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仲間の実弾を食らって死んだ若者

 2013年の暮れ、12月26日。朝の通勤ラッシュを避けて朝6時前に出勤。前の晩は何をしていたのか、とにかくほとんど寝ていなくて事務所で二度寝していたら、本来の出勤時間の9時に起こされる。タイ人記者だった。
「また騒いでいるわよ。行かないの?」
あんたが行かないと私が行く羽目になる。そんな不安そうな目で見ていた。ため息をつきながら場所を聞くと、都内ディンデーン通りの労働省前。2009年にタクシン支持の赤シャツがタンクローリーに火を付けるだ何だと騒いでいた通りで、今回は反タクシンの(正確ではないが分かりやすく)黄色が暴徒と化して警官隊とやり合っているらしい。

 予想していない騒ぎだったが、カメラバッグは持ってきていた。事務所に置きっぱなしのPRESSと書かれたヘルメットを持ち出し、
「ちょっと連れてってくれ」
とバイクメッセンジャーに声をかけ、彼のバイクの後ろに乗って現場に向かう。事務所からわずか10分、騒いでいる労働省の50メートル手前で降り、ヘルメットが必要か否かしばらく考え、やっぱり要らないということでメッセンジャーに持って帰ってもらった。

こめかみを撃たれた若者が残していった、催涙ガス避けのゴーグル

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