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障害ある人々とのデザインチーム、想造楽工ができるまで(中)

前編はこちら

こんにちは!株式会社ニューモアのYORIKOです。
さてさて、中編です〜。

東京都八王子市にある福祉施設「しあわせのたね」の利用者さん達に描いてもらった絵に出会って、そののびのびした世界観に感銘を受けた後。

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家族に障害のある者がいるのに、この世界のことを全然知らない、知ろうとしてこなかった自分に気づき、勉強しなくてはと思うようになりました。


福祉市場の課題:「好きなこと」を仕事にする難しさ

まず、障害福祉サービスの事業所にもたくさん種類があることを全く知っていませんでした。

厚生労働省「障害福祉サービスについて」

大きく「介護給付」と「訓練給付」に分けられ、細かな種類は全部で18。
今回お世話になった「しあわせのたね」さんは、訓練給付の中の就労継続支援B型事業所です。障害のある方々が就労に向け訓練する場所で、雇用契約を結ぶ「A型」と結ばない「B型」があります。

そしてこうした就労継続支援事業所で働く利用者さんの平均賃金(月収)の額は、平成30年度がA型で76,887円、B型で16,118円、46,502円が平均額となっているそうです。この額にはびっくりしました。

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資料:厚生労働省「平成30年度工賃(賃金)の実績について」

仕事内容においては、就職状況は運搬・清掃・包装等が一位、事務的職業が2位、サービス・生産工程の職業が3位でほぼ全般を占めており、どうしても一般的には効率や技能といった面で、仕事の選択肢が減っていきます。

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資料:厚生労働省「平成30年障害者の職業紹介状況等」

賃金の低さと、選択肢の少なさ。
つまり、好きなことを伸ばし、対価を得ていく挑戦がしたくても、その機会と受け皿がとても限られているのが現状、ということ。

「好きなこと」で仕事をするということは、障害の有無に関わらず決して簡単ではありません。良し悪しでもなく、優劣でもなく、各々の価値観で選択されるべきことです。

ただそこに「挑戦」できる選択肢、機会があることが大切で、
障害があることでその選択肢が狭められてしまう現状は、変わるべきではないのか。と思うようになりました。


絵の可能性:「商業美術」としてのイラストレーション

たねカフェで出会った、障害のある人々の、枠に捉われない素敵な絵。
絵の表現は効率性などとは比較できないものであり、見る人の心を和ませたり新たな視点を与えてくれる、大きな力を持っています。

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発達障害のある私の姉も、小さい頃から絵を描くことが得意でした。(私自身は姉の真似ばかりしていて、いつも二番煎じだった記憶があります。)
姉の場合はこうした就労施設で働くことも難しいので、他者と関わりながら仕事をしている人たちが私には眩しく見えたりもするけれど、
絵を描くことが大好きで優れた能力を持っていて、ただそれを仕事につなげる機会がない状況は、なんというか、すごく勿体ない。

外部サポートによって多くの人々にこの世界観を届け、障害のある人が絵を描くことを仕事につなげられないだろうかと考えました。

アートとデザインの違いは何か、という議論は古今東西で繰り広げられてきました。私は恐れ多くも「アーティスト」「デザイナー」の双方で自己紹介をする機会があり、それなりにこの違いについて悩みもしましたが、結局重なる部分は多くて、ただ先に来る順位が「自己の表現」か「他者の表現」かの違いなのかなと感じています。

絵の分野も2者に分かれ、アート寄りの「絵画(純粋美術)」と、デザイン寄りの「イラストレーション(商業美術)」があります。これまた重なる部分も多いのですが、イラストレーションはデザインと同じく、基本的に商業にベースを置いて制作活動するものとみなします。
デザインとイラストレーションは世界観訴求のため協働する機会がとても多く、パートナーの関係になることがしばしばです。

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障害のある人々をイラストレーター(商業美術家)として迎え、絵をデザインと組み合わせて完成度を追求できたら。汎用性が広がり様々な商業展開が可能になると、絵を描く作業を「仕事」として依頼していけるのではないか。

こうした考えが、デザインチーム「想造楽工」にまとまり、実行するべく覚悟を決めて2020年4月、会社を設立しました。

(後半へツヅク!)