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音楽に会いに行く#1

「コンサートに行く」ことの周りにスポットを当てたエッセイです。何を着ていこう、ついでにあのお店にも寄ってみようかな、等々、コンサートに行くには、他にも楽しみがたくさん。初回は、初めてコンサートに行く女性のショートストーリー。前・後編、2回に分けてお届けします。


今日はオーケストラのコンサートに行く。

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2ヶ月前に買ったチケット、

1階12列20番。

私の席。


私が予約して、私がお金を払ったのだから当たり前なのだけど、
私のために用意された席が、誰にも座られる事なく、そこで私を待っていてくれるような感じがして、なんだか嬉しくなる。


オーケストラのコンサートなんて、小学校の体育館に出張演奏で来てくれたのを聞いて以来、何十年ぶりだろう。

あの時あまりの迫力に圧倒されたけど、自分でコンサートに行けるわけもなく、ただ過ぎゆく毎日に、音楽への気持ちは置いてきてしまった。

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去年の6月頃。
春からずっと家に一人、毎日パソコンとしか会話せず、友達とのやりとりも少なくなっていた。
実家にも帰れないし、遊びにも行けない。

大変な人や、辛い人、私の見えない所ではそういう人がたくさんいて、だから私も自粛生活を頑張らなきゃいけない。
頭では分かってるけど、ちょっと辛い。

何もない日々。
いいことも悪いことも、何もない。
感情の針は真ん中のゼロで止まったまま。


YouTubeのおすすめ動画にそれは突然現れた。

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人の良さそうなおじさまを中心に、楽器を持った人達の小さな枠が囲んでいる。

新日本フィルの「さんぽ」?

なんだろうと思いながら見ると、あのさんぽだった。
映画となりのトトロの主題歌「さんぽ」。
子ども向けの歌というくらいのイメージしか無かったのに。

楽器をもった人達。
次々に出てくる普通の人達が、なんだかすごそうな演奏で、さんぽを演奏していく。
豪華で煌びやかだったり、可愛らしかったり、力強かったり。
あの「さんぽ」が、この人達によって様々な音楽に変化していく。

オーケストラだ。

これ、小学生の時にめちゃくちゃ感動したやつじゃん。

小学校の記憶が質感を伴って一気によみがえり、そこからの、はたから見れば平凡な、けれど当事者からしたら色々あった人生が、一気に押し寄せてきた。

気付いたら、圧倒されていた。
子ども向けのただただ楽しい曲だと思ってたのに。

音楽はきっと聴く側の精神状態によって、全く違って聴こえるものだろう。
この数ヶ月、全く動いていなかった私の心が、新日本フィルの演奏にぐわんぐわん揺さぶられた。

動画が終わったあと、私は、この人達の生の演奏を聴きに行きたくなった。
音楽に、そしてこの人達に会いに行きたくなったのだ。

そこで私は一体どんな気持ちになるんだろう。

新しい私にも会えるといいな。

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(絵、文・腰野真那)


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腰野真那
群馬県出身。武蔵野音楽大学卒業。桐朋オーケストラ・アカデミー研修課程修了。2016年新日本フィルハーモニー交響楽団に打楽器奏者として入団。
これまで打楽器を久保昌一、関谷直子、坂本雄希、故・塚田吉幸、堀川正彦、松倉利之、宮崎泰二郎の各氏に師事。室内楽を中谷孝哉、吉原すみれの各氏に師事。現在オーケストラでの演奏を中心に、吹奏楽や室内楽、ソロでの演奏や後進の指導、司会者やライターとしても活動している。
好きな食べ物はチーズとラーメンとフィナンシェ。趣味はNHKの連続テレビ小説鑑賞。
Twitter:@ManaKoshino

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