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ただのドタバタ騒ぎで何人も死んでいく

 赤シャツと陸軍の武力衝突が激しかった、サートーン通りから少し東に行ったボンカイ地区。外国人旅行者にとってはマレーシアホテルが建つ界隈として知られている。赤シャツと陸軍は、有刺鉄線が張られた緩衝地帯を挟み、200メートルほどの距離で向かい合っていた。

 5月14日の夜。マレーシアホテルに入る路地、ソーイ・ガームデュップリーとラマ4世通りとの三差路に赤シャツの若者が集結。200メートル先の陸軍兵士に殴り込みを繰り返している。

 赤シャツといっても赤い服ではない単なる普段着なのだが、これがまたカッコ悪い。半袖半ズボン、靴下なしのスニーカーもしくはサンダルという出で立ちで、実銃を持った軍を相手に吠えまくっている。パチンコ(スリングショット)、爆竹、かんしゃく玉、花火、火炎ビンといった子供騙しの武器しか持たず、いわゆる丸腰。ただ、子供騙しといっても音だけは大きいので、大人でも「発砲か?」と騙されることがしばしばだった。

 彼らの作戦。10~20人単位でそろそろと兵士に近づき、持ち合わせの武器を投げつけて驚かし、すぐさま引き返してくるというもの。推して知るべし、銃撃を受けて死傷者を出すだけなのだが、凝りもせずに繰り返すところが勇ましいというか愚かというか。現場に居合わせた、例の日本で最多の発行部数を誇る新聞のバンコク支局のカメラマンも、
「なんで飛び出していくんでしょうね。行かなければ死なないのに」
と呆れていた。

半袖シャツに花柄の半ズボン、手にはパチンコや火炎ビン、靴は新しそうだが靴下なし。

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