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気になる本たち「感性に従え!」

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自分の書評、気になった書評をまとめています。
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#松本清張

『影の車:確証』(松本清張)を読む

『影の車:確証』(松本清張)を読む

大庭章二は妻が浮気をしているのではないかと勘ぐる。相手は章二の同僚だろう。どうにか証拠を掴みたい章二は、自ら性病となりそれを妻に移すことで、妻と同僚の仲をはっきりさせようと夜の街に出かけた。

この異常な手段はなんだろう。妻を問いただしたところで信用できない章二。物語の結末は、浮気の相手は同僚ではなかったのだが、妻に裏切られていたことにはかわりはなかった。

確証を得ることは簡単なことではない、た

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『影の車:鉢植えを買う女』(松本清張)を読む

『影の車:鉢植えを買う女』(松本清張)を読む

精密機器の会社に勤める上原楢江は、女子事務員としてはキャリアの長い独身社員だ。散財することもないどころか、社内の男性に利子をつけて貸していたほどお金に執着していた。男に縁のなかった楢江だったが、ある日社内の男性といい仲になる。しかしその男は、会社の金庫から800万円を盗んでしまう。高跳びする前に楢江の部屋に泊まりに来た時、その事実を知った楢江の取った行動は。

お金しか信用できなくなっている楢江。

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『影の車:典雅な姉弟』(松本清張)を読む

『影の車:典雅な姉弟』(松本清張)を読む

麻布にある姉弟が住んでいた。お公家さんかというくらい高貴な面影を持つ姉弟だったが、この家にはもう一人女性が同居していた。姉弟の間の若くして亡くなった兄弟の妻お染だ。弟には今までも何度か縁談があったが結婚までには至らなかったのには、人には言えないわけがあった。

そんななか、姉が殺されてしまう。犯人は、いつも姉にいじめられてたお染ではないか?

しかし事件は意外な展開を見せる。弟の縁談を邪魔し続ける

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『影の車:薄化粧の男』(松本清張)を読む

『影の車:薄化粧の男』(松本清張)を読む

草村卓三が殺された。50歳を過ぎた彼は妻の他に20代の妾を囲っていたが、彼女にはアリバイがあった。ドケチで口うるさく、あちこちの女を口説いていた卓三は誰に殺されたのか。

20代の彼女には飽きられた。妻には三行半を突きつけられた。二人の女性の利害は一致した。卓三さえいなければ!

婦人公論に掲載されたこの小説を読んだ昭和30年代の女性たちは、どう思ったのだろう?

Shinichi/Miyazak

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『影の車:田舎教師』(松本清張)を読む

『影の車:田舎教師』(松本清張)を読む

良吉は、父親から聞いていた中国山地の山奥にいる親戚を訪ねてみた。親戚の杉山俊郎は医者で、地域の信頼も厚く、田舎ながらに裕福だった。しかし訪ねたその日に俊郎が事故で亡くなったことを知る。生活道路の崖沿いの道から崖下に落下したのだが、どこか腑に落ちない。俊郎はその日、戦前満州で羽振りの良い暮らしをしたものの、戦後無一文で帰省した兄弟の博一の家に診察に行っていたのだ。

終戦を迎え無一文となってしまう弟

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再開で再会した話

再開で再会した話

図書館の再開6月になって、やっと図書館が再開した。

図書館は私の家から徒歩5分の距離にある。そのため、ネットで借りる本を予約しては読む生活が続いていたこともあり、コロナで閉館していた時期は辛かった。

閉館前、図書館に予約していた本は20冊あった。20冊と言っても、人気の本は私の前に予約した人も多く、借りられるまで気長に待つしかない本も多い。

再開した6月1日に図書館に行き、係の人に予約本の順

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