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だるま山 #3


「はははは。それはお返しじゃ。だるまのお返しじゃよ」

「だるまのお返し?」

「お前が世話しただるまには、よう見たら足が生えていただろう。

あのだるま、おそらくタヌキじゃ。

タヌキがだるまに化けたのじゃ。

最初にやって来ただるまは、きっと森で迷子になった子ダヌキきじゃ。

一人で寂しく、夜になると外は寒い。

まだ小さいから一人で餌も獲れんかったんだろう。

この寺を見つけてたぬきのままでは入れないと思い、玄関先に置いてあった

だるまの置物に化けて、玄関の中に入れてもらい、一晩を過ごそうと考えた

のじゃろう」

驚いたことにタヌキが化けるという噂は本当だったのです 

「だから栗ご飯が好物だったのですね」

「そうじゃんわしもだるまに化けたたぬきは初めて見たが、

この山には化けダヌキがいると知っておったからすぐわかったのじゃよ」

「次の日に来ただるま、いやタヌキは?」

「あれは最初の子ダヌキの家族じゃよ。子ダヌキを探してたのじゃろう。

同じようにだるまに化けて、中に入れてもらおうと考えたんじゃな」

家族を探していたなんて思いもしませんでしたから、

小坊主は二度びっくり。

見事に化けたもんじゃ、と妙に感心してしまいました。

なんだかいいことをした気分になり、小坊主はとても嬉しい気持ちになりま

した。



その夜、小坊主が寝た頃、和尚は本堂にいました。

木魚をポンポンと叩きながら目をつぶっています

「久々に化けダヌキに会えた。懐かしいの。

家族仲良さそうなタヌキで何よりじゃ」



このお話を読んでいる人には、和尚の秘密をこの辺で教えましょう。

実はこの和尚、元はタヌキだったのです。

昔々、この山で家族とはぐれてしもい、家族の元に戻れなくなり、山を彷徨

い歩いていると、ボロボロで誰もいないこの寺を見つけ棲みついたのです。

いつの頃からか、山の下の村人がお参りに来るようになったので、

タヌキは人間の姿など見たこともなかったのですが、残っていた書物を見て

昔ここに住んでいた和尚の姿に化け、過ごしていました。

50年も前の話です。


「もうタヌキの姿に戻る方法は忘れてしまったが、仲間が元気そうで何より

じゃ」

和尚は小さな蒸した栗を一つ口に入れ、美味しそうに頬張りました。


この山にはタヌキがたくさん住んでいます。

みんな心優しい家族思いのタヌキです。

そして化けるのがとても上手です。

小坊主がダルマに化かされたように、もしあなたが山で不思議な生き物に出

会ったら、それはタヌキが化けた姿かもしれませんよ。


おわり

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