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写真の話しかしない陶工

2023年1月8日

 バンコク北隣ノンタブリ県内、チャオプラヤー川の中州であるクレット島に、在タイ30年で初めて行った。20年以上前に舟で島の回りをうろついたことはあったものの上陸しておらず、その後に改めて行こうとしたものの舟を乗り間違えて違う場所に着いてしまい、それっきりだった。

 タイの先住民族であるモン族が移り住んだ島、陶器作りが盛んな島、タイ菓子でも有名な島、車が走らない島などなど、として知られ、バンコク都民やタイをちょっと知っている外国人の週末旅行で賑わう。コロナ禍からの景気回復で最近ようやく人が戻ってきている雰囲気だった。

 陶器で知られていて、確かにそれを売る店は多いのだが、そこら中で窯元が見られるという訳でもない。30分ほど歩いて、陶器がたくさん並んでいて陶工の姿が見られる店をようやく見つけて立ち止まったら、こちらが写真を撮る人間だと察したのか、
「2年前に自分で写真集を作った。おれが陶器を作っている写真だ」
と、いきなりその写真集をイスのわきから出してきた。店内の一部に陽の光が差している雰囲気ある写真で、朝方のカットなのかと尋ねたら、
「撮った場所はこの店じゃない。窯元が別にあるんだ」
とのことだった。
「おれも20年以上前はカメラマンだった。スタジオで撮っていた」
と話を続ける。フイルム時代の頃でデジタルが普及し始めたころには、カメラマンを辞めてしまったらしい。陶工である台湾人の師匠と出会い、それからずっと陶器を作っている。話すとき、上の前歯が4本ほど抜けているのが見える。何か買っていけともいわない。

 一つ小さめの陶器を値切って買ったのだが、売れるとは想定していなかったらしい。それを包む新聞紙やビニール袋を探すのに一苦労、5分ほどかかっていた。ひたすら作っているものの、あまり売れていないのだと思う。

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