「無駄な抵抗」、ただ後退するのみの赤シャツ
陸軍部隊がシーロム交差点のバリケードを破壊、前進を始めた。赤シャツはすでにラーチャダムリ通りを数百メートル後退、サーラシン通りとの三差路に100人程度が潜んでいるのみ。スリングショット、いわゆるパチンコによる石ころ、爆竹、かんしゃく玉を飛ばすだけだったが、それさえも数百メートル先の兵士たちのはるか手前に落ちていく。ロケット花火を飛ばす道具も持ち合わせていたが、それも兵士たちに届く頃には、単なる花火の燃えかすでしかない。
オフィスに置きっぱなしで、ヘルメットがない。寝坊してオフィスに寄る時間がなかったので、何も被っていない。ルムピニー公園前のテントに寝泊まりしていた初老のオヤジからもらったヘルメット。テントはあっけなく、陸軍に蹴散らされた。「最後まで戦うさ」と言っていたのに、赤シャツ最後の日の今日、オヤジの姿はない。直前でずらかったのだろう、正しい行動だ。実銃を持った兵士に敵うわけがない。最後までおちょくってギリギリまで引き寄せ、最後の最後で尻尾巻いて逃げれば良いのだ。
仕方なく、その辺に転がっている工事用の黄色いヘルメットを拾う。サイズを調整するプラスチックが外れていて、直そうにもなかなか直らない。隣にいた赤シャツのじいさん、見るに見かねておもむろに取り上げ、器用な手さばきで直してくれ、30秒で立派に被れるようになった。ヘルメットは黄色、シャツは赤、もう目立ちまくり。
かんしゃく玉を飛ばすしか対抗手段がない赤シャツ
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