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週刊ニュースdeディベート(β) 第8号 日本はウクライナ難民をどう受け入れるべきか?でディベート!

// 週刊ニュースdeディベート(ベータ版)
// 2021年3月13日 β版第8号
// ニュースつまみ食い
// 今週のお題 日本はウクライナ難民をどう受け入れるべきか?でディベート!

こんにちは。ディベート賛否さんです。今週も様々なニュースがありましたね。

●ウクライナ侵攻:民間施設への攻撃や原発への攻撃が相次ぐ。トルコが仲介した停戦会議も物別れで終わる。
ロシアの傍若無人な侵攻が続く一方、停戦協議も回数を重ねています。ロシアは自身の停戦条件を崩しませんが、経済制裁等の効果を測る意味でもこのような協議を続ける必要はあるでしょう。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-03-10/R8IFRPDWX2PT01

●各国企業のロシア撤退相次ぐ:シェルがサハリン2プロジェクトから撤退
各国企業の出資による石油・天然ガス開発の大型プロジェクトであるサハリン2。日本からも三井物産や三菱商事が出社しており、日本で輸入される液化天然ガスの約1割をしめています。日本の経済やエネルギー安全保障に直接的に影響する事案となりそうです。

●SMBC日興証券幹部らによる相場操縦事件
株式市場の透明性や公平性を揺るがす事件が起きました。各株式の銘柄が競争状態にあるのはもちろんですが、市場自体も「投資先」として常に吟味されているわけであり、日本市場の魅力を削ぐ事案と言えるでしょう。これが「氷山の一角」でないことを祈るばかりです。

●3.11から11年
避難住民の帰還が始まっている/予定されている自治体もある中、避難民の孤立や自治体の存続、復興など課題は山積みです。何かと国際情勢が荒れている昨今ですが、継続して取り組む必要があります。

それでは、今週もよろしくお願いいたします。

1.今週のディベーダブルなお題:日本はウクライナ難民をどう受け入れるべきか?
着地点の見えないロシアによるウクライナ侵攻。海外へ逃れた難民の数が250万人を突破し、近年まれにみる人道危機が発生しています。避難民の安全確保がウクライナ・ロシアの間で合意されたとする「人道回廊」も約束が反故にされ機能していないケースが多く、ウクライナの一般市民を巻き込んだ悲惨な状況は深刻さを増しています。日本も岸田首相がウクライナ難民の受け入れを表明。今日は難民について、一緒に考えていきましょう。

〜難民条約による国際的な責任分担〜
戦争が起こると、付随して難民が生まれるのは有史以来続いてきたことですが、戦後の「難民条約」によって国際的な枠組みが定められ、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:The Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)も設立され国際的な協力が進められてきました。

 難民は戦地で発生し、陸路や海路で避難する場合が多いため、難民の一次受入先としては主に紛争発生地域に隣接した国・地域となります。しかし、大量に発生する難民に対し1つの国が十分な支援を行うことは現実的ではなく、国際的な「責任分担」が掲げられ、第三国による国際的な難民受入が重要なテーマとして定められています。

 日本もその一端を担う役割が期待されてきましたが、難民の受け入れについてはあまり積極的ではない状況が続いてきました。今回のウクライナ難民受入については、異例の速さで決定が行われたと言っていいでしょう。

〜日本の難民認定〜
日本において、申請に対する難民認定率は0.5%と、世界各国を見てもかなり低い水準となっています。難民であることを立証する基準が高く「客観的な事実が認められない」として多くの難民申請が却下されている現状があります。申請には、難民であることを証明する書類や身分を証明する書類の提出が求められますが、紛争地域から逃れる過程で、自身について証明する書類を持っていると標的にされることも少なくないため、わざと書類を手放す難民も多くいます。加えて、難民が身体の自由を奪われている状態にあったと認定されても、その程度を軽く評価し難民認定を行わない事例も多発しています。また、申請が却下された場合にも理由が開示されないことも、問題点として挙げられています。「偽装難民」が多いという政府側の主張も見受けられますが、審査が厳しすぎるために必ずしもそうとは言えないのが現状でしょう。

〜日本の便益とウクライナ難民の目線〜
ウクライナ難民を受け入れることによって日本にとっても国際社会における便益があるでしょう。あくまで人道的な論点が先に立つ「難民問題」ではありますが、日本としての損得を無視することはできません。国際社会における地位の向上(あるいは確保)が見込まれます。先のEU首脳会議では2027年を目処にエネルギーのロシア依存脱却を目指すことで合意しました。「原発はクリーンか?」といった議論は既に起こっていましたが、日本のエネルギー政策やエネルギー関連企業への影響を無視することはできません。またロシアを金融的、貿易的に孤立させる経済制裁が進む中「アフターロシア」の国際経済のあり方はこれまでとは違ったものになるでしょう。今回の事態において日本が役割を果たし、国際社会的なプレゼンスを向上させるか否かは、エネルギーや経済の枠組みにおいて日本が「蚊帳の外」になるかを分けるものとなるでしょう。日本は国連安保理の常任理事国入りをかねてより求めてきましたが、依然実現していません。安保理のあり方自体が省みられ始めている昨今、日本は国際社会の体制にどの程度「食い込む」ことができるのでしょうか。

日本が難民受け入れを進めることに、一定のデメリットがあることも無視してはなりません(往々に人道的な問題については不利益について語ることすら憚られる風潮がありますが、いついかなる時でもメリット/デメリットを議論し、比較した上で決定する姿勢は忘れてはなりません。思考停止し正義の仮面を被り、なんでもすぐに「炎上」させる風潮は、ディベート思考とは対局にあるものです。)国際社会レベルではロシアからの敵国、あるいは非友好国としての認識が強まること、あるいはそのような口実を与えてしまうことが挙げられるでしょう。これは安全保障上のリスクの高まり、あるいは領土問題の後退を意味するかもしれません。またウクライナの人々にとって「他のEU諸国ではなく日本」で避難生活を送ることがよいことなのか、語られることはほぼありません。ロシア戦争の終結の見通しが立たない中、文化的、言語的に遠い日本での生活を続けることについて、考えてみる必要があるでしょう。本件で最も影響を受ける立場である「ウクライナの人々」の目線を忘れてはなりません。

〜まとめ〜
ウクライナ危機による生活への影響はまだ大きくはなく「対岸の火事」といった感覚の方が多いのではないでしょうか。しかし、ロシア産商品の輸入停止などによる影響に加え、難民の方があなたの街にやってくる可能性もあり、決して私たちに関係のない出来事ではありません。先行きが不透明ではあるものの、情勢を引き続き見守っていきましょう。

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