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ATM破壊、商品強奪、やっていることは強盗

 陸軍の強制排除は未だ始まらず、誰もがみな「今日かも知れない」と思いつつ、赤シャツも撤退することなかった。デモは惰性で続いているだけだった。

 2010年5月17日、赤シャツがメインの舞台を設置するラーチャプラソン交差点の北側、ディンデーン地区に行ってみる。ラーチャプラソン界隈からラーチャプラーロップ通りへ、同通りに展開した陸軍を後ろから挟み込むように赤シャツがバリケードを設置。「前線」は二重三重になっていった。赤シャツはその先、前年に陸軍と撃ち合ったディンデーン通りまで占拠区域を広げていた。

 軍を挟み撃ちといっても、包囲するほどの行動力はない。赤シャツは古タイヤや土のうを積んでバリケードを造り、その古タイヤに火を付ける程度。反政府デモという大義名分など忘れ去り、銀行のATMを壊して金を強奪したり、店のガラスを破って商品を盗んだりと、ただの強盗に成り下がる輩が増えていった。

 ディンデーン地区ではピザ屋の店舗が壊され、道端にはサラミが散らばっていた。さすがにサラミは拾って食べなかったが、ナプキンを拝借して古タイヤの煙で真っ黒になった顔を拭いた。道に転がるガラクタを回収するばあさんがいて、
「危なくて嫌になっちゃうわね」
とつぶやく。写真を撮ったらお礼された。

破壊されたATM

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