Cross Talk for "DOOM" / 家主"DOOM"を大いに語る -アルバム製作陣による座談会- 後編

1stアルバム『生活の礎』のリリースから二年、四人組ロックバンド・家主による2ndアルバム『DOOM』が12/8にリリースされました。今作のリリースを記念して、11月某日『DOOM』に関わった製作陣が集まり本作品について大いに語り合ったその模様をお届けします。『DOOM』と併せて楽しんでいただけたら幸いです。(文/編集:須藤朋寿)

<前編はこちら>
https://note.com/newfolk_jp/n/ne646a5c2461a


ほぼほぼパワーコードなのにあんな不思議な曲を作れるっていうのはスゴいなと思います

須藤朋寿(NEWFOLK/以下、須藤) そういえば皆さんはレコーディング期間中、他にしていたこととか、気に入って聴いていた音楽とかってありましたか?

田中ヤコブ(Vo&Gt/以下、ヤコブ) えっと…(日記を見返しながら)録音機材を新調しましたね。あとは新しいバイクを買ったので、ちょいちょい出掛けたり。でもやっぱり、曲のアレンジ作業や練習、録音に時間を割いてました。

岡本成央(Dr/以下、岡本) 僕は仕事して、終わったらスタジオに行っての毎日でした。家主のデモばっかり聴いてたかも。

飯塚晃弘(エンジニア/以下、飯塚) 俺は家を追われましたね(笑)

ヤコブ ありましたね、その時期(笑)

谷江俊岳(Vo&Gt/以下、谷江) 音楽でいうと後輩にYumi Zoumaを教えてもらって、いいじゃん!と思いました。

飯塚 私はCar Seat Headrestをよく聴いてました。

田中悠平(Vo&Ba/以下、悠平) レコーディング中ではないですけど、SACOYANSの2nd(『Gasoline Rainbow』)がめちゃくちゃ良かったですね。

ヤコブ SACOYANはボーカルも超カッコイイですよね。1st(『Yomosue』)の曲を聴いていても、ほぼほぼパワーコードなのにあんな不思議な曲を作れるっていうのはスゴいなと思います。

悠平 天才だよね。

ヤコブ あと、個人的にはローリング・ストーンズを今年に入ってから初めてちゃんと聴きまして。『Some Girls』というアルバムに入っている「Beast of Burden」という曲が、メロディアスで凄くいいなと思ったんですが、NRBQが恐らくオマージュしてるんですよね、この曲。他には、Ben Sadockというシンガーソングライターを特に聴いてましたね。この人はアルバム1枚しか出してないんですけど。

岡本 今思い出したんですけど、今年は本日休演の『MOOD』と『LIVE 2015-2019』には喰らいましたよ!自分には出来ないことをやってるな、カッコイイなと。

ヤコブ 確かに!中村さんのサウンドメイクが凄くハマってますよね。「Hey Baby Love」とか「天使の沈黙」が特に好きでした。

須藤 おー!ありがたい限りです!大変でしたけど、そう言ってもらえると嬉しいです。

ヤコブ それで言うと(“DOOM ZINE”に掲載されている)企画でも選曲したんですけど、HiGE(髭)っていうバンドをウワノソラの角谷さんに教えてもらったんです。角谷さんは本日休演が大好きなんですけど”彼らの曲はHiGEに通ずる部分がある”と仰っていて。聴いてみたら凄く良いなと思ったと共に、角谷さんが言っていることもちょっと分かるなと思いました。HiGEはそれからよく聴いています。

もはやバンドとも思っていない感じはありますけどね(笑)

<ここからリモートでマスタリングエンジニア・風間萌さん(studio Chatri)が参加>

須藤 では続きまして、マスタリングを手がけてくれた風間さんにお話を伺ってみようと思います!

風間萌(以下、風間) 喋ることないですよ(笑)

須藤 そう言わずに(笑)家主としては前作のLP版マスタリングを手がけていただいて、その後はヤコブ君のソロ作でもお付き合いいただいて、既にもう勝手知ったる間柄ではあると思います。そんな風間さんから見て「家主」ってどんなバンドに映ってますかね?

風間 はい。先日、ヤコブさんと田中(悠平)さんとはNintendo 64も一緒にやらせて頂いたりもしたんですが…

一同(笑)

風間 皆さんは、結構貴重な立ち位置にいてくださっていると思っていて。”リセットボタンを押してくれる存在”、というような感じでしょうか。

須藤 その心は?

風間 “リセット”っていうのは、経験値はそのままで心をあらたにみたいな意味合いでして、そういう気持ちにさせてくれるバンドですかね。初心に立ち返らせてくれるというか。

須藤 (バンドとして)現状に胡座をかかない、変わらず誠実でいる、みたいな意識ですかね?

風間 誠実さっていうよりは、等身大でそうなんだろうなと思います、ごく自然に。
因みに、皆さん自身は「家主」をどういうバンドだと思っているんですか?

ヤコブ もはやバンドとも思っていない感じはありますけどね(笑)

岡本 確かにね。

ヤコブ "我々はバンドだ"って意識あります?皆さんは。

悠平 遊びに近いかな(笑)いい意味でね!

谷江 そもそも俺が家主に入れてくれってお願いした時には、こんなにちゃんと活動すると思っていなかったんですから。土日に遊んでくれる後輩たち、みたいな感じでいて。

一同(笑)

ヤコブ 俺も休みの日に谷江さんの家にメシを食いに行く、みたいな感覚が強いですよ。スタジオ入った後に皆んなで飯食って、家に帰る時には練習したことすら忘れてますもん。

須藤 風間さんが言ってくれたように等身大でそうなんでしょうね(笑)

ヤコブ その辺の人たちが言ってる”等身大”と言われるものとはレベルが違う可能性が…

一同(笑)

自分の中にあった価値観を変えるくらいの処理をしました

須藤 では、風間さんを交えながらアルバム制作において最後の仕上げの工程と言えるマスタリングの部分についてお話ししていけたらなと。マスタリングに関して言うと、自分の担当してきた作品史上最長の期間を要しましたが…

風間 私のマスタリング人生史上においても最多の修正を行いました(笑)

須藤 ですよね(笑)

岡本 マスタリングって一般的にはこんなに何度もやらないですよね。

須藤 ただ、マスタリングの部分については作曲や作詞、演奏や歌唱、そして録音やミックスに比べてあまり語られないことが多いと思うんです。なので今回はマスタリングについても、少し踏み込んで話を伺えたらと思います。まず、今作のマスタリングで気を遣った部分や工夫した点はありましたか?

風間 まず、一番最初の曲が「近づく」じゃないですか?それもあってローエンドの処理は、自分の中にあった価値観を変えるくらいの処理をしました。マスタリングするにあたって参考にしたものも、ビッグバンドジャズとかで。

一同 おー!

風間 古いビッグバンドの音源で、バスドラムの音が出てるところでホーンが引いて、バスドラムが引いたところでホーンが出て音が埋まる、みたいな音像があるんですけど、「近づく」はそれをギターでやっているように感じられたんです。私なりにリズム感を担保しながらも、曲としてのグルーヴ感を出すみたいなところには注力しましたね。

岡本 めちゃくちゃ面白い話!

風間 私がプリマスタリング(メンバー立ち合いの前の仮マスタリング)の段階で頭を抱えていたのを、飯塚くんが見ていたっていう。

飯塚 主にシンバルの音ですよね!

風間 お話をいただいた当初は前作や、ヤコブさんのソロ作を聴きながら出来上がりの音をイメージしていたんですけど、飯塚くんに「ヤコブさんが1stは忘れてくれって言ってました」と伝えられて。

ヤコブ その言葉めっちゃ一人歩きしてますね(笑)

風間 それを受けて、それなら直感を信じて、素直にやった方が良いかもな、と思って。

須藤 前作を踏襲する、みたいな感覚は忘れて臨もうってことですよね?

風間 はい。無になろうと。

須藤 飯塚さんはやっぱり「近づく」については、マスタリングするの大変だろうなという自覚はありましたか?

飯塚 あり、、、ましたね!

一同(笑)

須藤 全体的にずーっと音が鳴ってますもんね。音の密度が高いというか。沢山ギターが入っていて、それでいてドラムの音、特にシンバルが持続する音になっているのでほとんど曲に隙間がないっていう。

風間 それでも「隙間が欲しいんですよ!」って飯塚くんが言うんです!

飯塚(笑)

ヤコブ 元を正すと俺が原因なんですけどね(笑)

今作を聴いて”なんか違うな”って思う人がいても全然良いと思います

谷江 でも、本来音数は足していけばいくほど、それぞれの音が聴こえにくくなっていきますよね?

須藤 そうですね。(流通/配信する)音源にするにあたって音量や音圧には制限があるので、この楽器を立てると別の楽器には少し下がってもらう、みたいな調整がどうしても必要になりますから。でも今作は、その辺りも本当に時間をかけて丁寧に調整してもらえたという印象を受けました。
因みにヤコブ君はマスタリングも最後まで立ち会い続けてくれていたけど、マスタリングを経て特に良くなったという印象が強い曲ってありますか?

ヤコブ 「近づく」は印象深いですね。ミックスの段階から相当追い込んだというか、詰め込んだ曲ではあったんですが、マスタリングを通した時に音が面でガツンと来ながらも、各楽器の音の住み分けがしっかりなされているなと思って。ギターの音が凄く良く聞こえてきたことが印象的でした。ギターを沢山入れることには、正直怖さもあって。本当は全部の音が良く聴こえてきて欲しいくらいなんですけど、何本もギターを入れてしまうことで各々の良さを打ち消しかねないっていう。そこはミックスとマスタリングで最終的に、良くまとめていただいたと思っています。

須藤 ちょっとしたギターでも美味しいフレーズを沢山弾いてますもんね。

ヤコブ はい。あとは「The Flutter」もそうですね。この曲は何度かマスタリングをしてもらった後に、結局またミックスに戻って、ミックスの修正をした上で改めてマスタリングをするっていう工程を経ていて…少し考えれば当たり前のことではあるんですけど、レコーディングやミックス段階で曲の設計図が間違っていると、マスタリングの工程だけでは望んでいた完成形に近づけることは難しいんだな、ということもこの曲で痛感しました。飯塚さんも風間さんも、細かい修正に対しても丁寧に対応してくれたことで、最終的にはとても満足のいく仕上がりになりました。

須藤 「老年の幻想」と「The Flutter」は最後の最後で、大きく修正しましたよね。

ヤコブ 粘りましたね。そもそもこんなことって、飯塚さんと風間さんじゃなかったら出来なかったことですよね。

須藤 そうだと思います。マスタリングされて一度出来上がった音源を聴いた上で、更に気になる箇所の修正を重ねていって、場合によってはミックスの段階まで戻って修正していくというプロセスを踏めたことは、本当に意義があったなと思っていて。ミックスとマスタリングという工程の相互関係や役割みたいなものに対しての意識も変わったというか、今回改めて実感しましたよね。

ヤコブ 順番を間違えてはダメというか、きちんとステップを踏んでいくことで最終的に良い作品が完成するっていうことですよね。それはもっと根本的な話でいうと、良い曲を作って、良い演奏をして、良い録音をして、良いミックスをしないと、良いマスタリングは出来ないというか。ソロの作品もまた然りで、飯塚さんと風間さんとご一緒する中でそれは凄く痛感しました。

風間 ここまで時間をかけると、スケジュールの調整も大変でしたよね?

須藤 まあ、それなりには(笑)

風間 これだけしっかり時間をかけて、皆さんが言いたいことを言い合って進めていくことってかなり苦労もあったと思うんですが、結果的に出来上がりに満足してもらえたなら本当に良かったです。

須藤 おかげさまで細部にまで納得がいくまでこだわることができたと思います。

ヤコブ やっと出来上がったなという感じですよね。気になる部分は凄く細かいところまで調整することができたので。

須藤 だけど、こだわり甲斐のある作品だったと思いますよ。

ヤコブ 皆んなで沼にはまりましたもんね(笑)

岡本 偏執的にね。ズブズブと。

須藤 『Loveless』制作時のマイブラの気持ちがちょっとわかった気がしますもん(笑)

風間 私も”今はこれ以上何もやることはない”って思いましたよ。やりきれたなと思います。

一同 おー!

須藤 達成感ありますよね。

谷江 ありがたい限りです。

須藤 では最後に、マスタリングを終えてみて手応えはどうですか?

風間 ”黙って聴いてくれ”って感じです(笑)どういう風に聴いてもらっても、聴き応えのある作品になったと思います!

須藤 因みに飯塚さんに聞きたいんですが、かなり攻めたミックスだったと思うんですけど、それを風間さんに送った時の心境ってどんな感じだったんですか?

飯塚 全体的に“変なバランスでしょ!”ってニヤついてました(笑)

風間 うわー感じ悪い(笑)

ヤコブ でも、このアルバムは結果的に聴いてくれる人たちから賛否両論あるような作品になったんじゃないかなと思いました。

飯塚 エンジニア的にもそれは思いますね。

岡本 単なる”酒のアテ”みたいに消費されたくはないですよね。

ヤコブ 今作を聴いて”なんか違うな”って思う人がいても全然良いと思います。

須藤 聴き流して欲しくない作品になりましたよね。聴いた後、しっかり重さを感じて欲しいですね。風間さん、どうもありがとうございました!

——

色んな人が力を尽くしてくれてこのアルバムが作れたんだなと思いました

須藤 皆さん、今日はお疲れ様でした!改めて関わってくれた方々のお話を聞いてみて、気がつくこととかもあったと思うんですが…

悠平 自分たちは一部分を担っただけというか、色んな人が力を尽くしてくれてこのアルバムが作れたんだなと思いました。

須藤 では最後に、この作品を携えて来年からリリースツアーを回っていくことが決まりました。そこでは『DOOM』に入っている新曲も演奏すると思うんですが、その点でいま苦労していることってありますか?

ヤコブ そうですね。まあ…今のところまだライブで「近づく」やってないんで。

一同(笑)

岡本 全部これからだよね!

谷江 「近づく」も「たんぽぽ」もやってないからな!

ヤコブ 言うて、この間「たんぽぽ」をリハスタでちょっと合わせた時はいけてましたけど…

悠平 いけてないよ(笑)

須藤 まあ、ツアーまではもう少し準備する時間はありますから。

ヤコブ そうですね。それまでにライブ用のアレンジをしっかり練って、仕上げていけたらなと。

岡本 ツアーを回っていく中でどんどん仕上がっていくと思います!

須藤 前作のツアーは途中でコロナ禍に突入した影響で何箇所か中止になっちゃいましたからね。その分も今回はなんとか無事に、いろんなところへ行けたら良いですね。

ヤコブ はい。楽しんでライブ出来たらいいですね!

[家主”DOOM” Release Tour 2022]

-大阪公演- <One Man>
2022/2/19(土) at 心斎橋 ANIMA

-静岡公演-
2022/2/20(日) at 静岡 Freakyshow
Support Act:henpiano

-岡山公演-
2022/3/5(土) at 岡山 PEPPER LAND
Support Act:マドベ

-名古屋公演- <One Man>
2022/3/6(日) at 今池 得三

-青森公演-
2022/3/19(土) at 青森 SUBLIME

-仙台公演-
2022/3/20(日) at 仙台 FLYING SON

-東京公演- <One Man>
2022/4/3(日) at 渋谷 WWW X

-松本公演-
2022/4/9(土) at 松本 MOLE HALL
Support Act:コスモス鉄道,TANGINGUGUN

-札幌公演- <特別編>
2022/4/16(土) at 札幌 SPiCE
Guest:台風クラブ

-京都公演- <特別編>
2022/4/29(金・祝) at 京都 磔磔
Guest:台風クラブ

And More !


おまけ

YANUSHI's Selection (完全版) 

無償冊子"DOOM ZINE"掲載のメンバーによる選盤/選曲企画、ページ数の都合もあり掲載出来なかったものもありました…ここでは残念ながら掲載出来なかったテーマも含めてご紹介します。

《田中ヤコブ 選》
・暖かくなったら聴きたい1曲
George Harrison / Blow Away
中3に上がる前の春休みだったと思います。部屋で惰眠を貪りながら親が録画した映画かドラマのVHSを見るでもなく垂れ流していると映像の途中でなんの脈絡もなくこの曲のMVが流れ始め、楽しげだけどどこか影のある何とも美しいメロディに陶酔し、力の抜けた映像も相まってしみじみと春らしさを感じながらまどろんでいました。ちょうど野球部を辞めて暇すぎてギターを始めた時期で、「リンダリンダ」で覚えたDのコードから始まる曲だったので見よう見まねで弾き語りに挑戦したりしました。この体験はジョージをジョージとして意識するキッカケになりました。

・アルバム制作中によく聴いていた1曲
Kaede(Negicco) / サイクルズ
アルバム制作中は自分のことで手一杯で他所様の作品をゆっくり鑑賞する時間と余裕は正直なかったです。ソロワークの曲を『DOOM』と並行して作っていたので、主に自身の作品を聴いてはミックスを修正するという作業を繰り返していました。特にNegicco Kaedeさんへの楽曲提供については家主チームの負担を増やしたくないという思いと、リハスタサウンドfeat.アイドル、というある種スカムな試みにトライしたかったので録音〜ミックスを1人で追い込んだ夏でした。

・アルバム制作にあたって最も影響を受けた1曲
カーネーション / 幻想列車
制作にあたってどういった音像にしたいかということを曲ごとに参考音源を挙げて打ち合わせしたのですが、私の幾つかの曲に関しては「幻想列車」という曲のような音像を狙おうと思い聴き込んでいました。『DOOM』のレコーディング直前にカーネーションのライブにゲストギターとして呼んでいただいたことをキッカケに直枝さんから直接当時の録音についてもお伺いすることが出来ました。そのライブの一曲目が偶然にも「幻想列車」だったことは忘れられない思い出です。

・"DOOM"な時に聴きたい1枚
DAMAGEPLAN / NEW FOUND POWER
“DOOM”にも色々ありまして特にストレスフルな状況、特に登下校や出社時の満員電車などで聴いていました。暴力は決していけませんが到底許せない屈辱的な仕打ちを受けることが多々あります。そのときメタルはいつも味方をしてくれます。喜怒哀楽のどれが欠けても人間として不健全です。メタルは怒りと哀しみを肯定し、代弁してくれるものだと思います。コロナ禍に突入し不穏な空気の中でこのアルバムを聴いていて然もありなんと心を入れ替え「NFP」という曲を作りました。

・冬に聴きたい1枚
Beach Boys / Sunflower
ビーチボーイズは冬との親和性が異常に高いです。学生時代のとある豪雪の日、なぜかレコーディングハイになっていた私はわざわざ渋谷のスタジオへ録音に向かいました。自宅から駅へと深い雪にズボズボ足を埋め歩きながらこのアルバムを再生すると、豪雪のシュールな景色やその時の何とも言えないテンションとあまりにマッチしていて思わず立ち止まって聴き入りました。音楽と景色が一瞬で記憶に焼きつく強烈な音楽体験でした。それ以来雪が降るとこのアルバムを聴いています。

・今年出会った最高の1曲
髭(HiGE) / それくらいのこと
『DOOM』のレコーディング用にストラトキャスターが必要になり、ウワノソラというバンドの角谷さんに借りに行ったときのこと。本日休演の話になり、休演ファンだという角谷さんから”彼らのメロディに髭を感じることがある”と「夢でさよなら」という曲を教えてもらったことがキッカケで髭の存在を知りました。今年11月に発売された新作を聴いてみたところ完全にハマり、ネバヤンのサポートで福井を訪れた際には延々とリピートしながら駅周辺を散策しました。美しいメロディとアンサンブルにはどこか小林武史ワークスの雰囲気を感じたのですが、ウワモノの楽器は超シンプルにギターだけ(たぶん)でストリングスとかも無し。まるで宮大工のように無駄なく繊細に組み立てられているところにとても感動しました。今年は自身の制作で音楽が聴けなかったですが年の終盤でこのアタリは嬉しい。他のアルバムの曲もカッコよくて感動したと同時にもっと早く出会っていたら…と思いました。

《谷江俊岳 選》
・家でゆっくり聴きたい1枚
Yo La Tengo / And Then Nothing Turned Itself Inside-Out
土曜の朝が一週間で一番最高だと思っています。そんな時にコレをかけて過ごしたら更に最高ですね。

・オールタイムベストな1枚
The Kinks / この世はすべてショー・ビジネス(Everybody’s in Show-Biz)
高校の時地元の図書館で借りて良く聴いてました。1番好きなアルバムです。The Kinksはなぜかこのアルバムだけ置いてあったと記憶しています。置いてあってよかった。

・冬に聴きたい1曲
The Apples in Stereo / Winter Must Be Cold
凄い好きな曲です。冬によく聴きます。

・アルバム制作中によく聴いていた1枚
Whitney / Light Upon The Lake
凄いカッコいいです。そして心地よいのでずっと聴いてしまいます。

・今年出会った最高の1曲
Erlend Øye / La prima estate
外回り中に入った喫茶店で流れていた名曲。颯爽とShazamに取り込み。ホクホク顔で帰りました。

・アルバム制作にあたって最も影響を受けた1曲
Cheap Trick / Hot love
個人的にこれほど勢いを感じる曲は無いと思っていて、やるぜ!っていう気にさせてくれました。

《田中悠平 選》
・暖かくなったら聴きたい1枚
Primal Scream / Sonic Flower Groove
Primal Screamは1stが好きです。シンプルなコードに重なる歌うようなギターが心地よいです。「Sonic Sister Love」という名曲が春の訪れを感じさせます。この曲のイントロがあらゆるイントロの中でトップクラスに好きです。つぼみが一斉に開花します。

・アルバム制作中によく聴いていた1曲
The Jackson 5 / I Want You Back
ヤコブ先生にどうやったらベースが上手くなるか聞いてみたら〈これとかコピーすればいいんじゃないすか?〉との教えをいただいたので、『DOOM』の曲を練習してる時に息抜き的に弾いてました。こういう有名な曲を弾けるとドヤ顔できて楽しいということが判明しました。

・冬に聴きたい1枚
Teenage Fanclub / Songs From Northern Britain
温かいギターサウンドですが、透明感のある多重コーラスに風の冷たさも感じます。寒い屋外で歩きながら聴くのがいいと思います。でも「I Don't Want Control Of You」のMVを久しぶりに見返してみたらノーマンがバリバリ半袖でした。

・家でゆっくり聴きたい1枚
ザ・フォーク・クルセダーズ / 若い加藤和彦のように
最近よく家で聴いてます。フォークルの曲と加藤さんソロ曲も含めたトリビュート的なアルバムで、基本坂崎幸之助さんが歌ってます。元々の曲の良さはもちろんですが、「花の香りに」などのアレンジもとても良いです。表題曲「若い加藤和彦のように」が切なくも元気をもらえる素晴らしい曲です。北山先生の歌声と歌詞にグッときます。
 
・"DOOM"な時に聴きたい1枚
Judee Sill / Judee Sill
“DOOM”な時には静かな曲しか聴きたくなくなることがあります。この方の歌声は吉田類風に言うと山の湧き水のように澄んでスッと入ってくる感じです。どんな気分の時にも聴けて、心穏やかになれます。

《岡本成央 選》
・暖かくなったら聴きたい1曲
桃井はるこ / つくねちゃんのFlying Machine
インスタント・シトロンの手掛けた超名曲だと思います。基本的にはご機嫌なんですが、ちょっと切ない感じもありますよね。グラッペリっぽいバイオリンが入っていると無条件で好きになってしまいます。曲自体はOVA1巻の特典なので谷江さんに借りましょう。EDの「Luminary」もよい曲です。

・"DOOM"な時に聴きたい1枚
Richard Wright / Wet Dream
ピンク・フロイドの「ズーン…」と沈み込んでいく感じ。そういった部分を担っていたのは割とこの人なんじゃないかなと思います。聴いていると段々目線が下を向いてきて、うずくまって動けなくなってしまうような気分になります。ですが、こういった”DOOM”さに助けられることも多々あります。今までも散々お世話になりました。

・冬に聴きたい1枚
Aimee Mann / Lost In Space
エイミー・マンの作品の中でも暗い印象があります。雪の降っているアルバムジャケットだったなと思って改めて見たら、これは多分星空ですね。でも、寒い時期に天気がいまいちだったりすると聴きたくなります。とりわけ夜がよいと思います。そうしたらマフラーに顔を埋めて駅から家に帰りましょう。

・オールタイムベストな1曲
The Cure / Friday I'm In Love
昔から熱狂的なファン…という訳ではないのでオールタイムかと言われると少々語弊がありますが、年齢を重ねるにつれてどんどん好きなバンドになってきました。特にこの曲のキラキラした感じはすさまじいです。いつ聴いても胸がいっぱいになります。MV見たことありますか。自分の葬式があんな風になったらいいなと思います。

・家でゆっくり聴きたい1枚
Steve Lacy / More Monk
スティーヴ・レイシーがソプラノ一本でモンクの曲を吹いているアルバムです。最後まで一人なので和音が無いんですね。聴いている時は一対一になるような、そんな気がします。吹いている時と吹いていない時、どちらも素晴らしいです。一粒一粒ゆっくりと味わうことができます。


家主 2nd Full Album『DOOM』
2021.12.8 Release / NFD-001
01.近づく
02.NFP
03.にちおわ
04.夏の道路端
05.路地
06.たんぽぽ
07.めざめ
08.飛行塔入口
09.それだけ
10.老年の幻想
11.The Flutter
※CD版封入特典:「"DOOM"レコーディングドキュメンタリー」ダウンロードカード
《CDの購入はこちら》
https://newfolkjp.stores.jp/items/6181ebc31bfe1956bbb62975

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