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ぼくの基盤 #5「母親との電話」 |小説 ユニバーサル・カバラの物語 第二章

スレンダーな恋人はすこぶるご機嫌が良い。ぼくが二人の女と別れたから、自分が選ばれたと思っている。ぼくは恋人とは夜に会うことに決めている。ところが昼間に恋人は電話をかけてくる。

「あなたの家の近くまで来ているの。ちょっと寄ってもいいかしら?」

ぼくの声が尖る。

「ぼくはこの家には人を入れない。外で会おう」

女の声のトーンはみるみる下がる。

「そろそろお互いの生活を知っておいたほうがいいと思うの」

「どうして?」

「私たちは関係を前に進めるべきなのよ」

恋人はすっかり不機嫌になる。


ぼくはとつぜん結論を突きつけられる。結婚するかしないか、決めなければならない。考えあぐねたぼくは受話器を取り上げる。この国に来てから初めて国際電話をかける。オペレーターを名乗る女性が、ぼくが告げる番号に電話をかける。やがて受話器の向こうからしわがれた母親の声がする。

「高い金を払って、わざわざどうしたの」

「聞きたいことがあるんだ。あなたはなぜ結婚したの?」

「唐突に何を言い出すやら。結婚でもするのかい」

「あなたは2回も結婚しているだろう。どうしてさ」

「どうだっていいじゃない」

「じゃあさ、なぜ離婚したの?」

「こっちは忙しいのよ。お金がないからお祝いは送らないよ」

母親はいつものように一方的に電話を切る。ぼくが小学校に入る前に両親は離婚した。母親に恋人ができたからだという噂を聞いたことがある。ぼくは父親からも母親から理由を説明されたことがない。


ぼくはスレンダーな恋人を食事に誘う。極上のシャンパンの栓が抜かれると、硬かった恋人の顔がようやくほぐれる。ぼくはホッとする。

「機嫌が直ってくれてよかったよ」

「あれから考えたんだけど、私たち友達としてやり直したほうが良いんじゃない?」

ぼくはとっさに言う。

「そうだね、ぼくもそう思うよ」

「しばらく恋愛は懲り懲り。それよりも会計士を目指すことにしたわ。資格が取れたら仕事をまわしてよね」

「取れたらね」

ぼくらはグラスを合わせて新しい関係に乾杯する。アルコールがなくてもぼくの心臓はバクバクする。うまく笑おうとするけれど、口角が引きつったように上がらない。ぼくはシャンパンを飲み干す恋人の口元をただ見つめている。


ぼくは三人いた恋人を一気に失った。少し前までこの世の春を謳歌していたぼくはどこへ消えたのだろう。ぼくはスポーツカーを走らせる。家に帰りたくなくて、山へ向かう。やがて街灯がなくなり山道に入る。ぼくは自由気ままにスポーツカーを走らせる。曲がりくねった山道を走る。どれぐらい走っただろう。ぼくは急に眠気に襲われる。ヘッドライトが道路の横にある空き地を照らす。ぼくはブレーキを踏み、ハンドルをきる。ガツンという衝撃音がする。ぼくは意識を失う。

→ …続きを読む(ぼくの基盤 6「魔女がつどう家」)

前回の話はこちら。

​誰も読んだことのない、誰も書いたことのない、本当の成功の物語。
「ユニバーサル・カバラの物語」
秘密はここに。

制作
グッドニー ・グドナソン
中込英人
谷村典子

グッドニー ・グドナソン

モダンミステリースクールファウンダー
リネージホルダー メインイプシスマス

アイスランドの貴族の家系に生まれ、生まれてすぐに双子の兄を亡くす。以来兄の存在を通し、目に見えない世界とこちらの世界を同時に生きるようになる。 10代で英国のミステリースクールに招聘され、カバラ、ヘルメス学、古代エジプトやケルト、ドルイドマジックなどあらゆる魔術と形而上学を学び、最高位の魔術師となる。1997年にモダンミステリースクールを継承(当時はロッキーマウンテンミステリースクールの名称)。「No More Secret」の下、それまで秘密にされてきた真の形而上学の教えをオープンにする。現在は世界60カ国に広がるミステリースクールで教える一方で、DJとしてフジロックのステージに立ったり、ハリウッドの映画祭でプロデューサーとして活動するなど、多方面で活躍。まるでファンタジー映画や物語のようなその生き様を通し、あらゆる可能性と喜びを表現し続けている。オーロラエンタテイメント・エグゼクティブプロデューサー。
中込英人

モダンミステリースクール校長
リネージホルダー サードオーダーイプシスマス

世界中で形而上学を教え伝えるメタフィジックス・ティーチャー。幼少期より空手の天才少年と称され、大山倍達氏のもとで内弟子として研鑽を積んだ武道家でもあり、15歳で渡米した後、飲食店経営などで成功を収める。また、武道の実力を買われ、ダライ・ラマ14世のボディガードを担当。ダライ・ラマ14世から「スピリチュアルな道を人に説くもの」と称されたことをきっかけに、密教の学びを始める。密教行者として厳しい修行を積んだのち、30代で一時帰国。ミステリースクールおよび形而上学の学びと出会い、以降、スクールの拡大に全精力を傾け、2017年に最高峰の魔術師である「イプシスマス」の称号を得る。形而上学をわかりやすく、ユーモアを交え伝えるクラスは、国や文化を問わず常に笑いと活気に満ちている。著書『支配者(エリート)が独占してきた成功の秘笈』『MAX瞑想システム™️ー脳を鍛え可能性を引き出す究極の成功メソッドー』

谷村典子

作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員

成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。Atelier ADITI主宰。http://atelier-aditi.jp/

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