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ぼくの栄光 #2「人生最高の感動」 |小説 ユニバーサル・カバラの物語 第三章
ぼくはベッドサイドで赤い本に読みふける。赤い本を受け取った時は本には一文字も書かれていなかった。ところがある日、まっさらなページに突然文字が立ち現れた。文字は日に日に増え続け、まるで織物のように摩訶不思議な物語を紡ぎあげていく。それは一人の男の物語。男は山高帽を被り、黒いマントを羽織っている。その男がどこから来たのか、何をしているのか、正体は明かされない。それなのに、ぼくはこの男にどこかで会ったことがあるような気がする。黒いマントに山高帽。やがてぼくは気づく。彼に会ったのは夢の中だ。この本には、ぼくが見た夢がそっくりそのまま描かれていくかのようだ。
ぼくは赤い本を読み終えて、テレビを見ている妻に話しかける。
「君にとって素晴らしい思い出ってなに?」
妻はコメディアンの番組に気を取られながら答える。
「初めてレコードが発売されたとき。私もプロの歌手になれたんだって、叫
びまわりたいほど嬉しかったわ。あなたは?」
「そんなに嬉しいことはなかったよ」
妻はテレビ画面から目を離してぼくを見る。
「私と結婚できたことじゃないの?」
ぼくは声を立てて笑う。
妻が妊娠した。ぼくは父親になる実感がないまま、どんどん大きくなる妻のお腹を他人ごとのように見ている。周囲から祝福されるたびに、ぼくが生まれる時、ぼくの母親はどんな気持ちだったのかと思わずにはいられない。
出産のために妻が入院する。ぼくは痛みにもだえる妻の背中をひたすらさする。全身汗だくになって痛がる妻を励ます。ぼくは赤ん坊が無事に生まれることだけを願う。ようやく赤ん坊が生まれたとき、ぼくは涙を流している。ぼくは人前で泣いたことがない。止めようとしても涙はあとから溢れでる。
ぼくは妻に言う。
「人生でこんなに嬉しい日に巡り合えるとは思わなかった」
妻は、泣きやまないぼくを見て笑う。
「これであなたにも素晴らしい思い出ができたわね」
ぼくは国際電話をかける。
「子供が生まれたよ」
ガーガーという雑音に紛れて母親の声は遠い。
「ああそうかい」
「母さんの初孫だね」
母が笑ったような声がした。
「高い料金払って、わざわざそんなことを報告してくれなくてもいいんだよ」
電話は素っ気なく切られた。ぼくは受話器をにぎったまま動けない。ぼくを産んでくれてありがとうと言いたかっただけなのに。
…#3へつづく。
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「ユニバーサル・カバラの物語」
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制作
グッドニー ・グドナソン
中込英人
谷村典子
グッドニー ・グドナソン
モダンミステリースクールファウンダー
リネージホルダー メインイプシスマス
アイスランドの貴族の家系に生まれ、生まれてすぐに双子の兄を亡くす。以来兄の存在を通し、目に見えない世界とこちらの世界を同時に生きるようになる。 10代で英国のミステリースクールに招聘され、カバラ、ヘルメス学、古代エジプトやケルト、ドルイドマジックなどあらゆる魔術と形而上学を学び、最高位の魔術師となる。1997年にモダンミステリースクールを継承(当時はロッキーマウンテンミステリースクールの名称)。「No More Secret」の下、それまで秘密にされてきた真の形而上学の教えをオープンにする。現在は世界60カ国に広がるミステリースクールで教える一方で、DJとしてフジロックのステージに立ったり、ハリウッドの映画祭でプロデューサーとして活動するなど、多方面で活躍。まるでファンタジー映画や物語のようなその生き様を通し、あらゆる可能性と喜びを表現し続けている。オーロラエンタテイメント・エグゼクティブプロデューサー。
中込英人
モダンミステリースクール校長
リネージホルダー サードオーダーイプシスマス
世界中で形而上学を教え伝えるメタフィジックス・ティーチャー。幼少期より空手の天才少年と称され、大山倍達氏のもとで内弟子として研鑽を積んだ武道家でもあり、15歳で渡米した後、飲食店経営などで成功を収める。また、武道の実力を買われ、ダライ・ラマ14世のボディガードを担当。ダライ・ラマ14世から「スピリチュアルな道を人に説くもの」と称されたことをきっかけに、密教の学びを始める。密教行者として厳しい修行を積んだのち、30代で一時帰国。ミステリースクールおよび形而上学の学びと出会い、以降、スクールの拡大に全精力を傾け、2017年に最高峰の魔術師である「イプシスマス」の称号を得る。形而上学をわかりやすく、ユーモアを交え伝えるクラスは、国や文化を問わず常に笑いと活気に満ちている。著書『支配者(エリート)が独占してきた成功の秘笈』『MAX瞑想システム™️ー脳を鍛え可能性を引き出す究極の成功メソッドー』
谷村典子
作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員
成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。Atelier ADITI主宰。http://atelier-aditi.jp/
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