家の窓から

　巨石遺跡のストーンヘンジに行くために寄ったソールズベリー。少々退屈ながらも、英国の田舎らしい景色が広がるきれいな町。公園のベンチに座って何をするでもなさそうな地元の人が、暇つぶしに声を掛けてくる。日本ではよく、英国人の個人主義が取り沙汰されるが、ロンドンはともかく地方に来ればどの国の人も同じように、異国の人間が物珍しいのか人懐っこく接してくる。

　昔ながらの民家が並ぶ細い通りを歩いて宿泊先に戻っていると、1軒の民家の窓に女の子が立っていて、こちらにずっと「べーっ」を続けている。立ち止まっても止める気配がなかったが、カメラを向けたらちょっと怯んだ。シャッターを切る前はもっと大胆なベーっだった。

　写真を撮り終えて、試しにこちらもべーっを仕返したら、急に泣き顔になってカーテンの裏に消えてしまった。怒った親が出てきそうな気がして、急いでその家から離れた。

写真は全て当時の紙焼きをスキャンしたもの。