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Chapter 6 取材最終日にようやく事件

 スンガイコーロックのオープンバーの爆破事件からちょうど1年、日付も同じ3月27日、やはりスンガイコーロックにいた。3日前の夜に南部国境県に下ってきて、今日はバンコクに戻る日。前夜まで取材になるような事件はなく、ずっとブラブラ。結構、焦っている。スンガイコーロックは2004年からの数年間、年に1~2回の割合でオープンバーやホテルなど不特定多数の被害者を出すテロが起きていたが、それ以降は2~3年に一度というペースに変わり、取材で追うのが難しくなっていった。起きるときは大規模なので、いろいろ予想を立ててちょうど当たるよう現地に赴くのだが、取材の直前直後など数日違いのニアミスで起きると、競輪で擦ったごとく落ち込む。


 27日の遅い朝、いつもの旦那の食堂で朝食。マレー風の辛くないチキンカレーをダラダラ食べ、熱くて甘いミルクティーをチビチビ飲む。
「お前、取材できていないだろ」。
と旦那。聞かなくても分かるでしょう。前の晩は旦那と一緒にオープンバーで酒盛りだったでしょう。ムスリムはアルコールを全く飲まない、ということはない。旦那もしかり。
「ビールは酒じゃないんだ」。
という理屈。ビールなら付き合える。「お前1人だと危ないから、オレが一緒に行った方がいいだろ」と人をダシに使い、オープンバーやカラオケ屋をハシゴしたかったのは旦那の方だ。飲めるとはいっても慣れてないから、すぐに酔う。でも悪酔いはせず常にニコニコ顔だ。現在は、マレー系住民はその手の店に近づかないよう、警察から通達されているという。歓楽街を狙ったテロ容疑者に間違われやすいというのが理由だ。

ナラーティワート県ナラーティワート市。屋台のアイスを注文する陸軍兵士

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