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サカナクション山口一郎 「新しい感動を発明したい」コロナ時代の “音楽のカタチ”

新型コロナの影響で
コンサートが相次いで中止となるなど、
苦境の音楽業界。
いま、新たな挑戦が始まっています。
人気バンド「サカナクション」が模索した、
コロナ時代の“新しい音楽のカタチ”とは?
(8月18日(火)放送より)


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先週末、初のオンラインライブを行った
男女5人組バンド「サカナクション」

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バンドのフロントマン・山口一郎さんだ。

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山口さんは、
コロナ時代の新たな音楽のカタチ
を模索していた。

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山口さん:
「いつも生でライブを見に行くものとは違う感動があるっていうことを、ちゃんと届けていかなきゃいけない。そういう責任感みたいなものは勝手に持ってやっています。」


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音楽業界にも大きな打撃を与えた新型コロナ。
「サカナクション」も、その例外ではない。

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山口さん:
「ミュージシャンの主な仕事としては、ライブを行うこととCDをつくることの2つなんですね。もちろんライブをするっていうことが1つなくなってしまった部分で大きく収入は減ってしまいますし、ミュージシャンとしては3分の1ぐらい落ち込んだのが現状ですね。」


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最新のテクノロジーを駆使し、
ライブでも
先進的な表現を模索してきたサカナクション。
しかし、全国ツアーはコロナの影響を受け、
2月下旬を最後にすべて中止となった。


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自粛生活が続くなか、
山口さんが積極的に取り組み続けてきたのが
「SNSでの生配信」だ。
人と簡単に会えなくなったコロナの時代、
SNSは人とつながるための重要なツールだが、
一方で、“人を傷つける言葉”
があふれていることに
山口さんは心をいためていた。


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山口さん:
「SNSで誹謗中傷の問題もありましたけど、みんなそれはよくないとか、そういうことしてはいけないと分かっていながらも、どうしても知らぬ間にそういう状況になっているっていうこの感覚を、僕はかつて音楽にしたことがあって」


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山口さんは9年前、
今の状況を彷彿とさせるような楽曲
生み出していた。
『エンドレス』だ。こんな歌詞がある。

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山口さん:
「今聴き直すと、SNSの誹謗中傷であったりとか、自分たちがどう向き合っていくべきなのか、ということにも当てはまっていたような気がして。コロナによって新しくSNSを使い始めた人たちが増えてきて、SNS上でのリテラシーってものがまた問題化されているなっていうのは、自分の中であの曲を歌にした意味があったのかなっていう気がしていました。」



もう1つ、山口さんが
コロナ禍で目の当たりにしてきたのが
“音楽業界への風当たりの強さ”だ。
3月には、ライブハウスでのクラスターが
次々に判明。厳しい声があがった。

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この状況に、山口さんは苛立ちを覚え
SNSで音楽業界がおかれた窮状
訴えかけたことがあった。


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山口さん:
「(音楽業界が)やばいことが申し訳ないけど見えてこないっていうけど、あなたがやってる仕事だったらわかるでしょ。僕らミュージシャンだけいても、コンサートできないわけですよね。コンサートで生活している会社がいくつもあるわけですよ。それは10年も20年も一緒にやってきた仲間ですよ。そういうひとたちが本当に生活できなくなると。つぶれてしまうと。」
(3月23日未明 インスタグラムライブより)


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サカナクションにとって、
半年ぶりのライブパフォーマンスの場となる
今回のオンラインライブには、
仕事の機会を失っていた
「チーム」の仲間も集結。

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ライブには、
“仲間を守りたい”との思いも込められている。

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山口さん:
「スタッフの方のなかには、アルバイトをしているっていう人も結構いましたね。音楽の仕事だけじゃもう生活できなくなって派遣で働いている方とか。家族を守るのと同じ感覚で、一緒に切磋琢磨してきた分この状況を乗り越えたいなって思っていますけどね」




今回、打ち出したのが、
「ライブミュージックビデオ」という
新たな音楽のカタチだ。

山口さん:
「“新しい感動を発明したい”っていうのがテーマなので、そこにたどりつけるように努力はしたいなと。」

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ライブをつくってきたチームと
ミュージックビデオの制作チームが初めて融合
1億円を超える制作費が投じられた。

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本番を前に、リハ―サルの現場には
緊張感が満ちる。


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いよいよ迎えた本番

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2日間行われた
オンラインライブを視聴したひとは
当初の予想をはるかに超え6万人にのぼった。

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全20曲から構成される約2時間のステージ。
「ライブミュージックビデオ」という言葉通り、
計算しつくされた
ミュージックビデオのような世界が
リアルタイムで繰り広げられていく。

こだわったのは、
あくまで生で行い
同じ時間を共有すること
だ。

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ライブの途中、山口さんは
カメラの向こう側にこう呼びかける。

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「一緒に楽しみましょう。ね?踊ろう」

ただ、この裏で山口さんは
かつてない“不安”も感じていた。

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山口さん:
「オンラインライブになるとやっぱり反応がわからないし、画面上でどういう風に見えているのかってまったく僕ら分からないので、「どうだった?みんなどうだった?」という気持ちが一番強いですね。」

ライブ終了直後、
山口さんはSNSで
見ていた人たちに問いかけた。
「どうでした??楽しめましたか??」

すると・・・

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書き込みは一時、2万3000件を超えた。

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さらにSNS上には、
それぞれの場所で思い思いに
ライブを楽しんだ人たち
の投稿があふれていた。


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初のオンラインライブを終え、
次に見据えているものはなんだろうか。
山口さんにたずねた。

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山口さん:
「今まで通り通常のライブができるようになるのって、来年どころかきっと2年後になってしまうんじゃないかって思っています。オンラインライブの可能性をもっと突き詰めていくっていうところも考えながらも、新しい発明を、音楽の新しいコンテンツを生み出していきたいと思いますし。でもこれは自分ひとりじゃ無理なんですよ。やっぱり仲間と一緒につくっていくものなので、今はまずその仲間を守る事、それを一生懸命やっていかなきゃいけないなっていうところも、責務として感じていますね。」