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排除命令を出せない警察、赤シャツに笑顔で見送られて撤退

 ラーチャプラソン交差点を占拠する赤シャツに対し、警官隊は何をするでもなく、ただそこにいるだけだった。赤シャツと軍が衝突しているパーンファー橋が気になる。事態の進展がなければさっさとパーンファー橋に移動したのだが、こちらで衝突が起きるとすれば、バンコクきってのショッピング街での暴動ということでニュースバリューは高い。ショッピング街のみならず、ビジネス街としても知られた一帯であり、封鎖によって通勤できない在バンコク日本人も大勢いる。

 そんな現場をうろうろしていると、タイ警察に所属する日本人の警察大佐の姿を発見。野次馬の振りして写真など撮っているが、もともと日本で36年刑事を務めた猛者で、体格も雰囲気も刑事そのもの。野次馬でないことが一目でバレてしまっている。大佐いわく、
「一周りしてきたが、ここにいる警官隊の指揮官は少佐や中佐。彼らでは死者を伴うかも知れない排除命令を出せないだろう。ここでは何もないぞ」。
そもそも、パチャラワートという警察長官が2009年9月に解任されて以来、後任が不在。警察という組織自体が排除命令を出せないのだという。大佐の言葉どおり、さんざん粘った挙句に、警官隊は撤退。赤シャツに笑顔で見送られながら帰ってしまった。

また外したのである。もたもたしていられない。パーンファー橋方面に行ったカメラマン仲間に電話をして状況を聞くと、かなりの衝突があったらしい。日本語ラジオ局で仕事をしているコラボ取材の相手は、立て続けに読みを外して不貞腐って現場に来ないが、情報は定期的に送ってきてくれた。パーンファー橋の向こう、民主記念塔近くにあるコークウアという交差点で銃撃戦があったと教えてくれた。ラーチャプラソン交差点で一緒になった物見遊山のカメラマンを誘う。
「怖いから、やだよ」
と言い捨てて帰っていった。

最初から強制排除のつもりがなかったらしい警官隊

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