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スペックシートのある良いフィラメントを探す PLA/ABS/PETG

樹脂はナマモノといいますが、品質のいいフィラメントが品質のいい3Dプリントの条件の一つです。
プリンタ本体の性能・整備状況、3Dデータとスライス設定、そして樹脂材料の3本柱が品質を決めます。
発動機の3要素(よい混合気、よい圧縮、よい点火)みたいですね。
3Dプリンタでいえば、よいフィラメント、良いマシン機、良いノズル軌跡と言い換えてもいいでしょうか。
3つが揃わなくして、よい3Dプリントはあり得ません。

今回は「スペックシートからフィラメントを探す」がテーマです。
というわけでスペックシートが公開されているフィラメントを探してみようと思います。
スペックシートを公開するということは正直さの証です。
まずスペックシートがあること自体が重要な指標です。基本的に記載したことを守れないようなメーカーはそもそもスペックシートを公開しません

3Dプリンターメイカーが直接指揮をしてフィラメントに加工している場合や、フィラメントを本気で作ってるメーカーの場合はスペックシートがありますが、玉石混交の低価格フィラメントメーカーはスペックシートが見つからないものもありますね。

AmazonPrimeで購入可能な有名どころ中心に調べてみたいと思います。

Prusament by Prusa Reserch

個人的ないちおしのPrusamentです。
彼らはオープン系の3Dプリンターのマスターピースの一つと言えるPrusa I3シリーズを作っていますが、自分たちでフィラメントも製造しています。
自社加工を生かして1mごとのフィラメント直系のトレーサビリティーを提供しており、フィラメントリールに貼ってあるQRコードで確認可能です。
±0.02mmの直径公差を本当に守っているという証明があります。
材料の強度のみならず印刷後のXY方向とZ方向の参考強度まで記載している念の入れようです。
PLA以外にもPETGもあります。
値段はPLAが1kg3990円、PETGは4490円。品質に対して価格は破格です。
高めの温度でサッと溶けるようで、鋭角のコーナーがあまり膨らまずに印刷される印象です。
積層が乱れずらく、きれいに印刷されます。フレーク入りの物は湿気を吸いづらく、積層跡もフレークが多少ごまかしてくれます。
国内の取り扱いでは色が少ないのがすこし残念です。(本家から輸入すればもう少し色がある)

Verbatim by三菱ケミカルメディア

三菱ケミカルメディアが製造しているフィラメントです。安心の日本製。
PLAとABSと軟質のプリマロイという材料もあります。色もパントンカラーでコントロールされているようなので、安定した色が期待できます。
PETGなどもあるはずなんですが、日本だと取り扱いがないみたい。
強度などのスペックについて探すのは苦労しましたが、UKのホームページにありました。
2020/06/27:終売の情報あり

Pxmalion

スペック見当たらず。
3Dプリンターも販売しているので専業メーカーではないのかな?

eSUN

KickstarterのFDMTestでの指定フィラメントだったりするeSUNです。
2002年に深センで創業した3Dプリントマテリアルメーカーだそうです。
価格も安く入手性抜群、公式ページ(https://www.esun3d.net/)でスペックシートもちゃんと見つかりました。
ラインナップも豊富ですね。
個人的にはめちゃくちゃきれいに印刷する必要が無いならこれを選ぶという感じです。値段もPLAで1kg3000円以下ですしね。
個人的にリフィルが買えるのがアツい。リフィルはさらに安いです。

Sinsmart

探してみましたが見当たらず、電子工作用品をいろいろ販売しているしフィラメント専業ではないのでOEMかもしれませんね。
リールにデザインは好きです。

Sunlu

珠海市にある3Dプリント材料メーカーだそうです。
使用してるPLAはNatureWorksのIngeo™ biopolymerをベースにしているようです。MSDS(材料の安全性についての資料)がありますが、ちょっと足りない感じです。販売ページに書いてあるスペックはそれなりに充実しています。

Polymaker

高性能なフィラメントで名のあるPolymakerですが、SDSやTDSもしっかりとしており、性能も申し分ないという感じです。販売ページのスペックも正直に書かれている印象があります。
値段はPolylite PLAで4500円程度しますが、性能も高く価格だけの価値は十分にあります。
印刷のしやすいPolyliteシリーズや、性能重視のPolyMaxシリーズなどラインナップもしっかりしています。
しかし日本での売価だけ高いんだよな…..日本の代理店なんか舐められてるのか?

BASF Ultrafuse

ドイツに本社を置く化学メーカーのBASF(バスフ)です。
Ultrafuseというブランド名でFFF用フィラメントを販売しています。
高めですが有名メーカー品ということで品質も安定していると思いますので、業務用に使うのは良いかと思います。
あと射出成型時のランナーなどから再生されたrPETなどリサイクルフィラメントもありますので、sDGSなどの要求がある場合などにも使えそうです。
しかしrPETの日本価格が異常に高いぞ….?

買うときはAmazonにはないのでUltrafuseの公式通販からどうぞ。

RepRapper

2020年12月現在では1kgのPLAが2000円台前半で購入可能でかなり安いです。ホームページの方にはテクニカルデータシートがありませんが、最近作られたツイッターアカウントにメッセージを送ってみると、データシートを送ってくれました。

Amazonの賞品写真を見るとPLAはNatureWorksのベース材を使っているようです。データシート上もPLA,ABS,PETG共に悪くない性能になっています。

Fiberlogy

ポーランドのフィラメントマニファクチャです。
リールの無いリフィルフィラメントも取り扱っており、マスタースプール(自分で印刷するスプール)が使用可能です。

国内代理店としてAzuya Studioさんが取り扱っています。


スペックシートをながめて

フィラメントを横並びに公平に比較するというのは難しいものですが、スペックシートと価格表を眺めてみる違いがある程度見えてきます。

ざっくりとした感想としては
・購入しやすいもので低価格帯ならeSUN
・すこし値段は上がるけどばっちりキメるならPrusament
・性能が欲しいならPolymaker

という感じです。

印刷品質に定評のある3Dプリンタメーカーの純正フィラメントが低価格でも案外良い、というのが使っている実感としてありますが、それでもスペックシートはほとんど出てきません。
フィラメント専業メーカーや高価格帯の3Dプリンタメーカーの純正フィラメントはきちんとMSDSやスペックシートが出ていますのでそれを見ながら選ぶとよさそうです。
もちろんとりあえずの印刷には2000円から3000円程度のフィラメントを使うというのもアリだと思いますが、やっぱり一発ビシッと印刷できるフィラメントを持っておきましょう。

スペック横並び比較表(PLA)

さて、お楽しみ比較表です。
特に注目すべきと思ったところを黄色に塗ってあります。

MFRはMelt Flow Ratioでどれぐらい溶けた時に流動しやすいかという目安です。(測定時のばらつきがある程度あるという話もある)
MFRが高いフィラメントは印刷がきれいに出る傾向があると思います。
衝撃試験値が出ているメーカーは一般のPLAに比べるとそれなりに耐衝撃性が高めのようです、PLAでの破損は衝撃による場合が大きいと思うので、伸び率と耐衝撃値は大事な項目です。

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