざまな発達(性分化疾患)と呼ばれる体の状態を持つ人びとが、社会に向けて訴えた言葉です。このフレーズは日本でも「インターセックス」を扱った小説やコミックで引用されました  しかし残念なことに、この訴えは当事者の意図とは違う形で受け止められ、使用されてしまいました。  この言葉が本来切実に訴えようとしていた意味は、DSDsといった体の状態を持つ子どもや人びとが

          「男性か?女性か?の前に、私はひとりの人間です」 届かなかった言葉の意味と、本末転倒な“多様性”

          「性自認」論争の中で、死さえも利用され続けた一人の男性(『ブレンダと呼ばれた少年』について)

          はじめに  男らしさや女らしさは生まれつき? 自分は男である・女であるという性別同一性や、異性を好きになるか同性を好きになるかという性的指向は生まれつき? それとも社会的な要因? ……そういった疑問は、ある人には身を切るほど切実に、ある人にとっては「学術的な興味」や「社会改革の問題」として立ち現れてくることでしょう。それは時に、社会を二分するほどの大論争になるかもしれません。こうした疑問や興味、論争は、昔も今も、そしてこれからも、飽きることなく永遠に続いていくことでし

          「性自認」論争の中で、死さえも利用され続けた一人の男性(『ブレンダと呼ばれた少年』について)