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「答えが一つだなんて、つまらない」。多様性に関する、7人の視点

こんにちは。NewsPicksソーシャル編集部の櫻田潤(@jun_saq)です。

今回は「多様性」をテーマに、NewsPicksのオリジナル記事から、7人の考え方を紹介します。「多様性」に対する答えそのものというわけではなく、考えるきっかけとするための視点として受け取ってもらえたら幸いです。

❶ わかり合えなくてもスルーする

アートボード 11@2x

マレーシア在住の編集者・作家の野本響子さんインタビュー(昨年9月公開)に出てくる考え方です。

「マレーシア流の考え方で、取り入れたらいいのにと思うものは何か?」との質問に、野本さんは「多民族国家の中で育まれた多様性についての考え方」だと答えています。

野本さんが思う、「多様性」に対する誤解とは?

多様性のある社会とは、決して「価値観の違う人がわかり合うこと」ではありません。

そこが日本では誤解されているように思います。

多様性のある社会での態度とは、つまり「お互いを放っておくこと」「わかり合えなくてもスルーすること」なんですよ。

マレーシアではそもそも宗教が違うので、「あなたの家と私の家はここが違う」などと口を出しはじめたら、そのまま戦争になってしまいます。
──『多様性とは「お互いに口を出さないこと」』より

❷「自分はこう思う」ということを大事にする

アートボード 12@2x

テレビ番組『日立 世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして活躍する、作家・篠原かをりさんのインタビュー(今年7月公開)に出てくる言葉です。

新型コロナに対する反応が、「家から一歩も出ない」という人から「全く気にしない」という人まで、幅広いことに対して、人類が絶滅しないためのリスクヘッジと言えると述べています。その説明の中で、極端な考え方をする人の存在について次のように捉えていたのが印象に残りました。

何が正しい/正しくないということではなく、人類全体でバランスを取っている。

逆に言えば、ひとりの人間ではバランスが取れないので、自分の中で「中立」な考えを持とうとしても、それはたぶん不可能に近いと思うのです。

自分から見て極端な考え方をする人がいると「この人怖いな」とか「変わってるな」と思ってしまいますが、その反対側にもまた極端な考えがあったりして、そのバランスを取るためには、やはり両方が存在しなくてはなりません。

そうは言っても、個人の観測範囲では全体像を捉えることは難しいので、「中立」を目指すよりも、「自分はこう思う」ということをまず大事にする。それが結果的に、集団でのバランスを保ち、集団を守ることにつながっていくのかなと感じています。
──『大人気ミステリーハンターの、仰天「生き物講座」』より

❸重要なのは、周りの人が勝手に投影してくる『私のあるべき姿』を跳ね返す強さ

アートボード 13@2x

芸術家で、オードリー・ヘップバーンの孫でもあるエマ・ファーラーさんインタビュー(2018年公開)に出てくる言葉です。

何かとヘップバーンと比較して見られる中で、世間の声との付き合い方を見つけたそうです。そこに多様な生き方のヒントがあります。

私が芸術家を目指して絵画を学んでいるときは、『ヘップバーン氏の孫なんだから、モデルや女優を目指せばいいのに』とよく言われたものです。

しかし、いざモデルの仕事をやってみると、今度は『自分らしい人生を選ばずに祖母の真似をしている』と批判されました。

結局、人は『自分が見たいもの』を私に投影しているだけだと気づきました。

目や笑顔が似ていると言う人もいれば、全く似ていないと言う人もいます。私に彼女と同じ道を歩んで欲しい人もいれば、そうでない人もいる。

全員の声を聞いていると混乱するばかりだったので、一度その『ドア』を閉じることにしました。

絵を描いていると、細かいところにとらわれすぎずに、全体を見るという人生において一番大切なことに気づけます。

やはり私は絵を描いている時が一番楽しいとわかりました。たとえ世間が望んでいたとしても、モデルは私がやりたい仕事ではない。

仕事を断った時こそ、すごく解放された瞬間でした。
──『祖母オードリーの教訓、「頑固」は美徳だ』より

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❹新しいものを開発するということは、何か尖ったものが必要なんだ

アートボード 14@2x

2019年にノーベル賞化学賞を受賞した旭化成の吉野彰名誉フェローのインタビュー(今年1月公開)からの言葉です。

吉野さんの座右の銘は「実るほど頭を垂れる稲穂かな」。これを吉野さんは「実る前はとんがっていなさい」と解釈しているそうです。

ノーベル賞につながった研究はどのようにして生まれたのか、次のように話してくれました。

まず、新しいものを開発するということは、何か尖ったものが必要なんだよね。

同時にたくさんの問題点があったとしても、人とカネと時間をかければ、解決策が出てくるものです。

逆に、尖ったものがなければ厳しいとも言える。

私はもともとね、ポリアセチレンという材料の研究をしていたんです。でも、途中から電池の研究に変わっていった。

旭化成という材料メーカーの中で、電池は異質な研究テーマだった。だから当然、反対意見も出てくる。材料メーカーにとって、電池は「飛び地」にある分野です。

だから、「この新型の電池はこんなふうに役立って、マーケットは将来、こうなります」なんて話を役員に説明しても、議論が噛み合わない。そういう軋轢(あつれき)はあったよね。

内部で議論していても埒が明かないので、会社側は「もう勝手にせえ」みたいな状況になった(笑)。
──『2020年代、「新・イノベーターの条件」』より

❺あなたが「人と違う」からこそ一緒にいたいという人が、必ず見つかる

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天才起業家ことイーロン ・マスクの母で、モデルとして活躍するメイ・マスクさんのインタビュー(今年7月公開)に出てくる言葉です。

クラスメートから孤立したこともあった息子のイーロンについて、次のように語っています。

正直なところ、親にできることはほとんどありません。

息子に必要なのは、話が通じ合う「仲間」だったからです。イーロンが大学に上がってから一度訪ねていったとき、息子の友人たちとランチを共にする機会があったのですが、なんだかよくわからない物理の公式のジョークを言い合いながらバカ笑いをしている息子たちを見て、本当に嬉しくなりました。

「やっと仲間に会えたんだ」と。

「人と違う」生き方をしていると、受け入れてもらえないことも多々あります。だけど、そういう相手とは交わらなければいいだけ。

場所を変えれば、あなたを仲間として受け入れてくれる人や、あなたが「人と違う」からこそ一緒にいたいという人が、必ず見つかるはずです。
──『実母メイが語る「イーロン・マスクの育て方」』より

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❻答えが1つだなんてつまらない

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数学者であり、ジャズピアニストの顔も持つ、中島さち子さんのインタビュー(2018年公開)に出てくる言葉です。中島さんは、今後の教育に求められる要素のひとつとして、「多様であること」を挙げており、次のように述べています。

私は、学習デザインで大事なのは”Low floor, High ceiling, Wide wall”(低い床、高い天井、広い壁)だと思っています。

低い床というのは、誰もが気軽に入りやすいことを、高い天井は、簡単に到達できないレベルの難しい目標があることを指しますが、もう一つすごく重要なのが広い壁です。

壁中に子供たちの作品がうゎっと並ぶような、無数に答えがある、多様性があると感じられるものであるべきという意味です。

答えが1つだなんてつまらない。

自分なりの作品、自分なりの研究ができるからこそ、想像力への自信や喜び、達成感につながるのです。

確かに、教育は仕組み化するとマネタイズもしやすいし、親にも「あぁ、こんなことができるようになったのか」と、わかりやすいし、失敗も少ない。

しかし、一見遊んでいるようにしか見えないことにこそ、試行錯誤しながら自分なりの解を見つけて新しいものを生み出していくという学びが隠されています。

大人はそこに、ほんの少しだけ補助線を引く。あるいは、補助線がどこかにきっとあるよと示唆するだけでいい。

遊びの奥の奥には、深い学術や技術や社会課題が眠っていたりするから。そこに主体的で体系的な学びの意義があると思うのです。
──『世界のエリートが数学とアートを極める理由』より

❼多様性があることによって、人類が生き残ってきた

アートボード 17@2x

個人向けゲノム解析サービスを展開する「ジーンクエスト」代表取締役の高橋祥子さんインタビュー(2018年公開)に出てくる言葉です。

2番目に紹介した篠原さんの話に通じるもので、人類視点で見た時に「多様性」が重要なのは明らかだと述べています。

「多様性が重要だ」と今、みんなが言っていますけど、なぜ重要なのかについては、あんまり理解している人がいないのではないでしょうか。

それは、種が生き残ってきた歴史を見ると、明らかに必要ですよ、とか。

最近、WeWorkの登場とかで、コミュニティ作りの重要性が知られてきていますが、そういうコミュニティの発展に重要なのが、「新陳代謝」だとも言われています。

それも、生物学的に見ると、確かにそうなんです。

生命の維持のためには、外界の変化に適応していく必要がありますからね。たとえば、組織の作り方、コミュニティの作り方を担う会社の人事の人たちは、絶対に生物学を学んだほうがいい(笑)。
──『なぜ、生き残るために「多様性」が必要なのか』より

以上、今回は7つの視点で「多様性」について見ていきました。

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文・イラスト:櫻田潤(Twitter

〈著者プロフィール〉

2010年、インフォグラフィックの実践と普及を目的とする個人プロジェクト「ビジュアルシンキング」をスタート。2014年にインフォグラフィック・エディターとして、NewsPicksに参画。スマホに最適化したインフォグラフィック記事のフォーマットを開発。主にテクノロジー関連のインフォグラフィック記事の執筆・デザインを多数担当。2019年より、チーフ・ソーシャル・エディター。NewsPicks NewSchool第2期で「ビジュアルコンテンツ」プロジェクトのリーダー。