見出し画像

身投げを招く地蔵? 秩父・姿の池に伝わる人柱のたたり!

秩父市内の羊山公園では、毎年初夏に「芝桜まつり」が開催される。羊山丘陵の斜面に広がる一面の芝桜を目当てに、近隣の都県から多くの観光客が集うのだ。しかし、羊山のふもと姿の池には、華やかな観光地にはふさわしくない人柱伝説が存在する。

姿の池に伝わる様々な人柱伝説


画像2


姿の池は羊山のふもとにあるため池で、国道二九九号線から「芝桜まつり」が開催される「芝桜の丘」へ向かう道筋の左手に現れる。その水は現在も農業用水として利用されており、一見すると岸辺に雑草の生い茂った何の変哲もない池だ。
用水地として灌漑された当時は作るたびに堤が壊れ、村民に多くの被害を出したという。伝説では、無事に堤を完成させるため、人柱が必要だとされた。人柱に選ばれた人物は名主の娘、巡礼の女性、あるいは工事をさぼった人夫など、伝説によって異なるが、人柱が埋められた後、無事に用水地は完成したと伝わっている。しかし伝説には、用水地の完成以降、若い女性の身投げが続いた、という後日談がある。
供養のために地蔵が建ったが、その地蔵がかえってさらなる身投げを招き、「身投げ地蔵」と呼ばれたという。

姿の池のほとりに身投げ地蔵は実在するか?


画像1


伝説の中には「身投げ地蔵」の他に、身投げする人を助ける「引き上げ地蔵」が建てられた、と伝えるものもある。
実際に羊山のふもと、姿の池へと向かってみると、池に沿って一車線幅の道路が舗装され、その脇に句碑と一体の地蔵のある一角を発見した。
80cmほどの石垣の上に、植栽とともに俳句を刻んだ句碑と古びた地蔵が一体安置されている。
地蔵にはよだれかけがかかり、退色してはいるがかつては赤かったと思われる。小銭など供え物の形跡もあり、この地蔵が敬われているのは確かなようだ。
事前情報ではその近くにもう一体、地蔵があるらしいのだが、情報に沿って近くの山の斜面を注意深く観察しても、発見できなかった。

まとめ


発見した地蔵がどちらなのかは不明だが、伝説通り、姿の池のほとりには地蔵があった。そのことから、姿の池工事の際、人柱が埋められ、その後、身投げが続いたことは事実なのだろう。それが人柱のたたりかどうかはわからない。

<参照>
図書館郷土資料室所蔵の秩高社会科研究部冊子「秩父盆地第42号」(昭和53年発行)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?