尊い時間の中を生きている
この前、久々に高校生時代の同期と先輩に会った。部活のメンバーで。みんなでご飯を食べた。こんなに懐かしくて優しい時間もあったんだっけ、というレベルの会合だった。
同時に切なさ、虚しさも襲ってきて、胸の奥がツンと痛んだ。もうあの若さは僕らにはないんだな、と思うとなんとも言えない感情になる。懐かしいとは、もう戻ってこない時間の集合体のことを言うのだ。
あの時、どういうわけか、僕は久々に同期に連絡をした。そしたら意外とすんなりと会う流れになった。好きだった人たち、先輩らのことを思い出した。階段ですれ違うだけでも胸が張り裂けそうだった。あの時、どうやって呼吸していたのかよく覚えていない。
約束の日、目的地には少し早く着いた。やや遅れて同期と先輩はやってきた。「おう、久しぶりだな」と先輩はあの時と何も変わらないトーンで放った。続けて「何も変わってないな」と明るく言った。
瞬時、10年以上前にフラッシュバックした。ママチャリで、腰を浮かして学校まで急いで漕いでいた自分を思い出す。なぜあんなに急いでいたのか、なぜいつも怖がっていたのか。道中で川が見える橋を渡る。澄んだ空と水の流れる音がし続けていた。
同期と先輩と僕。僕らは昔話をしながら海鮮を中心に食べた。お互いの近況やこれまでの人生を話す。先輩はいま美容室を経営してるらしい。涙が出てきてしまいそうだった。
僕は部活内でいじめに遭っていた。それでいい思い出もあったはずなのに、ほとんどが黒く染まってしまい、思い出したくない日々に変わってしまったのだ。そのことを伝えた。会いたくても会えない時間が長く続いていたのだ、と。
同期と先輩に、僕がLGBT、ゲイだということも伝えた。笑っていた。全く深刻そうではなかった。当時好きだった人たちのことも伝えた。大好きだった。今では過去形になったが、ずっとずっと大好きだった。
「また集まろうよ」そう言う先輩に、「はい、ぜひ。また会いたいです」と返す自分。空間ごとワープして、あの頃の時間が流れているような感覚だった。でも今僕らはもう大人になってしまったのだ。先輩のスマホをチラッと見ると、奥さんと子供が映っている。もう10代の先輩ではないのだ。当然、僕自身も。
帰り道、車を走らせながら、会えてよかったなと思った。切れない縁、なくならない想いを感じた。ずっとずっと繋がっていくんだろうなと。
額に汗をかきながら必死にチャリを漕いでいた自分も、今は車を走らせている。ハンドルを握る手に力が入る。信号待ちの時、強く目を瞑る。大好きだった人たちのことを思い出した。
悪いことだらけだったと思い込んでいた思い出の中にも、たくさんの光が混じっていた。尊い時間の中を生きている。これまでも、これからも、ずっずっと。
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