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こんにちは、スタッフの伊藤です。

子が先日1歳の誕生日を迎えました。ようやく1年、あっという間の1年。誰かに共有しないと収まらないような日常が大きく変わった年でした。

0歳のうちに演劇を観たわが子は、観劇以来ほんの少しだけ成長したように見えます。NHKのこども番組を見ていると両手を広げて踊るようになりました。たぶん成長だとは思うのですが、きっと演劇を観たおかげだと思います。観ることができるうちにたくさんそんな経験をさせたいのですが、なかなかまだ外に出るのに恐怖感があって難しくなっています。わが子が1歳になったので、これからは気軽に舞台に観に行けるといいなと思っています。RPGではないですが、どんどん経験値をためてほしいと思っています。

そんな子の誕生日当日は、1歳になった記念の写真を撮るためにまず舞台を作りました。主に妻が。

子が乗る台を置き、白い布を敷いてどんどん誕生日を祝う舞台を作っていきます。僕は妻が苦手だという風船を膨らましていました。風船は壁に貼り、床にいくつか置いておくようです。小さいときに「おかあさんといっしょ」でみんなで踊った後に上から風船が落ちてきて床一面に風船が転がっているのをテレビで見たことがあり、それに少し憧れていたので、たくさんの風船を膨らませようしましたが、妻にそんなにはいらないよ! と言われてしまったので8つほどの風船を膨らませました。もう5つくらいから肺活量の限界を迎えていたので床一面の風船なんて無理な話でした。

僕が限界量の風船を膨らませている間に、妻は誕生日プレゼントを並べ、子が気に入っているおもちゃを置き、膨らませた風船を壁に貼り、床に置いて舞台が出来上がりました。なんとなく、昔に演劇公演をやっていた時のことを思い出しました。ほとんど何もやっていないのですが、まるで仕込みのような気分です。特に誰かが家にやってくるわけではないのですが、仕込みに似ていると思うと本番前のような妙な緊張感が足元からぞわぞわと体を上ってきます。

風船を膨らませた後は、特に何をすればよいだろうと思いながらスマホで何枚も準備中の写真を撮ります。わが子も僕らが普段とは違い忙しなく動いているので何をしているのだろうと不思議そうに見ていました。

昨日まで普通に過ごしていたはずの部屋がどこかインスタグラムの中だけでしか見たことがないような部屋に変わっていきます。

準備を終え、誕生日プレゼントであるきつねの人形も台に乗せてあとは子だけという状態になりました。もう舞台の仕込みが終わり本番が始まる前のような気分です。ただ主役は急に部屋の様子が変わり戸惑っているのか、いつもより抱っこをせがんできたので抱っこをしつつカメラの位置なども調整します。三人での写真も撮りたいのです。

いよいよ写真を撮ります。まずは台に座ってもらい、王冠の被ってもらいます。フェルト生地の王冠は誕生日の前日に妻が作っていました。帽子が苦手な子はすぐに王冠を脱ごうとしてしまうので、一瞬の勝負。僕と妻はスタジオアリスのカメラマンになった勢いで写真を連写します。

案の定、王冠は脱いでぽいと捨てられてしまいました。地位や名誉がいらないと思っているのかもしれません。

三人での写真もほしいので、スマホのカメラにあるタイマー機能を初めて使い、写真を撮ります。10秒でセットし戻って撮られるのを待つ間、ふとカメラで家族写真を撮っていた父の姿を思い出しました。自分も同じように父になったのかと思うと、スマホはカシャシャシャシャシャと連写で僕らを撮りました。タイマーで撮ると連写になるなんて知りませんでした。

写真撮影が終わったあとは、今度は一升米を子に背負ってもらいカードを選び取りしてもらいます。一升のお米はずっしりと重たく、こんな修行のように背負って部屋の端から端へ移動し、さらにはあらゆる職が書かれたカードを選ばなければいけないなんて、一歳になるのはこんなに大変なのか、と思いつつ大泣きしている子を応援している僕と妻はまるで舞台の上にいるような気分でした。大泣きをしてようやくカードの場所まで移動をし、カードを取ったのですぐに背負っているお米を外してあげました。大泣きは終わりません。

お客さんのいない舞台で、誰も見ていない儀式をしている僕らは役割を持ってそれを遂行していて、まるで劇団のようで、家族でした。

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