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ぼくの基盤 #2「目覚め」 |小説 ユニバーサル・カバラの物語 第二章

ぼくはベッドの中で目をさます。ぼくは公園から戻ってきたようだ。風の匂いも大地の温もりも、まだそこにいるかのように生々しくぼくを包む。公園ではすべてが楽しかった。ぼくの興奮は冷めらやない。でもぼくは今ベッドの中にいる。ふわふわしていたぼくの体がはずしりと重い。ぼくは下半身に生ぬるい感触を感じる。夢の中ですっかりリラックスして、気持ちよく放尿したことを思いだす。ぼくはお漏らしをしたようだ。パンツの中にそっと手に伸ばす。木綿の布はさらりと乾いている。ぼくは確かにお漏らしをしたはずなのに。


ぼくはいそいで支度をしてレストランへ向かう。厨房では仕込みが始まっている。ウェイターは食器をピカピカに磨く。ぼくは昨日より今日、今日より明日の売り上げを伸ばすことだけを考えてきた。常連客を飽きさせず、新規の客をいかに取り込んでいくか。ところが今日はいつものような情熱がこみあげてこない。ぼくが黙ったままなのでスタッフが声をかけてくる。


「オーナーは疲れているようですね。今日はもう帰ったらどうですか?」


ぼくは答える。


「家に帰って、何をしろというんだ」


ぼくの生活は仕事が中心に回っている。仕事以外にやりたいと思えることはない。

レストランの一角に、壁一面をガラス窓にしつらえたお気に入りのバーがある。仕事のアイデアにいきづまった時はここで搾りたてのオレンジジュースを飲む。


ぼくはカウンターの端にある指定席に座る。とろりとしたオレンジのエキスで満たされたグラスを受ける。あまずっぱい果実のエキスがぼくの喉を流れ落ちる。


一人の女が足を斜めがけに組み、カウンターにひじをついている。うす暗い照明でもよく光る宝石をはめた細い指にワイングラスに絡ませて、濃厚な液体をゆっくりとまわしている。胸元が大きく開いたタイトなドレスがよく似合う。たっぷりした腰を椅子から押しだすようにして、抜群なスタイルをアピールしている。女はあきらかにぼくを意識している。ぼくの心臓の鼓動が少しずつ早くなる。ぼくは女の体を知らないわけではない。この国に来てから、夜の社交場で知り合った女とゆきずりのセックスをしたこともある。どの女とも2回以上会わないと決めている。仕事に費やす体力や気力を女に奪われるのはごめんだ。


昨日まで、レストランの客に興味を惹かれることなどありえなかった。ところが今夜のぼくは違う。とびきりのグラマラスな美女がぼくに秋波を送ってくる。ぼくは女に集中する。ぼくとこの女はこれからどうなるのだろう。
ぼくはその時をじっと待つ。女は高級酒がならぶレッドシダー材の棚を見る。棚のど真ん中に有名な野球選手のサインボールが飾ってある。
ぼくは女に声をかける。


「野球はお好きですか?」


女は初めてぼくに気づいたかのようにゆっくりと振りかえる。
「ええ」


女は獲物を見つけた猫のように目を細めて微笑んだ。ぼくの頭から今夜の売上の心配が吹っ飛んだ。その夜、ぼくは初めて閉店時間より前にレストランを出る。ぼくのスポーツカーの助手席にグラマラスな女を乗せて。

→ …続きを読む(ぼくの基盤 3「三人の恋人」)

前回の話はこちら。

​誰も読んだことのない、誰も書いたことのない、本当の成功の物語。
「ユニバーサル・カバラの物語」
秘密はここに。


制作
グッドニー ・グドナソン
中込英人
谷村典子

グッドニー ・グドナソン

モダンミステリースクールファウンダー
リネージホルダー メインイプシスマス

アイスランドの貴族の家系に生まれ、生まれてすぐに双子の兄を亡くす。以来兄の存在を通し、目に見えない世界とこちらの世界を同時に生きるようになる。 10代で英国のミステリースクールに招聘され、カバラ、ヘルメス学、古代エジプトやケルト、ドルイドマジックなどあらゆる魔術と形而上学を学び、最高位の魔術師となる。1997年にモダンミステリースクールを継承(当時はロッキーマウンテンミステリースクールの名称)。「No More Secret」の下、それまで秘密にされてきた真の形而上学の教えをオープンにする。現在は世界60カ国に広がるミステリースクールで教える一方で、DJとしてフジロックのステージに立ったり、ハリウッドの映画祭でプロデューサーとして活動するなど、多方面で活躍。まるでファンタジー映画や物語のようなその生き様を通し、あらゆる可能性と喜びを表現し続けている。オーロラエンタテイメント・エグゼクティブプロデューサー。
中込英人

モダンミステリースクール校長
リネージホルダー サードオーダーイプシスマス

世界中で形而上学を教え伝えるメタフィジックス・ティーチャー。幼少期より空手の天才少年と称され、大山倍達氏のもとで内弟子として研鑽を積んだ武道家でもあり、15歳で渡米した後、飲食店経営などで成功を収める。また、武道の実力を買われ、ダライ・ラマ14世のボディガードを担当。ダライ・ラマ14世から「スピリチュアルな道を人に説くもの」と称されたことをきっかけに、密教の学びを始める。密教行者として厳しい修行を積んだのち、30代で一時帰国。ミステリースクールおよび形而上学の学びと出会い、以降、スクールの拡大に全精力を傾け、2017年に最高峰の魔術師である「イプシスマス」の称号を得る。形而上学をわかりやすく、ユーモアを交え伝えるクラスは、国や文化を問わず常に笑いと活気に満ちている。著書『支配者(エリート)が独占してきた成功の秘笈』『MAX瞑想システム™️ー脳を鍛え可能性を引き出す究極の成功メソッドー』
谷村典子

作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員

成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。Atelier ADITI主宰。http://atelier-aditi.jp/

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