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【ニュートラの学校レポート&アーカイブのご案内】11/4「B1フィールドワークとデザイン」

「ニュートラの学校」は、4年目となったNEW TRADITIONALのとりくみが次の段階に向かうべくはじめたプログラムです。"福祉"と"伝統のものづくり"を結びつける。ここに関われる可能性のある人の数をもっと広げ、そんな人どうしが学び合える場をつくりたいと願っています。
今年度は2コースを設け、様々な観点から"福祉"と"伝統のものづくり"について考えました。

プログラムA「福祉の課題から考える」コース(A1〜A5)
何を変えることで、福祉のものづくりはもっとよくなるのでしょうか。プログラムAでは福祉現場の課題にしっかりと向き合い、新しい可能性をひらいてきた実践者とものづくりの価値を高める方法を学びます。

プログラムB「これからの伝統を考える」コース(B1〜B5)
生活に必要とされる伝統工芸やものづくりは何か。作り手や使い手、環境、素材、持続性など、さまざまな視点からこれからの伝統やものづくりのあり方や暮らしについて考えます。

アーカイブ映像の販売もありますので、下記URLよりご確認ください!
https://tanpoponoye.stores.jp/
※5月末までの視聴となりますので、ご注意ください。
こちらのnoteでは各回のレポートを、たんぽぽの家プロジェクトスタッフの木村よりお伝えさせていただきます!

「フィールドワークとデザイン」

B1 フィールドワークとデザイン
山形を拠点とする吉田さんは、山や森をフィールドに、その土地がもつ魅力に目をむけ、そこにある価値を自分自身の手でものに反映させています。生活や仕事、風習などを分断せずものをつくること、多様な人が関わることを前提としたものをつくる方法を学びます。

11月4日(金)のニュートラの学校は、11月3日(木・祝)〜6日(日)に開催されたニュートラ展in東京からの開催でした。会場である(PLACE) by methodにてデザイナーの吉田 勝信さんをお招きし、お話を伺いました。

採集と’ホライジング’

東京都出身、山形を拠点に活動されている吉田さん。高校中退後に卒業資格を取り、大学では文化財の修復学科にいらっしゃたそうです。
現在はフィールドワークやプロトタイピングを取り入れた制作や印刷を行っており、根柢には「採集」の考え方があるそうです。

採集とは、素材を採ることやコレクションをすること。そして採集と似ているものの少し意味の異なる「ホライジング」も大切にしているそうです。「ホライジング」とは常に動いていること、そして「探すこと自体」「採集するまであがくこと自体」を目的にしていることを意味するそうです。

デザイナーとして、スツールやロゴを製作されていますが、ただつくるのではなく、その土地の文化や環境との関係性を大切にすることを意識されているというお話も印象的でした。「採集」する吉田さんならではのプロジェクトもご紹介させていただきます。

それでも人をはモノをつくらなければならない

これだけモノが溢れる時代、新しいものをつくるにはどうすればいいのでしょうか。自然物は乱暴に採るとなくなってしまうものの、丁寧にすれば半永続的に採ることができます。

吉田さんがやられている「超特殊印刷」は、活版印刷などの特殊印刷よりもさらに手を加えるというもの。凹凸のある版を箔を挟んで強い圧力で押すというもの。素材を採集に行くところからはじまっています。


デザインや超特殊印刷の根柢に「採集」があり互いに影響しているというお話もあり、デザインや「つくる」こと自体が営みであることを再認識させられました。

「ものづくり」に留まらない時空を超えた「作品」のお話も大変おもしろかったです。例えば、岩手の漆器とパキスタンの漆器。専門家が作っている漆器と生活から立ち上がった漆器ではあるものの、そのフォルムは共通点が見受けられます。同じように、インドネシアのおもちゃと福島の張り子にあった木彫りの柄は、諏訪で見つけた5000年前の土器にも似たようなものが刻まれていたそうです。

木彫りの事例で言うと、最小限のストロークで、動きやすさを考えて、という観点から考えると納得の柄だとか。オリジナルでたどりついたものであるかもしれない、でも、ずっと昔に誰かもオリジナルでたどりついている。その思想によって、オリジナリティの所在の概念が揺さぶられ他者と私の間に立ち上がるものがあるとこうこと、素材を超えたものが生まれるということ。その着目点がとても刺激的でした。

フィールドワークで見えるもの

10年前に出会ったというおじいさんが、農作物をつくりにあたって「まじない」の力を語っていたこと、草の天日干しを自分でやらずに自然の力を借りていることからみた「手間」と「暇」のこと、ひょっとこおどりが上手くできない人は張り子も上手く作れないと語っていた職人さんのこと。
ぜひ本編で見ていただきたいですが、時間や関係をより大きく感じながらのものづくりは、深く神秘的で豊かだなと感じました。

時代を超えた協働や「つくることを受け渡す」発想から取り組まれているのが、「NEW DANTSU」。山形の障害のある人の表現を、高密度の手織りの絨毯「米沢緞通(よねざわだんつう)」に取り入れた敷物です。福祉施設で製作されています。

デザインの大枠だけをつくり、あとはメンバーに委ね植え込みを行っていくそうで、失敗の概念がないのでやり直しがなく、だからこそ唯一無二の商品が出来上がるというとても素敵なものでした。

また、海や山から採集した素材で「色」をつくり、現代社会に実装することを目的としているForaged Colorsというプロジェクトでは、様々なストーリーのある色をつくり出していることが分かりました。「何色をつくるか」では」なく「どの媒体から色をとってくるか」という考え方は、採集やフィールドワークを大切にしている吉田さんならではの視点だと感じました。


会場では、多くの方にご来場いただき質疑が飛び交う時間になりました。

ニュートラの学校について

最後までお読みいただきありがとうございました。ニュートラの学校で得た気付きや問いは、すぐに活かせるものもあればじっくりと効いてくるものもあるかと思います。
今後もこちらのnoteにて各回レポートは発信していきますが、ぜひアーカイブもご覧いただきご自身の学びに繋げていただければと思います!
▼今回レポートした回のアーカイブはこちら
https://tanpoponoye.stores.jp/items/6373b1cd4aed191f4100ef08
▼NEW TRADITIONAL webサイト
https://newtraditional.jp/

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New Traditional
ニュートラディショナル(ニュートラ)は一般財団法人たんぽぽの家がはじめた取組みです。障害のある人のものづくりと伝統工芸の相互発展をめざします。つくり手、つかい手、つたえ手が交流し、ものをとおして新しい生活文化を提案します https://newtraditional.jp

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