見出し画像

米農家は儲からない?そんなこと言わせない!有機米の可能性と私たちの想い

こんにちは!有機米の生産支援や集荷・販売に取り組む「有機米デザイン」米穀販売チームの新米、くにです。

僕は秋田県、わんぱく相撲の出身で、小さいころからご飯をたくさん食べ、大きく育ててもらいました。

お米を当たり前のように食べる環境で育ったものですから、よく言われる「米離れ」のような風潮には、正直実感が湧きません。有機米デザインでも、生産者の皆様からのご厚意でいただくお米をたくさん食べさせてもらっているので、なおさらです(生産者の皆様、いつもありがとうございます!)。

ただ、米離れという現象は実際には深刻で、農業系のニュースなどを見ていると「米農家は儲からない」という話をよく聞きます。実際、僕の実家でも「割に合わない」ということで、かなり前に田んぼをつぶしました。今は薪ストーブに使う薪置き場と犬の遊び場になっています。

「これから日本のお米が食べられなくなる日が来るのだろうか」

有機米デザインに入るまで、僕はそんなことを漠然と考えていたのでした。

有機米市場の可能性

新潟の圃場から八海山を望む

そんな僕が、有機米デザインに入ってから知ったのが有機米の存在です。

そう。わたくし、恥ずかしながら、これまで有機米の存在を知りませんでした。社名に有機米が使われている会社に入るのに…

「有機ってことは農薬使ってないのかな?健康にいいお米ってこと?」みたいな感じでした。

そんな僕が先輩から有機米、ひいては日本の農業に対する熱い想いを語られることになるのです。そして、有機米の存在とともに僕が知ることになったのは、有機米市場の可能性についてでした。

▼有機米の定義についてはこちらの記事をご覧ください▼

データから見える有機米の需要の高さ

まず第一に衝撃を受けたのは、有機米の需要の高さです。

有機米、実はめちゃくちゃ需要あるんです。

根拠は何か。まず、農林水産省が出している「有機農業をめぐる事情」という資料を参考にします。

農林水産省「有機農業をめぐる事情(令和4年7月)」より

この資料には、農水省が行った消費者アンケート調査の結果が記載されているのですが、これによると有機食品の購入状況において、「週に1回以上有機食品を利用」している人は全体の17.5%で、このうち、「ほとんどすべて「有機」を購入している」人の割合は9.6%に上るそうです。

つまり、

17.5%×9.6%=1.68%

この数字が、「自分が食べる食材はほとんど全て有機にしている」という人が全体に占める割合になります。

「ほとんどすべて有機」を購入している人が、「お米だけ有機ではない」ということは考えにくい。

このように考えて、この1.68%をお米全体の需要に掛け算すれば、「有機米の需要」が見えてくるはずです。

お米の需要量については、これまた農水省から「米穀の需給および価格の安定に関する基本指針」という資料が毎年出ており、ここに主食用米の「需要実績」というデータが記載されています。

先ほどの消費者アンケートのデータが2017年時点のものなので、2017年の需要実績である754万トンを使って計算してみます。

754万トン×1.68%=12.67万トン(端数切り上げ)

この約12.7万トンが、有機米の需要量ということが試算できます。

では、この需要に対して、有機米はどれぐらい生産されているのでしょうか?

高い需要に対して、有機米の生産はごくわずか

有機米の生産量を知るためには、農水省の「有機農産物等の格付け実績」という資料を使います。

この格付け実績が何かということについて、同資料には

「有機食品の検査認証制度に基づき、登録認証機関から認証を受けた事業者が格付または格付の表示を行った有機農産物、有機加工食品、有機飼料及び有機畜産物の平成29年度における実績として報告された数値」

とややこしいことが書かれていますが、「有機JAS認証を受けた農産物の出荷量」という風に解釈できるのかなと思います。

需要量が2017年時点のデータを使って試算したものなので、この資料の2017年版を覗いてみます。

すると、「米」の格付け実績は9695トンと書かれています。

農水省「平成29年度認証事業者に係る格付け実績」より抜粋

つまり、有機米は12.7万トンの需要に対して、約1万トンしか生産されていないということになるのです。

しかも、有機米の需要を試算する際に使った資料は、2017年時点のもの。世界的に有機農産物市場は拡大しており、日本国内でも健康や食への意識の高まりによって消費者ニーズは高まり続けていると考えられます。

さらに、国としても「みどりの食料システム戦略」を掲げ、「耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%、100万haに拡大」するための取り組みを推進しています。

滔々と語る先輩の話を聞き、僕は感動したのです。

「有機米、めちゃくちゃ可能性あるねが」(心の声なのでなまってます)

有機米の単価の高さ

有機米市場には圧倒的な需要過多が存在していることが分かったのですが、僕が受けた衝撃はそれだけにとどまりません。

第二の衝撃。それは、有機米の単価の高さです。

またしても登場するのは、農水省の例の資料(有機農業をめぐる事情)です。この中に、「有機栽培と慣行栽培の経営比較」というデータがあります。

農水省「有機農業をめぐる事情(令和2年2月)」より抜粋

このデータによると、有機米の単価は慣行栽培の約2.3倍。さらに、10a当たりの所得は約3.1倍に達します。

有機栽培と聞くと、なんとなく普通のものより高いイメージはあったのですが、実際に数字として可視化されると、「有機米と普通のお米でこんなに違うんだ」と衝撃を受けました。

需要もあり、単価も高い有機米。この道なら、米農家さんの収入が上がり、私も米農家になる!という若者も増えるかもしれない。

僕は一人、高揚していたのでした。

有機米栽培を取り巻く課題解決へ

「毎年、年が明けると憂鬱でね。今年も有機やるのかって。喜んでもらえるからやるけどね」

生産者さんがポツリと漏らした言葉にハッとしたのは、1月の中頃でした。

僕がいくら有機米は需要がすごいんだ、有機米の単価は高いんだと興奮していても、実際に生産をするわけではない。

田をならして苗を育て、雑草と戦いながら収穫に至るまでの苦労を、何も知らなかったことに気がつきました。

実際、上記のデータでも、有機米の10a当たりの労働時間は慣行栽培よりも長く、その中でも特に除草作業にかかる時間が大幅に増加していることが示されています。

さらに、生産はうまくいったとしても、販路の開拓が大きな壁として立ちはだかることもあるはずです。

いくらデータを紐解いて市場の可能性を訴えても、有機米の生産を取り巻く課題を解決できないことには、有機米市場の成長も、「儲かる農業」の構築も、全て机上の空論となってしまう。

そんなことではいけないーー。有機米の可能性を信じ、その課題の解決に全力だったのが、有機米デザインの先輩たちでした。

除草作業を楽にするアイガモロボ

水田をにごらせるアイガモロボ

「まず、有機米の栽培においてネックとなっている除草作業を支援し、生産の省力化を図ることが必要だ」

こうした考えから、有機米デザインが長年をかけて研究・開発したのが「アイガモロボ」です。

アイガモロボは「水に浮かべる自動抑草ロボット」で、ロボットに取り付けられたスクリューによって田んぼ全体を濁らせ、太陽光を遮ることで雑草が光合成しにくい圃場環境を作ります。搭載されたソーラーパネルから給電し、スマートフォンのアプリであらかじめ設定したルートに沿って自動で走行します。

アイガモロボの開発にはまた別のストーリーがあるのですが、これはまた次の機会に紹介させてください。とにかく、有機米デザインはテクノロジーの力で有機米農家さんの生産効率化をお手伝いしたいと考えているのです。

※アイガモロボの販売は、井関農機さんが行っています。ご興味のある方は、ぜひ特設サイトを覗いてみてください。

▼アイガモロボ特設サイト
https://aigamo.iseki.co.jp/?utm_source=website&utm_medium=Amoni_Banner&utm_campaign=inside_article&utm_id=amoni-001

全国の産地から有機米の買取を推進

ありがたいことに、「有機米デザインといえばアイガモロボ」といったお声をよくいただきます。

しかし、アイガモロボで有機米の生産を効率化しても、適正価格での取引が継続的に行われなければ、有機米市場の拡大はありません。

こうした想いのもと、有機米デザインが力を入れているもう一つの取り組みが、有機米の集荷・販売です。

これは、地域のJAや農業団体、企業などと連携しながら、有機米(またはそれに準ずる栽培での米)の適正価格での買取を進める取り組みです。

ご連絡をいただければ、有機米デザインの営業マンが全国どこの産地にでも伺います。僕も同行することが多いので、この記事を読んでいただいた皆様にお会いできる日が来ることを楽しみにしています。

なお、お問い合わせの際は簡単なフォームに記入していただいています。お手数ですが、下記フォームからお問い合わせいただけると嬉しいです。

▼お問合せフォーム
https://forms.gle/k9Z2RhPEHdZ4AEB46

まとめ

米農家さんは、「命」を支える人たちなのだと僕は思います。

そして、有機米デザインがミッションとして掲げる有機米の生産支援と集荷・販売の取り組みは、日本の米生産の持続可能性に寄与していくものと強く信じています。

この記事をここまで読んでくださった熱い農業者の皆様、ぜひ一緒に日本の農業を盛り上げていきましょう!

有機米デザイン・米穀販売チームのnoteでは、今後も「生産者のためになるコンテンツ」を目指し発信していきます。もしよければ、「いいね」や「フォロー」で応援をよろしくお願いします!

この記事を書いた人
くに:秋田県、わんぱく相撲出身。美味しいご飯と納豆、豆腐とわかめの味噌汁があれば幸せ。体は大きいが胃腸は弱い。

▼有機米デザイン株式会社HP
https://www.ymd1122.com/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?