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文学フリマに出たという話

誰かの本棚に作った本があると想像すると、時々自分がすごい人なのではないかと勘違いすることがあります。そんな勘違いを起こす日について書いてみます。

こんにちは、スタッフの伊藤です。
先日文学フリマという同人誌即売会に参加してきました。参加といっても本を買う方ではなく、販売する側としてです。
文学フリマというのは、全国で開催されている文学作品の展示即売会で、一般の流通には乗らない自費出版の本や、手製の本、ホチキスで綴じた本などが販売、配布されているイベントです。

詳しくは公式ホームページにあります。
https://bunfree.net/about/

今回は自分と作家の『僕のマリ』さん、堀静香さんとの日記を本にし販売していました。
そのほかに育児のことを書いたエッセイのようなものも本にしたので、売れるか本ができてからずっと不安でした。自分が育児していることなんて誰がお金を出して読むのだろうという不安です。それならば無料で配布すれば良いのですが、それはやはりしたかないと値段をつけました。しかし、文学フリマの会場に着くまでは、やはりもっと値段を下げた方が良いのでは、とかいやいやこのままで良い、いや無料配布?が良いのか?と悩み続けていました。
会場は流通センターなので、東京モノレールに乗ります。モノレールに普段乗ることがないので見下ろす景色を楽しみたいのですが、売ることへの緊張で窓からの景色を見ることなく目的地へ着きます。
駅前で待ち合わせをしていた、一緒に売るのを手伝ってれる友人と合流し、前日までは、ここで文学フリマやっています!的な写真を撮っておこうとしたのですが、緊張のせいで忘れたまま建物の中へ入ってしまいました。
あ、写真撮ればよかったと気付いたのは、自分のブースで本を売る準備をしている時でした。

当日パンフレット。中にはブースや地図が書かれています。


もらったパンフレットを苦肉の策で撮りました。

設営は終わりましたが、まだ緊張と不安は存在していて、その入り混じった感情は時間をいつもより早く進めるらしく、すぐに出店していない一般の人たちの入場の時間になってしまいました。売れなかったらどうしようと心の中でつぶやきつつ、売る手伝いをしている人には本の値段の説明をし、もしかしたらこの説明もいらないのかもなと思いつつ、椅子に座って人が来るのを待ちます。

設営が終わったが不安

入場制限しているせいで、一気にたくさん人が来ることはなく、最初の30分くらいは人が来ませんでした。
ああ、やっぱり売れないんだ、Twitterでつぶやいても反応が少なかったもんな、と始まってすぐに反省会を脳内でしてしまいました。一緒に店番をしてくれている人には、「ぜんぜん、人来ないね、静かだね」と繰り返し自分を慰めるように言っていました。
しかし自分の作った本は、愛おしく、色んな人の手に取ってもらいたいと思いつつ、どうやってその自分の中にある愛おしさを他人に伝えたら良いのかわからないまま、時間が過ぎていきました。
30分が過ぎたあたりから少しずつ入場ができた人たちがやってきて、自分のブースの前に立ち作った本を手に取りぱらぱらとめくってくれました。ここで声をかけた方が良いのだろうか、いやでも、今この情勢で声をかけるのは、と悩んでいると、目の前の人は本を閉じ「これとこれとこれを」と読んでいた本とそれ以外の本を指差しました。
「ありがとうございます!」と心の中では大声で、心の外では普通の声で言いました。そのあとから、少しずつブースに来てくれる方が増えて、本も少しずつ売れていきました。一緒に売り子をしてくれた人には「たくさん売れてますね」と言われ、照れ隠しで「まあ、普段ならもう少し売れてるかも」と、たぶん普段よりも売れているのに言ってしまいました。
少しずつ本が人の手に渡っていくのを目の前で見て、余裕ができてきたので自分も他のブースを見て回ることにしました。本当は目の前で自分の書いた本が旅に出て行く姿を見届けたいのですが、それよりもそこだけでした買えない本を、書いた人の前で買いたいので自分のブースから離れます。

僕が売っていたブースは壁際で、お目当てのブースというか、一緒に本を作っている僕のマリさんのブースへ行こうとしたら、僕のマリさんのブースは僕の反対側の壁際なので、他のブースを少し見ながら横断していきます。公式ホームページによると、758ブース出店者ブースがあるらしく、校庭くらいある広さがあり横断するのにも時間がかかります。それぞれブースごとに売っている本のジャンルが区切られていて、小説、エッセイ、評論と本の並べ方にも違いがあって大きな本屋にいるような気分になります。どの本も買いたくなるのですが、まだ家には読むがたくさんあるし、と買いたい衝動を抑えながら、僕のマリさんのブースに到着。文学フリマ内で旧知の友人に会い、ふっと緊張がほぐれました。本を売ることにずっと気を張っていたのかもしれません。
僕のマリさんの本を買い、またお目当ての本を探します。持ってきたエコバッグが悲鳴をあげそうになってきたので、自分のブースに戻ろうとすると、ブースの前には本を読んでいる人がいて、ああ書いてよかったなという気持ちになりました。

ブースに戻り、売り子をしていた方はこれでおしまいなので何度もお礼を言い、1人になりました。
1人なった途端、また不安がこんにちはーとやってきそうだったのですが、その不安を感じさせないほどに本を手に取ってくれる方が来てくれたまま文学フリマは終了しました。
終了直前には終わったーという気持ちと、終わらないでほしいとも思っていました。もう少し自分が何かできたのではないかという気持ちと、もっとこのまま自分の文章を求められているままでいたい、現実には戻りたくない気持ちが混ざったまま、ブースを片付け始めました。
片づけを終えて、これで本当に終わったという気持ちで買った本で重たくなった鞄を持ち、モノレールの駅まで向かっていると、今朝写真を撮り忘れていた看板を思い出し撮りました。

夜なので暗い

帰宅して買った本や差し入れでもらったお菓子を並べて写真を撮りました。
次回の文学フリマは5月なのでそれにも参加できたらいいなと思っています。

すごい笑顔で撮っていたらしい


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