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【特別編】3周年だよ想造楽工!「デザイン」と「協働」の意味を分解してみる

こんにちは、お久しぶりです!想造楽工班長のよりこです。
この10/17をもって、想造楽工と株式会社ニューモアは誕生してから3年が経ちました。パチパチ!
そんな節目の今回は、表題のとおり、
想造楽工のキーワードである「デザイン」そして「協働」という言葉を分解して、見つめ直してみたいと思います。

想造楽工とは、の説明はそろそろ割愛してみます。知らんしという方は、昨年まとめた記事をご一読くださいませ(はーと)


アートではなくデザインと言いたい理由

想造楽工を立ち上げて3年、たびたび「障害者アート」と呼んでいただくことがあります。
アール・ブリュット、アウトサイダーアートなどと呼ばれる世界の方々の作品は個人的にもとても好きですし、アートの解釈はもちろん人によって自由なのでありがたく受け止めているのですが、
小さなアイデンティティとして想造楽工は、「アート」ではなく「デザイン」のチームと思っています。

その理由は2つあって、
ひとつは「誰かのためにものづくりを設計」するという、プロセスとゴールの部分。
もうひとつは原画制作の施設さんと、絵をアレンジして仕上げるこちら側の役割が50/50と対等だという、関係性の部分です。
ではではそれぞれについて、少し掘り下げていってみます。

デザインの所以その1:誰かのための設計

少し話が脱線しますが、私よりこはデザインの学校を出たあと少ししてイギリスに留学し、いわば「アーティストになりたい!」の一心で過ごしました。

ザ・ロンドンバスに乗って街を巡る日々
最初に住んでいたアパート。右側の壁に謎にシロクマを描きました
日々絵日記を描いてモヤモヤを吐き出す

帰国後6年ほどはフリーランスとしてグラフィックデザインの仕事をしながら、国内外の芸術祭や滞在制作に参加してきました。北は青森から南は香川県、飛んでブルガリアなど沢山の地域に入って、そこの人々と一緒にものづくりをする日々はそれはプライスレスで、毎日アドレナリン爆発。
次はどんなプロジェクトを作ろうか、ということで頭がいっぱいでした。

見るからにアドレナリン全開、縄文人ごっこ。

思えば当時は、生粋の美術畑じゃなくデザイン出身という経歴にやたらと負い目を感じつつやっていました。そもそもデザインとは何か、アートとは何かもろくにわかっておらずだったのですが、
積み重ねていくうちに双方の違いについて、意識する機会が増えていきました。

ひとつ、日常か非日常か

芸術祭はその名の通りお祭りで、数年に一度やってくる特別な機会。アートを取り入れると色々な気付きが生まれたり、人々がつながったり、心が豊かになり得る、不思議な力のある分野です。けれども取り入れるには意志が必要で、関心のある人が足を伸ばして訪れる、非日常の世界なんだと思います。

一方でデザインとは人々の生活をより良くするための設計であり、無意識のうちに日常の至る所に溶け込んでいます。いわば黒子のような存在でもあり、美術作品は作者の名前ありきなことに対し、デザインは作者が誰か知られないまま人々に見られたり使われても然るべきだという存在です。

ふたつ、誰のためのものづくりか

また、アートの世界の経済的厳しさは耳には入っていましたが、自分の作品を販売し生業を成り立たせる道のりは本当ーに険しいものだということを知りました。
決してデザインが楽と言うわけではなく、もちろん何を極めるのも大変な所業なわけですが、デザインは基本的にはクライアントと呼ばれる、「この人のためにつくる」相手が居てはじめて仕事がスタートします。ゴールもやっぱり、クライアントの方にご満足いただけるか否かがまずは明確なラインです。

不特定多数の人に向けたものづくりか、
特定の人のために向けたものづくりか。

どちらがよりやりがいを感じるかは人によって変わるのだろうなと思いつつ、ひょっとすると自分はデザインの考え方が合っているのかもなぁ・・・と感じるようになりました。理由は色々あれど、作品づくりよりも「仕事がしたい」という気持ちが最も強かったんだと思います。

そんなちょっとしたモヤモヤを抱えながら過ごしていたころ、
八王子の福祉施設(就労継続支援B型事業所しあわせのたね、現パートナー施設さん)が運営しているカフェ改装のお仕事を受けたのがターニングポイントとなります。

↓当時の記事はコチラ

自分の家族に障害があることが、この分野に関わりたいと思ったきっかけではあったのですが、障害福祉の市場について調べるうちにその課題感が、アートのそれと近いのではと感じるようになりました。

福祉施設(就労継続支援A型、B型事業所などの作業所)の多くは市街地から離れた場所にあったり、仕事をしていても普段、いわゆる健常者の日常と交わることは多くはありません。
そして素晴らしい絵の表現力を持った方がいらっしゃっても、やっぱりアーティストとして、作品を販売してお金を得るということは誰にとっても本当に険しい道です。
そう思うと今までの自分の考えがリンクして、
アートではなくデザインで「誰かのために」ものづくりをして、
ひとりではなくチームとして足りないところを補完しあって、

日常に溶け込むような仕事をつくることができないか、
と思うようになり、想造楽工事業が生まれました。

デザインの所以その2:50/50の関係性

依頼主の方の想いを体現するものづくりがデザインの仕事のゴールと見据え、対価をいただくには当然、ご満足いただける完成度で納めるという点が重要です。
そのために想造楽工では絵の描き手だけではなくデザイナーがいて、原画に手を加えて仕上げる流れが必ず入ります。

トレースした原画にパソコンで線や色、レイアウトなどアレンジを加えて仕上げます


アレンジがほんの少しの場合もあれば、かなり抜本的に手を加えさせてもらうこともあります。つまり原画は「作品」ではなく「素材」として扱わせてもらっています。
これは原画の存在をないがしろにするわけでは決してなくて、絵とデザイン互いが50/50の存在で在るための定義だと思っています。
どちらも、同じだけ大切。

実際はデザインの作業とはなかなかにエンドレスで、工数を考えれば原画制作の時間より何十倍もかかります。受注制作の場合は、予算配分もかかる工数に応じて計算をしています。
だけれどあくまでも原画があって、その世界観があって、デザインがある。
どちらがなくても成り立たないのです。

語弊を恐れずに言うと、描いてもらう絵も、描き手の方々も持ち上げすぎたくはないという気持ちもあります。
想造楽工のイラストレーターさんは、福祉施設利用者さんなら誰でもオッケー、ではありません。絵を描くことが好きで、当然そこには続ける努力が必要だし、絵の相性もあります。
でも個人的には、「才能」の言葉で取捨選択をしたくない。そんな不確かな言葉によって、才能が在るか否かで結論を出すのは不毛だと思うのです。

だれにでも「持ち味」「取り柄」はあります。絶対にあります。
そこを活かし、高めるためにチームがあります。
それぞれの持ち味を掛け合わせてひとつのものづくりをすること。
ひとりでやるより何倍も良いものをつくること。
そうして成り立つ関係は「対等」であるはずで、それが私たちの「協働」にとても大事なことだと思っています。


先日もひとつ、嬉しいお仕事が完成しました。
八王子市に新しく誕生した小児科・アレルギー科の「山と空こどもアレルギークリニック」さまにご依頼をいただき、
想造楽工としてビジュアルの制作やクリニック内外のペイントを担当させていただきました。

やりとりさせていただく中で、院長先生や奥様の素晴らしいお考えとお人柄、開設への頑張り、ご苦労がとても伝わり、
デザインという分野で精一杯、来てくださる方に先生方や場所の素敵さが伝わるお手伝いをしたいと考えました。

はじめて来た子どもさんの緊張がほぐれたり、あたたかい気分になるためにはゆるやかなイラストが大活躍します。
同市内のパートナー施設、しあわせのたねのみなさんにお願いをして、原画を制作してもらいました。テーマは山の生き物たち。近くの高尾山にいる(であろう)、ムササビやクマ、キツネなどなどたくさんの動物たちを描いてもらいました。

原画その1(品川久美さん)
かわいいかわいいキツネさん(品川久美さん)
原画の制作は、黙々と、各自着々と。
フィニッシュはこちらが責任を持って
クマもキツネも小人もいます
院長先生、スタッフのみなさま笑顔でチーズ
クリニック内にもたくさん描きました
イラストのほか、サインやお知らせも大事なデザインのしごとです

完成するや否や、先生やスタッフの方々がわー!とテンション上がってくださってとても幸せな気持ちになりましたし、
その後しあわせのたねのメンバーさんが見に来てくれたとの知らせも嬉しかったです。

だれかのための設計、デザイン。
それを遂行するプロフェッショナルのチームを、ご縁あった福祉施設の方々と一緒につくるのが想造楽工です。

山と空アレルギークリニックさん、本当に素敵なところなので、ぜひお近くの方はご利用くださいね。

山と空こどもアレルギークリニック
小児科・アレルギー科
TEL042-686-3447
〒192-0074 東京都八王子市天神町24-3プラムフィールド1F

最後に

とここまで、自分なりのデザイン論を書いてみましたが、
結局のところ個人的にはアートだろうがデザインだろうが謂れはなんでもよく(いいんかい)、良いものづくりがしたい、の一心でやっています。

良いものづくりとはすなわち、

  1. 納得がいくまで作られた世界観であること

  2. 関わる人たちがうれしいものであること

  3. 働く人たちに正当な対価が支払われること(べらぼーな額ではなく、ただ、なるべくきちんとしたい)

です!あくまでワタシ的三原則ですが。
アートにしても、デザインにしても、何よりも大切なことは続けること。それで初めて説得力が出るもの。
信念を持ってものづくりを続けている方々を本当に、尊敬しています。

事業を始めるって簡単なことではないし、うまくいく確証も全然なかったのですが、
絵を見て感じた可能性と「一緒に仕事がしたい」と思う気持ちがまとまり、周囲にも背中を押してもらい、
2020年、想造楽工はオギャーと産声を上げました。

それから3年!
世の中の統計的には、起業して3年続く法人は全体の50%に満たないとかなんとか。
都心の一等地にビルを構えるわけでもないミニチュア会社にすぎないのですが、中学も高校も、3年経つと世界が変わるわけで。
まずはここまでやってこれたこと、そして小さいながらも一歩一歩進み、仲間が増え、広がりを実感できていることに、心から感謝です。

知らない方からご連絡をいただく機会も増え、遠方からもSNSやオンラインストア通じて想造楽工を知ってくださる方が増え、なんて幸せなことだと感じています。

4年目もどんな出会いが待っているか楽しみでなりませんし、イラストレーターのみなさんの進化も楽しみですし、
一歩一歩着実に、素朴に、続けて行きたいと思います。

余談ですが最近は事務所スペースをちょっと拡大して、それは狂気の沙汰のごとく連日連夜DIYに励んでおりました。
ヒノキの床も貼ったよ!こたつも導入したよ!団らんです!
小さいけれど、自然光と色合いのそれは良い感じのマイ・楽園です。
東京の西にお越しの方は、ぜひ一緒にこたつでみかんを食べましょう。

アイラブマイ事務所
アイラブチーム!

2023.10.17
想造楽工・株式会社ニューモア班長
よりこ