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教育現場=国の現状(教育編②)

今回は、バングラデシュのNGO団体での活動内容について書いていきます。

前回、バングラデシュの教育の仕組みについて書いたので、一読いただけるとバングラデシュの教育の全体像が掴みやすいのでどうぞ。



医師が始めたNGO団体

私の配属先は、BDP(Basic Development Partners)というNGO団体で学校を運営している。「すべての子どもに読み書きを」というコンセプトから始まった。

ある医師が村人に薬を処方しても、ほとんどの村人が読み書きできなかったので薬を処方しても処方箋を読めずに正しく飲んでもらえなかったので、その問題を解決する為に学校を立ち上げた。


バングラデシュの識字率
バングラデシュの識字率は、30年前まで約35%だったが、近年では75%近くまで上がってきている。それでも依然読み書きができない人がいるので、バングラデシュの選挙では、識字率の低さに配慮して立候補者の名前の代わりにシンボルマークのスタンプを押して投票する仕組みになっている。


ドロップアウト

配属先の小学校に通う子供たちは、主に公立学校をドロップアウトした子、お金がない家庭の子、近くに公立小学校がない子がほとんどである。
つまるところ、貧困層の家庭の子供が集まってくる。

子供は労働力として扱われ、学校に来る頻度が低くなることで授業についていけなくなり、そのまま労働者になる。

教育現場の現状

前任者が地域の学校を巡回しながら、先生たちにアドバイスしていたので、私も担当地域にある学校をバイクで巡回して、学校の現状を見る事にした。
当初、言語が思うように話せなかったので半年間は巡回をしながら、先生との信頼関係を築くことや学校の状況を把握することに努めた。

一番最初に学校の様子を見た時、愕然としたことを覚えている。自分が日本で見てきた学校とは全くかけ離れていて、どこから手をつけて、何をしていけばいいのか分からなくて絶望を感じたことを覚えている。


先生について
日本のように教員免許などの国家資格がないので、学歴と試験だけで選ばれる。ここで働く先生の学歴は、小学校卒業がほとんどである。

筆記試験は、中学生レベルの問題を解いて合格すれば先生になれる。
先生になりたくて先生になるというより、学校の周りに住んでいて働き口としてやっている人がほとんどである。

給料は、週6日働いて月給1,000〜3,500円程である。教師や警察官などの公務員が月給10,000円程もらっていることを考えると、その月給ではモチベーションが上がらないわけである。

校舎設備について
日本の学生団体などが寄贈したコンクリートの校舎もあるが、ほとんどの校舎が、木とトタンでできた校舎である。校舎内は、電気は通ってないので真夏でもファンはなく、教室の明かりも太陽の光を頼りにしている。机や椅子は3人用の席に4〜5人座るので学習スペースが確保できていない。

雨除けのひさしがない学校は、雨が降ると窓を閉めるので教室が暗くなり、勉強するのが困難になる。天井が藁の校舎は、強雨だと雨漏りして授業ができない、天井が落ちてくると校庭に机や椅子を置いて授業をする。また、子供の数が多い学校は、廊下の床に子供を座らせ授業をする。

こんなハードな環境で授業をしていると思うと、子供と先生が不憫に思えて仕方がなかった。何とかしたい気持ちがあるが、すぐには変わっていかない現状にジレンマを感じた。


授業の様子
授業の様子も学校設備と同じで日本との違いに唖然とした。
特に先生が棒をもちながら歩くなんて、昭和の匂いがプンプンしていた。そう考えると日本の数十年前はこんな感じに近かったのかなと思った。

■授業中に携帯電話で話始める。
■学校に来ていない、もしくは遅れる。
■棒をもって子供が回答を間違えると叩く。
■ひたすら教科書を読み続け、子供に復唱させる

考えさせる授業ではなく、暗記をさせる授業が中心であった。先生は、地域の主婦で十分な研修も受けていないので、ただ教科書を順番通りに読み進めていくことしかできない。教え方が分からないから棒で叩くことで痛みで覚えさせるやり方をする。

国の現状を表す教育現場

まさに教育現場にこの国の状況が表れている。ゴミだらけの教室、制度が充分整備されていない、賃金の問題など、この状況だとこの教育を受けた子供たちが大人になっても、社会の状況はあまり変わらない。教育現場を見れば、その国が今後どういう国にしていきたいかも見えてくる。

日本の教育現場で働いている先生は、世界の流れの中で日本をどんな国にしていきたいのか考えながら仕事に取り組んでいる人はどのくらいいるのか気になった。

他人がいることで自分がどんな人間か知れるのと同じで、他国の現状を知ることで自国の現状を知ることができる。

他国と比較するのは、自国を知るために必要である。
比較して、優越感や劣等感を感じる必要はない。



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