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【小説】午後休不倫 episode .1

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「よし、今日の業務は終了だ。みんなお疲れ様!今日は先に失礼させてもらうよ。」

「田端さん、お疲れ様です。」

「おう、お疲れ様!お先!」

勤怠管理システムの退勤を打刻し、俺は会社を後にした。

今日は午前だけ出社をし、午後は半休を取得している。

午後が休みだと分かっていると、午前中はいつも以上に仕事に集中できる。

俺は大手メーカーで営業課長をしている田端 誠司(たばた せいじ)だ。

年齢は40代前半、妻と2人の子供がいる。

今、世間はコロナの影響により、あらゆる事が自粛されている。

コンサートや居酒屋やその他娯楽施設など、あらゆるエンターテイメントが今まで通り楽しめる状況ではない。

最初は致し方ないと自粛生活をしていたが、多くの人が我慢の限界に近い状況であろう。

俺もその1人だ。会社の飲み会や趣味の登山や釣りも自粛していて、仕事やプライベートのストレスをどこにぶつけていいやら。

満たされない。

なんだか満たされない。

いつも漠然とそう思っていた。

この状況下では、普通だったら家に帰るべきなのだろうが、俺は密かな楽しみを見つけてしまった。

この後俺は、会うべき人がいるのだった。

※※※

サラリーマンやOL達がまだ仕事をしている中、すっかりオフモードな自分に優越感を感じつつ、待ち合わせの場所へ向かう。

品川駅から少しした場所にあるホテルのラウンジに到着し、待ち合わせ相手と会う。

「宏美ちゃん。お待たせ〜!」

「田端さん、お疲れ様です!」

「じゃあ、行こうか?」

「はい。」

彼女は宏美、年齢は30代後半くらいだろうか。

俺が所属する営業のバックオフィス部門に派遣社員として配属されている。

既婚者で子供はいないようだ。

スラッとした細身の体型で、身長はそこそこある。

黒髪ロングの清楚で穏やかでとても感じの良い人だ。

業務中でのやりとりはしばしば交わしていたが、特にこれといった進展はなかった。

しかし、雑談の中で好きな映画の趣味が一致してる事が判明して、その会話で盛り上がる。

それからというもの、一気に距離が縮まり、ちょちいちょい会社のチャットでもやりとりするようになった。

2人でWEB会議する時は、ほぼ雑談な事も多くなってきた。

オフィスであまりにも仲良く話していたらさすがに怪しまれるだろうが、ネットを介してのコミュニケーションが多いため、職場で怪しんでいる人はおそらくいないだろう。

そんな中、ひょんなことから一緒に映画を観ようという事になった。

お互い家庭があるため、休日に会うのは難しく、午後休を取得して外で会おうという事になった。

しかし、このご時世で映画館に行くのもな、、という理由のような口実のような背景から、ホテルに行く事になった。

今回、全休ではなく、午後休にしているというのがポイントだ。

俺の会社では働き方改革が推進されており、管理職であっても休みはかなり取得しやすい。

リモート勤務も多いが、今日のように出社も半分くらいはある。

残業も一時期に比べるとかなり減っている。

とはいえ、一定の業務量も抱えているため、午後休で仕事を終わらせてから女性と会うのは、仕事とプライベートの両立の面からしても効率が良いのだ。

午後休であれば休みを分割して取れるので、より多くの日数を休む事ができ、仕事もしているので罪悪感がいささか少なく感じる。

※※※

こうして俺は、デイユースで予約していたホテルに宏美とチェックインする。

ホテル内ならば人目もあまり気にならないし、
今ならガラガラなので予約も取りやすい。

ルームサービスのワインで乾杯をして、軽食を取りながら一緒に映画を鑑賞する。

「そうそう、このシーン俺好きなんだよねー!」

「私もです!この俳優さんのアクションシーンがカッコいいですよね!」

お互い好きな映画を見ているだけあって、会話がとことん弾む。

約1時間半、映画を鑑賞し、時刻は15時前となった。

「あー楽しかった!映画も楽しかったけど、田端さんといると本当に楽しいな。」

「俺もとても楽しかったよ。でも、旦那とも映画観たりしないの?」

「うーん、旦那とはそんなに趣味が合わないし、あっちは仕事が忙しいみたいだから、平日は殆ど会話しないんですよ、、。」

話を聞いていると、宏美は旦那との関係が特別上手くいっていない訳では無いが、積もる不満は多くありそうだった。

「そうなんだ。こんなに一緒にいて楽しいのに、旦那は勿体ない事するよね。」

「そんな風に言ってくれるの田端さんだけです。嬉しいな。」

「そんな事ないでしょ?宏美ちゃんモテそうだし。」

「いやー、もう年齢も年齢ですし、モテるなんてないですよ。」

「俺は好きだよ。宏美ちゃん。」

「えっ、、」

俺は宏美の手を握り、おもむろにキスをした。

「ちょっ、、田端さん、、ダメですよ、、」

「なんでダメなの?俺のこと嫌い?」

「嫌い、、では、、ないですけど、、お互い既婚者ですし、、」

「なら好きって事だよね?両思いならいいじゃん。」

「えっ、でも、、たばたさ、、あっ、、❤︎」

宏美はすんなり俺の事を受け入れた。

宏美の折れそうな細い腕と白い肌が、俺をトップギアにシフトチェンジさせる。

最初は恥じらっていた宏美だったが、普段のうっぷんを晴らすかのように、途中からは積極的だった。

まるで女豹のように獲物を逃すまいと、俺にまとわりついてきた。

俺も負けじと獣のように宏美に襲いかかった。

「はっ!おおおお、うぬぬぬ、うぐっ、、うっ!」

2頭の猛獣は互いの精を尽くし、果てたのだった。

※※※

「いやー、あの清楚な宏美ちゃんがまさかあんなだとはなぁ。」

「もう、田端さん!恥ずかしいですよ。」

「明日から職場で見る目変わっちゃうなぁ。」

「もう、2人だけの秘密ですからね!それに、田端さんはしょっちゅうかもしれないですけど、こんな事したの、結婚してからは田端さんだけですからね!」

「ははは。結婚後の相手に俺を選んでくれて嬉しいよ!俺も宏美ちゃんだけだよ。たぶん。」

「もーう、軽いなぁ(笑)」

こうして俺は宏美と関係を持った。

2人とも好意はあるものの、お互いが今のお互いの状態を崩したい訳では無いので、利害関係が一致している。

カーテンを開けて窓から下を眺めると、外はまだ明るかった。

俺は再び、世のサラリーマン達が仕事をしている中、自分は良い思いをしている優越感と、ひと仕事を終えた達成感に満ち溢れていた。

セレブ達がタワマンの上層階に住みたがるのは、きっとこうゆう事なのだろう。

※※※

夕方になり、定時あがりのサラリーマン達が増え始める頃、俺と宏美はバラバラに家路へと着くのだった。

「今日はありがとね、また明日!」

「なんか変な感じですけど、また明日(笑)」

俺は普段は残業もあるので、もう少し遅くても大丈夫なのだが、派遣勤務の宏美はほぼ定時上がりで、帰ってから家事をしているため、このくらいの時間に帰さないといけないのだ。

コロナ禍において、自粛の影響で多くの不倫カップルが破局したようだが、俺はこうして「午後休不倫」というエポックメイキングな活動をしている。

世の中では、フレックス勤務や副業解禁などによる柔軟な働き方が広がっているが、不倫の形だってこんなふうにパートタイムで柔軟性があってもいいではないか。

こうして、これからも俺の「午後休不倫」は続くのである。

※この小説はフィクションであり、実在の人物や団体などとは関係ありません。



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