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ジェンダー平等達成まであと“286年” 担当者として「誠実さ」と向き合う|#02 繋いだ手と手のあいだから、

繋いだ手と手のあいだから、

どれだけ本を読んで勉強しても、ひとりひとりの想像力には限りがある。

あたりまえのことだけど、
あの人の抱えるもやもやを全部理解することなんてできやしない。

それでもやっぱり誰かの手を取ることで見える景色があるし、
そこからはじまるものがあるとわたしたちは信じています。
 
1人でも多くの人が、今日もがんばるぞと思えるように。

”ダイバーシティ”に向かって疾走する世界中の同志たちと、共にまだ見ぬ景色を見るために。

施策や新制度設立・改修までの道のり、はたまた社内での小さな出来事などなど。等身大のわたしたちを少しずつですが書き綴っていきます。

#02はワイン エリカのエッセイです。

温かいコーヒー片手にでも、
わたしたちの奮闘を見守っていただけると嬉しいです☕️

白を基調としたベッドの上にコーヒや本が置かれている写真

ジェンダー平等達成まであと”286年”  担当者として「誠実さ」と向き合う 


ー存分に働くことを阻害する鎖

 3月8日は「国際女性デー(International Women's Day)」。

1904年、アメリカで女性たちが参政権を求めるデモを行ったことに由来し、女性たちの経済的、文化的、社会的、政治的功績を祝い、世界各国でさまざまなイベントが開催されてきました。

日本での「国際女性デー」は1923年の初開催から今年で100年目を迎えました。

3月は、国連の定める女性史月間でもあります。

これまで多くの方が女性の権利のために活動し、功績を残されたからこそ、現代に生きるわたしたちの今の生活があることを再認識するタイミングです。

では、日本の中で働く女性の権利はどのように変化してきたのでしょうか。

ー独りでひたすら耐えた日々

少しわたしの話をさせてください。

これまで複数の企業で働いてきたわたしですが、中でも特に忘れられないエピソードがいくつかあります。

正社員として初めて働いた企業でのことです。オフィスは一軒家のような構造の建物で、お手洗いがひとつしかありませんでした。

生理用ナプキンを変える音が聞こえるのではないか、ゴミ箱はあるけれどタンポンを捨てると匂いが強いのではないか、全員が就労している時間帯にお手洗いのゴミを捨てているのを見られるのが恥ずかしいなどと考え、近所の商業施設までよく足を伸ばしたことを覚えています。

決して、誰かを排除するための意図的な行為でないことは明確であり、オフィスの構造や経営者を否定する意図はありません。

ただひとつ、生理現象への制限は、実力や可能性の制限につながるということに危機感を覚える経験でした。

ちなみに、わたしはアフリカンアメリカンを含む複数のルーツを持ちつつも、日本国籍を有し、日本人女性として生活・就労しています。

であるにもかかわらず、面接や入社後に人事・総務の方から何度も投げられた言葉たち。

「日本人ですか?」
「ご両親のどちらが外国人ですか?」
「日本語は話せますか?」
「漢字はどの程度わかりますか?」

とある企業では、苗字を使用することを禁止されたことも。

民族名や通称名がないのかという、日本に住むさまざまなルーツの人々に対する、質問者の知識と理解不足が露呈する言葉を投げかけられました。結果的に「エリカ」で働くことになり、シャチハタと名刺を渡された時のなんとも言えない気持ちは忘れられません。

また、来客時に執務エリアから出ることも禁止されました。

これは遠い過去でも、国外の出来事でもありません。
2000年代の日本国内で起こった出来事です。

また、自社の男女の賃金格差を指摘したところ、女性は結婚するので賃金をあげる必要はない。議論する必要性もないという、本当にこんなことがあるの?と耳を疑うような発言を受けたこともあります。

企業活動という名の下に、アイデンティティや人の名前を取り上げたり、出入りする場所を分断したり、格差をつける。企業活動はそんなにも多くの事柄を超越しているのか?今も疑問に思っていることです。

付け加えたいこととして、当時のわたしには共に声を上げてくれる味方はいませんでした。「日本人女性」そして「マイノリティ女性」として受けた経験を受け止め、是正し働きやすくしていく仕組みも、概念もありませんでした。

ージェンダー平等達成まであと”286年”

2021年9月に、とある報告書の内容がSNS上で話題になりました。

@unwomenjapanより

国連から出された報告書で世界各国で男女平等を保障し、女性に対する差別を禁止する法律が整備されるまで、現在のペースだと286年かかる恐れがある

@unwomenjapanより

驚きと同時に強いショックを受けたことを覚えています。

国連加盟国が設定したSDGsのひとつ、「2030年までのジェンダー平等の達成」は、わたしが生きている間には無理なのかもしれないと絶望しています。


日本国内でもジェンダーギャップについては近年問題視され、世界経済フォーラム(WEF)が発表する「Global Gender Gap Report」(世界男女格差報告書)は毎回ニュースやSNSで話題になっています。

Global Gender Gap Report 2022

日本のジェンダーギャップ指数は146か国中116位

特に「経済」及び「政治」における順位が低くなっており、「経済」の順位は146か国中121位(前回は156か国中117位)、「政治」の順位は146か国中139位(前回は156か国中147位)となっています。(参照

一歩踏み込んで、日本国内の企業に目を向けると、自社における管理職に占める女性の割合は平均9.4%、政府が目標として掲げている「女性管理職30%」を超えている企業は9.5%というのが現状です。

TDB調査

また、内閣府男女共同参画局の調査によると2020年における非正規雇用労働者の割合は、女性は54.4%男性は22.2%であり、東洋経済オンラインによると女性の半数は非正社員だそうです。

ー女性のやる気のせい?

しかし、女性管理職等の差別是正の話をすると、どうしても本人のやる気次第だという声が散見されます。本当にそうでしょうか?

この点を考えるにあたり、15~25歳の女性(19カ国から1万64人)が参加した調査データの中に、気になるものがありました。

ロールモデルの存在を実感できず、リーダーになる自信や意欲を他国と比較すると持てていないという日本の現状。

リーダー層が増えていくための「幹部育成コース」を準備して、研修を行うことは必要不可欠です。ただ、それ以上の、従来の「女性活躍推進」とは異なる視点を伴うアプローチを模索すべきではないでしょうか。

ー多角的に考えるために

これまで何度か、社内におけるジェンダーバランスやジェンダーギャップについて話題に上がることがありました。

それをきっかけにさまざまな観点からデータを収集し、何が課題なのか、何を変えていくべきなのかを、何度も議論し、現在はそれに着手する準備を進めているところです。

わたしたちはいま、「女性活躍」の難しさに直面しています。

・何をもって女性とわたしたちは定義するのか
・現時点での採用や人事評価には男女別で評価を分けるようなロジックはないはずなのになぜアンバランスなのか?
・あらゆる性自認の方も気持ちよく働ける環境の創出に取り組むことを掲げている中で、どのような定量目標設定が有効なのか?

上記以外にも多くの論点があり、日本国内外の企業事例や政治の場での取り組みなどを調べているうちに時間ばかりが経過していることにもどかしさを感じているところです。

おそらく他企業のダイバーシティ担当者さんも、悩まれるポイントなのではないかと思います。

この中で、さまざまなデータや書籍をインプットすることで、ひとつづつクリアになっていく感覚があるので、いくつかご紹介します。


ー「祝福」よりも「具体的なアクション」を

日本でもここ数年国際女性デーへの注目が高まり、さまざまな企業が毎年この時期に広告やキャンペーンを打ち出しています。2023年もSNS上では例年通り、それぞれの広告に対して議論が活発に行われているようです。

女性を「祝福」する広告が増えた今、企業に求められているのは女性への「祝福」だけでなく「具体的なアクション」ではないでしょうか。

ここでまた、わたしの話を紹介させてください。

アメリカで生まれた祖母は走ることが好きだったそうです。

高校生になったら陸上部に入りたいと思っていたのですが、アフリカンアメリカンというルーツと、女性というジェンダーから、陸上競技場に入ることさえ許されず、フェンス越しに走る選手たちを見ていたと話してくれました。

当時陸上部だったわたしは、自分が走れるということは、走れるようになるために活動された多くの方(社会的に認知されている方も、日常の中で生きている人も)がいるからだと、拙いなりに思いました。

祖母が息を引き取る直前、電話越しに言った言葉を今も忘れられません。

「エリカ、今も走ってる?」
「走っているよ」
「目をつぶるとエリカが走っている姿が見えるよ。これからも走ってね」

よく祖母の最期の言葉を思い出します。

そして、こう自問自答するのです。

”誰かが作ってくれたこの環境で、わたしは全力で走れているのだろうか”

”走っている人を応援したり、伴走したりできているのだろうか”

”これから走り出そうとする次の世代のために、少しでも環境をよくすることに貢献できているのだろうか”

私たちが目指すのはいろんな働き方・生き方を「祝福」し、「支援」すること。キャリアアップしたい女性、家族の介護や育児をしている女性、ワークライフバランスを重視したい女性など。「多様な女性」の存在を可視化し、向き合っていくことです。

そして「多様な女性」の中には、周縁化された「マイノリティ女性」もいます。

例えば、アイヌの人々や部落出身女性、在日コリアン女性などの現状について、JNNC(日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク)は以下のように指摘しています。

政府には、マイノリティ女性の状況に関する実態調査を実施する意思はなく、男女共同参画政策のパンフや白書などの中にもマイノリティ女性の現状に関する情報や課題、施策に関する記述は一切ない。

JNNC(日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク)

ハンディキャップやジェンダー・セクシュアリティ、年齢、学歴、婚姻、国籍・ルーツ、出産、子育て、介護etc…

組織の意思決定層や議論・意思決定の場にあらゆる属性やライフステージの方がいることは、より多角的的な視点を持ったアジェンダ設定や意思決定の実現において必要不可欠であるとわたしたちは考えています。

異なるキャリアを描いている方や、私たちの想像力の及ばない人々の声をどのように聴くことができるのか。悩み、試行錯誤を重ねる毎日です。

これまでの先人の経済的、文化的、社会的、政治的功績を讃え、意思を引き継ぎ、解決することのない葛藤から逃げることなく向き合いながら、今のわたしたちができることを、一つずつ確実に行っていきます。

writer: ワイン エリカ
editor: Ai Tomita


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