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大江健三郎と沖縄の往還

内省の時代と共鳴

 1960年前後に生まれた筆者のような世代にとって、大江健三郎は少し頼りない神様のような存在だった。全共闘世代や団塊の連中とは違って、強引に他者を巻き込む暑苦しさはない。青白く、はかなげだが社会で起きる問題を自分自身に引き付けて考える誠実な姿勢が神々しく見えた。

 ただ一連の著作は言い回しが何とも難解で、何度読んでも頭に入ってこない。

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