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言動がメチャクチャになってきた赤シャツ

 このころ、ある赤シャツ幹部から自らの団体、すなわち「反独裁民主戦線(UDD)」の成り立ちについての話を聞いた。彼女によると、2006年のクーデターで発足した軍事政権が改正した憲法、俗にいう「2007年憲法」を否定し、民主主義に基づいた憲法を取り戻すために立ち上がった有志の集まりがUDD。その集団に、タクシン支持派が同調したのだという。政府打倒を目指す1つの集団に見えて、実は目的を異にする。彼女の説明は、自らの団体が一枚岩でないことを訴えていた。

 赤シャツが一枚岩でないことは、取材を続けていれば分かることだった。3月14日に1万人以上を集めた集会も、タクシンの資産没収の判決に対する抗議だったのが、下院の即時解散・総選挙の要求にすり替わっていた。それを聞いたタクシン派政党のプアタイ党は、
「選挙の準備なんてしていない」
と怒り出す始末。プアタイ党に怒られた赤シャツリーダーのチャトゥポン、自分自身プアタイ党選出の議員であるくせに集会での演説で、
「プアタイ党議員は全員辞職しろ」
と奇声を上げる。それを聞いたタクシン、
「それはまずい」
と国際電話で止めたらしい。赤シャツとプアタイ党はいずれもタクシンをボスとしながら、お互いのやり取りはメチャクチャだったのだ。また、プアタイ党が解散総選挙のための資金調達のメドを立てたのは3月下旬。赤シャツリーダーはそのタイミングで今度は、敵であるアピシット政権との会談を実現させ、解散総選挙を要求したという。やることがあからさまなのだ。チャトゥポンはその後も過激な言動を繰り返し、赤シャツの仲間たちを暴力に駆り立てて死なせていった。

反政府集会といっても遊んでいるだけ。爆弾探知機のオモチャを売るオヤジ

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