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いよいよ3/12(火)開幕!国立西洋美術館、史上初の現代美術展「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」

JR上野駅の公園口出口を出てまっすぐに歩くと、右手に見えるのは、国立西洋美術館。西洋美術全般を対象とする、日本で唯一の国立美術館です。ル・コルビュジエが設計し、世界文化遺産にも登録された建造物の前には、《考える人(拡大作)》《地獄の門》などロダンの著名な作品が並び、威厳ある雰囲気が漂います。

開館から65周年を迎える今年、20世紀半ばまでの西洋美術作品を取り扱ってきた美術館にとって、大きな挑戦がスタートすることとなりました。3月12日(火)よりスタートする、企画展「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?――国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」です。

国立西洋美術館で史上初となる、現代美術家とコラボレーションした本展。開幕を前に、この試みでしか味わえない魅力をご紹介します!


国立西洋美術館は、日本のアーティストのために建った!?

国立西洋美術館は、1959年に開館。戦後、フランス政府から寄贈返還された「松方コレクション」を収蔵展示する場所として誕生しました。「松方コレクション」とは、実業家の松方幸次郎が1916年から約10年間、自らヨーロッパにおいて収集した、膨大な数の紀絵画や彫刻などの美術品です。彼は日本の若い画家たちに本物の西洋美術を見せようと、1万点に及ぶ膨大なコレクションを持ち帰り、美術館を建てて公開する準備をしていました。

「日本に何千人の油畫描きがいながら、その人たちはみんな本物のお手本を見ることもできずに、油畫を一生懸命に書いて展覽會に出している。私はそれが氣の毒なので、ひとつわしがヨーロッパの油畫の本物を集めて、日本に送って見せてやろうと思っている〔……〕」。
                                                           ――松方幸次郎(矢代幸雄による回想)

「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」チラシより

しかし、1927年の経済恐慌の影響で、日本に運ばれていた美術品は散り散りに売り立てられてしまいます。パリに残された作品群は第二次世界大戦のち、1951年のサンフランシスコ平和条約によって、フランスの国有財産となりました。その後、東京での美術館の新設を条件に、フランス政府より松方コレクションが寄贈返還されることとなります。しかし、開館まで国の財政だけでは立ち行かず、財界や美術家をはじめとする民間からの多大な助力があったのです

その協力とは、1955年に国立近代美術館(現:東京国立近代美術館)で行われた、「松方コレクション:国立美術館建設協賛展」。約600名の美術家たちが、財閥など大口の寄付をしたに相手対して作品を差し上げるチャリティーに参加しました。これだけ大人数のアーティストが参加するに至った背景には、当時の美術家連盟会長である、画家・安井曾太郎のこのような言葉があったそうです。

〔松方コレクションの〕絵がもし返ってきた時、誰が一番これの恩恵をうけるんですかと、それは日本国民全部かもしれんけども直接的には我々美術家じゃありませんか〔……〕」。
                                                     ――安井曾太郎(森弥多丸による証言)

「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」チラシより

チャリティーの結果、寄付金は1億円近く集まり、国立西洋美術館の礎となりました。これらの背景から、国立西洋美術館は、日本のアーティストのために生まれた美術館であるとも言えるのです。


数々の影響を与えてきた作品と、現代のアーティストたち

このような設立の歴史を踏まえたとき、未来ある日本のアーティストのために生まれた空間として、国立西洋美術館はどのような役割を果たしてきたのでしょうか? 「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」では、この問いを美術館が自ら提起し、現代の美術家とコラボレーションすることで検証していきます

展示室は未来の世界が眠る部屋である。――
 未来の世界の歴史家、哲学者、そして芸術家はここに生まれ育ち 、、、、、――
ここで自己形成し、この世界のために生きる。
                          ――ノヴァーリス

「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」チラシより

例えば、国立西洋美術館のコレクションと、その作品に影響を受けた作家の作品を並べるだけでなく、新たな「if」を持ち込む、重ねる、読み解く、提案する、拡張する、切り離す、照らし出す、補完する……。日本を代表する21組の現代アーティストが本展の主旨に賛同し、さまざまなアクションから日本の西洋美術を支えてきた「国立西洋美術館」を問い直していきます。

参加アーティスト(50音順)
飯山由貴、梅津庸一、遠藤麻衣、小沢剛、小田原のどか、坂本夏子、杉戸洋、鷹野隆大、竹村京、田中功起、辰野登恵子、エレナ・トゥタッチコワ、内藤礼、中林忠良、長島有里枝、パープルーム(梅津庸一+安藤裕美+續橋仁子+星川あさこ+わきもとさき)、布施琳太郎、松浦寿夫、ミヤギフトシ、ユアサエボシ、弓指寛治

例えば、あのロダンの《考える人》も、「地震」という日本の美術館固有の課題から、小田原のどかさんのよる新作インスタレーション作品としてなんと横倒しになってしまうそうです!!


「問い」を考えるのはアーティスト、そして観客も

65年目となる国立西洋美術館から投げかけられた、「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」という問い。現代のアーティストの皆さんは、どのような眼差しで、作品を通した答えや新たな問題を提示するのでしょうか? 下記のページでは、各作家の略歴・作品画像にくわえ、一問一答形式で、本展に向けてのメッセージを読むことができます。

そして、問いを考えるのは、私たち観客も。ヨーロッパで生まれたコレクションを知り、現代アーティストによる挑戦的な作品の数々に向き合いながら、これからの美術館、ひいてはアートを考える。歴史を振り返る上でも、未来へと進んでいく上でも、見逃せない分岐点となるのではないでしょうか? 会期中は関連プログラムとして、座談会や講演会も複数行われる予定です。この春、新しい何かに取り組んでみたい方は、参加アーティストの皆さんや専門家の方々のお話を聞いて、さらにじっくりと考えを深めることも面白いのではないでしょうか……? 実は、参加アーティスト・田中功起さんによるプロジェクトの一環として、「託児サービス」も用意されています。小さなお子様のいらっしゃるお父さん、お母さんも必見です!!

まもなく3月12日(火)より開幕する、国立西洋美術館史上初となる現代美術展「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?──国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」。おちらしさんWEBでは、展示の模様も改めてお伝えします! お楽しみに!

左から、参加アーティスト・鷹野隆大さん、小田原のどかさん、梅津庸一さん、国立西洋美術館 主任研究員・新藤淳さん

文/清水美里(おちらしさんスタッフ)


ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?
――国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ


会期:2024年3月12日(火)~5月12日(日)
会場:国立西洋美術館 企画展示室
主催:国立西洋美術館

参加アーティスト(50音順)
飯山由貴、梅津庸一、遠藤麻衣、小沢剛、小田原のどか、坂本夏子、杉戸洋、鷹野隆大、竹村京、田中功起、辰野登恵子、エレナ・トゥタッチコワ、内藤礼、中林忠良、長島有里枝、パープルーム(梅津庸一+安藤裕美+續橋仁子+星川あさこ+わきもとさき)、布施琳太郎、松浦寿夫、ミヤギフトシ、ユアサエボシ、弓指寛治

関連プログラム
●託児サービス(事前申し込み)
本展開催期間中、WEBサイト掲載チラシに記載の日程にて実施
各日13:00~16:00
●先生のための観覧日(事前申し込み)
2024年3月15日(金)・16日(土) 15:00~20:00
●【スライドトーク】(当日受付)
企画展〈ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?〉
※手話通訳付き開催回あり※
2024年3月15日(金)・4月26日(金) 18:00~18:40
●【公開座談会】(事前申し込み・先着順)
「現代美術のない美術館で芸術の未来を考える」
2024年3月23日(土) 17:00~19:00
●【講演会】(事前申し込み・先着順)
田中正之「作品と作品をつなぐもの――解釈、応答、変奏」
2024年4月20日(土) 17:00~18:30
●【講演会】(事前申し込み・先着順)
新藤淳「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」
2024年5月11日(土) 17:00~18:30


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