【ニューヨーク滞在記#1】まさかの出国拒否!片道航空券の悲劇
これは2016年、無計画にニューヨークへと旅だった高木友夏里の旅の記録です。
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いよいよニューヨークに向けて出国の日。
わくわくと同時に不安もあった。「アメリカに入国できるのだろうか」という不安だ。なぜならわたしは片道航空券しか持っていないのだ。
「アメリカに片道航空券で入国できるに違いない」という思い込みで(というか1ミリの疑いもなく)、いつものように片道だけのチケットを取ったのだが、
(滞在中に他の都市や国へ行きたくなったときに「帰りのチケットがあるから」という理由で躊躇したくないので、片道チケットしか持たないのがわたしのひとり旅スタイル)
ニューヨーク在住の方に「片道航空券だと入国できないかもしれないですよ」と教えられ、そこで初めて「アメリカは復路または第三国へ出る証明がなければ入国できない国」だということを知ったのだった。
そんなこんなで心配の種を抱えつつも、持ち前の「なんとかなるだろう精神」で当日を迎えた。
朝7時、伊勢志摩サミットのため超厳戒態勢の中部国際空港に到着した。なぜよりによってこんな日のフライトにしてしまったのだろうかと、予約した当時の自分を恨みながら電車を降りる。
空港に入るために身分証を提示しなければならないため、ロビーには長蛇の列。
めずらしく余裕を持って行動できた自分を褒めながら、検査を受けてチェックインカンターへ。
わたしが乗るのは中国国際航空。北京で乗り継ぎニューヨークへと向かう。カウンターは比較的空いており、すぐに受付までたどり着くことができた。
対応してくれたのは感じのいい、ちゃきちゃきとしたお姉さん。
「アメリカでの滞在先はどちらですか〜?」「何日間滞在するんですか〜?」とテンポ良く質問を投げかける。
とても話しやすい人だったので「入国できるか不安なんですよね〜。片道航空券しか持ってなくて」と軽く言うと、意外にもお姉さんは深く考え込み、しばしの沈黙。
「………厳しいかもしれないです………」
「帰りの航空券か、もしくは他の国へ飛ぶチケットを持っていらっしゃらない方には、出国を許可できないという規則なんですよ…」
これはまずいことになったという思いと同時に、自分への猛烈な怒りが湧き上がる。
なにやってんだわたし。「片道航空券しか持ってないんですよ〜」なんてアホ面して言ってる場合じゃないよ。自ら告白してどーすんのさ。
猛烈に後悔するわたし。
真剣に考え込むお姉さん。
そこに上司とおぼしき男性係員も加わり、どうしたもんかと考え込む。
お姉さん:「カナダへちょっと寄るとかどうですか?バスとかあったっけ…?」
わたし:「あ!それなら、ニューヨークからLAへ行った後、バンクーバー行きたいなあって思ってたんです!」
男性係員:「そういうことなら………カナダ行きのチケット取れます?いま」
わたし:「い、いまですか………?」
男性係員・お姉さん:「いまです」
わたし:(まじすか…)
これはやっかいなことになった。
男性係員:「日付が先の方のチケットなら1万円くらいで取れるから。仮に行かなかったとしても、アメリカ入国のための御守り代わりとして。だってもし入国拒否なんてことになったら、30万、40万と払って帰ってこなきゃいけなくなるし…」
わたし:「ひいい!いますぐ取ります!」
お姉さん:「じゃあお荷物はお預かりしておきますね!お待ちしてま〜す!」
むちゃくちゃ明るいお姉さんと対照的に、わたしは青ざめていた。
よりによってチェックインがせまっているこの状況で、カナダ行きのチケットを予約しなければならないなんて。飛行機のチケット予約、何回やっても慣れないんだよなあ。
いつもドキドキしながらやってるのに、まさかこんな時間のない中でやらなきゃならないなんて。
大丈夫かな。
いやいや大丈夫かなじゃなくて!やるしかないんだ。
チェックインカウンター近くのベンチに座り、急いでパソコンを開く。
ちょっと待ってよ。全然Wi-Fiつながらないよ。
頼むよほんと。再接続、再接続!
5分ほど格闘し、やっと繋がる。
うおおおおおおい死ぬほどネット遅い!
飛行機に乗れずセントレアで呆然と佇む自分の姿が脳裏をよぎる。
あああああどうしようどうしようどうしよう。
スタバならWi-Fiあるよね。スタバに走るか?
でも男性係員が「ロビーに備え付けのパソコンがありますよ」って言ってたな。パソコンを探せ!
いやその前に搭乗手続きの締め切り時間を聞いておかなきゃ!
軽いパニックを起こしつつ、中国国際空港のカウンター近くにいる女性スタッフに声をかける。
わたし:「あっすみませんっ!」
女性スタッフ:「はい、いかがされましt…」
わたし:「パソコンどこですか?!」
女性スタッフ:「パソコンでございますか?こちらの案内板に…ここにパソコンのマークがありまs…」
わたし:「スタバどこですか!?」
女性スタッフ:「スターバックスは2箇所ございまして、ひとつはここをまっすぐ行った先にございまして、もうひとつはエスカレーターをあがっt…」
わたし:「チェックイン何時までですか?!」
女性スタッフ:「あ、はい、どちらの便でしょうk…」
わたし:「これです!(eチケット見せる)」
女性スタッフ:「これは……………」
口ごもる女性スタッフ。どうした?早く教えてっ!
中国国際航空の便ですね。
うんそうだよ!なに?どうした?
わたくしどもはJALなので。
え………?
見上げると、目の前にはでかでかと「JAL」と書かれたカウンターが。
焦るあまり、JALのカウンターを中国国際航空のカウンターだと勘違いしていたのだ。
恥ずかしさのあまり女性スタッフの顔をろくに見ることができず、そそくさとその場を立ち去る。
それにしてもなんで間違えたんだろうか。
数メートル先に佇む中国国際航空のカウンターとJALーを見比べてみる。
(手書き)
上:中国国際航空
下:JAL
激似やんけ。
なんとまぎらわしい!そら間違うわ!
いかんいかんこんなことやってる場合じゃないんだった。早く予約しなきゃ。
高速に回転しつつも焦りのため空回る頭が出した答えは「一刻も早くカナダ行きのチケットを予約することが最優先」。
空港内に備え付けてあるパソコンへとダッシュした。
近くにいたスタッフに、「すみません!これどうやって使うんですか?!」と半ば怒鳴り気味に尋ねる。
「スミマセン、ワタシ、ワカラナイデス」
中国人風のスタッフはそう答えた。
ええぃ仕方ない!こうなりゃ自分でなんとかするしかない!
見たところパソコンは旧式のWindows。100円で10分使用することができるらしい。投入口に100円を入れてマウスを動かすと、固まっていたディスプレイが動き出した。
まずネットを開く。
よしよし。若干遅いけどちゃんとつながる。
航空券検索サイトを開き、LA発バンクーバー行きを検索。
日にちはどうしよう。
いつまでニューヨークにいるかもわからないし、いつまでLAにいるかもわからない。
帰りのチケットはおろかニューヨークからLA行きのチケットすら取っていないのに、そこをすっ飛ばしてLAからバンクーバー行きのチケットを取ろうとしているのだからもう何が何だかわからない。
日にちなんて今考えてもわかるはずがない。とにかくチケットを取ることが重要なんだ。手数料はかかるだろうけど、日にちの変更はあとからできる。それに最悪チケットは捨てたっていい。
適当な日にちに設定し、大急ぎで予約を完了させた。
ふう。なんとか間に合った(のか?)
「早くしなきゃ」というパニックで、やたらと時間がかかったように思ったけれど、予約が完了した安心感から少し冷静さを取り戻すと、案外そこまで時間はかかっていなかったかもしれない。
しかしチェックインの締め切り時間は不明なので、急いで中国国際空港のカウンターへ。
そこには1組みのチェックイン手続き中のお客さんがいた。
よかった、まだチェックインの時間は過ぎていない。
さっきのお姉さんがわたしに気付いて「おかえりなさーーーい!」と声をかけてくれた。
男性係員も奥から出てきて予約の控えを確認してくれた。
お姉さんが航空券ナンバーを控えて入力したところで、ほっと肩をなでおろす。よかった。これでなんとか出国できそうだ。
一連のやりとりですっかり打ち解けたわたしたち。
男性係員はもはやわたしに敬語すら使わない。
「乗り継ぎ時間が短いから、前の方の座席にしておくね」と、まるでわたしが姪っ子か何かのように話しかけてくれる。
ところでわたしが乗る飛行機は、セントレアから出発し、北京で乗り換えてニューヨークへと入る。その乗り継ぎ時間は1時間25分という短さ。ちゃんと乗り継ぎできるだろうか。
そんなわたしを男性係員はさらに不安にさせる。
「サミットの影響でフライトが遅れることもあるから。そしたらもっと乗り継ぎ時間が短くなっちゃうからね」
なんでもまだ要人のひとりが到着していないらしく、わたしの便とその要人が到着する時間がかぶったら、要人の飛行機が着陸するまで離陸できないというのだ。
ほんと勘弁して。どこの国のどいつだよ遅れているのは。
頼むからわたしの便のフライト時間にやってこないでくれ。
男性係員に「乗り継ぎがんばって!」と励まされ、お姉さんには「またすぐにゲートで会いましょう!」と声をかけられる。
どうやらチェックインの時間はギリギリだったらしく、このあとすぐにお姉さんたちはゲートへ移動するらしい。
そんなギリギリまで待ってもらったことを申し訳なく、またありがたく感じながら国際線の搭乗口へと向かう。
いろいろあったけれど、なんとか出国できそうでよかった。トラブルを引き起こすのは毎度のことだけど、ここまで焦ったのは初めて。
でもやっぱりなんとかなっちゃうものだよなあ。うんうん。
なんて考えながら歩いていると、
高木さま〜〜〜〜!
お待ちください高木さま〜〜〜!
大声でわたしを呼ぶ声がする。
びっくりして振り返ると、さっきのお姉さんがすごい勢いで走ってくる。
なに?!いったい今度はなに!?
「すみません、カナダ行きのチケット番号の控えが消えちゃったのでもう一度メモらせてください!」
なんだそんなことか。よかった。またなんかやらかしたかと思ったわ。
気を取り直して出国審査へ。
ゲートに着くと、ボーディングタイム5分前だった。
機内に乗り込む。あとは飛立つのを待つだけ。ニューヨークへ向けていよいよ出発だ。
…
飛ばない。
離陸時間の9時を過ぎても、まったく飛ぶ気配がない。
まじか。要人か。
ただでさえ短い乗り継ぎ時間がどんどん減っていく。1時間25分しかないのだ。10分遅れれば1時間15分になり、20分遅れれば1時間5分になる。
これは本気でやばいんじゃないのかい?
どうすればいいんだろう。
北京についたら人をかき分けてダッシュすればいいんだろうか。
そういえばニューヨーク在住の方が以前「もし時間がヤバかったら、係りの人に強めに言って前の方に通してもらったほうがいいですよ!」と言っていた。
できるんだろうか。
いや、やるしかないのだ。
そんなことを考えていると、やっと飛行機が動き出した。
25分遅れだった。
乗り継ぎ時間1時間。
果たしてわたしは無事乗り換えができるのだろうか?
次回に続く。
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