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ぼくの基盤 #7「真夜中の饗宴」 |小説 ユニバーサル・カバラの物語 第二章
黒いマントをかぶった男は森の中を進む。枯れ木や木の実で埋まる地面を、足音を立てないように一歩一歩すすむ。森の中は靄っている。男の全身をくすぐるような甘い香りが漂い、かすかな音楽が風に乗っている。好奇心が抑えられなくなった男は、幹から幹へと伝いながら近づいていく。
裸の女たちが輪になって踊っている。木の葉のゆらめきに合わせるように女たちの乳房が揺れる。女たちの肌はうっすらと汗ばむ。一人一人が感じるままを全身であらわす。男の興奮は一気に高まり、下半身が勃起する。
「イタタっ!」
男は鋭い痛みを感じて声をだす。耳たぶが強くひっぱられている。案山子の女が真後ろに立っていて、男の耳たぶをひねり上げながら男の体を地面に引き倒す。女の細い体からは想像もつかないような強い力だ。地面に這いつくばった男の股関を、女がぎゅっと握る。勃起したいちもつを潰された男は痛みのあまりに声をうしなう。
案山子の女は顔色ひとつ変えずに言う。
「なぜ肉欲を感じる?」
男は絶え絶えになりながら言う。
「・・・裸の女がいるから・・・」
女は手に力をこめる。男の体は痛みで海老反りになる。
「女を性的な対象で見るのではなく、アートとして見よ」
「アートとして・・・?」
男の眉がひくひく痙攣する。裸の女をアートとして見ろ? なんのために?
案山子の女が男の股間から手を放す。男はようやく一息つくと立ち上がる。何がなんだかわからないが、裸の女を性的な対象としてではなく、アートとして見なければならない。目の前の裸で踊りつづける女たちをみる。すぐに下半身が反応して勃起する。女たちはあまりに肉感的だ。魅力的な生身の女を、性の対象として見ないことなどできるだろうか。男は女たちに目を向ける。裸の体に見えてくるもの。
彫刻に刻まれた裸の女。
絵画で描かれる裸の女。
男の脳裏に、何百という全裸の女が駆けめぐる。男の勃起はいつの間にか収まっている。全裸で踊る女たちが一幅の絵のように輝く。男にとって女たちはもう性の対象ではない。案山子の女が言う。
「帰るわよ」
家に戻ると、案山子の女がカゴ差し出して言う。
「ここにあるハーブを調合してオイルを作るのよ」
家の中に吊るされている何百種類ものハーブ。男はカゴを手に持ち、ゆっくり歩きながらハーブの草を引き抜いてゆく。カゴがいっぱいになると、男はハーブを鍋に移して煮つめていく。ハーブはやがてオイルを抽出する。男は完成したオイルを案山子の女に渡す。
女は言う。
「オイルのレシピを書いて」
男は使ったハーブを思い出し、鍋で煮詰めてエキスにした方法を紙に書いた。男のレシピと引き換えに、案山子の女は一枚のレシピを男に渡す。「愛のスペル」と書かれたオイルのレシピは、男のレシピとまったく同じ作り方が書かれてある。
前回の話はこちら。
誰も読んだことのない、誰も書いたことのない、本当の成功の物語。
「ユニバーサル・カバラの物語」
秘密はここに。
制作
グッドニー ・グドナソン
中込英人
谷村典子
グッドニー ・グドナソン
モダンミステリースクールファウンダー
リネージホルダー メインイプシスマス
アイスランドの貴族の家系に生まれ、生まれてすぐに双子の兄を亡くす。以来兄の存在を通し、目に見えない世界とこちらの世界を同時に生きるようになる。 10代で英国のミステリースクールに招聘され、カバラ、ヘルメス学、古代エジプトやケルト、ドルイドマジックなどあらゆる魔術と形而上学を学び、最高位の魔術師となる。1997年にモダンミステリースクールを継承(当時はロッキーマウンテンミステリースクールの名称)。「No More Secret」の下、それまで秘密にされてきた真の形而上学の教えをオープンにする。現在は世界60カ国に広がるミステリースクールで教える一方で、DJとしてフジロックのステージに立ったり、ハリウッドの映画祭でプロデューサーとして活動するなど、多方面で活躍。まるでファンタジー映画や物語のようなその生き様を通し、あらゆる可能性と喜びを表現し続けている。オーロラエンタテイメント・エグゼクティブプロデューサー。
中込英人
モダンミステリースクール校長
リネージホルダー サードオーダーイプシスマス
世界中で形而上学を教え伝えるメタフィジックス・ティーチャー。幼少期より空手の天才少年と称され、大山倍達氏のもとで内弟子として研鑽を積んだ武道家でもあり、15歳で渡米した後、飲食店経営などで成功を収める。また、武道の実力を買われ、ダライ・ラマ14世のボディガードを担当。ダライ・ラマ14世から「スピリチュアルな道を人に説くもの」と称されたことをきっかけに、密教の学びを始める。密教行者として厳しい修行を積んだのち、30代で一時帰国。ミステリースクールおよび形而上学の学びと出会い、以降、スクールの拡大に全精力を傾け、2017年に最高峰の魔術師である「イプシスマス」の称号を得る。形而上学をわかりやすく、ユーモアを交え伝えるクラスは、国や文化を問わず常に笑いと活気に満ちている。著書『支配者(エリート)が独占してきた成功の秘笈』『MAX瞑想システム™️ー脳を鍛え可能性を引き出す究極の成功メソッドー』
谷村典子
作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員
成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。Atelier ADITI主宰。http://atelier-aditi.jp/
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